TBSラジオで毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で8時20分頃から放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回は、ひとり暮らしをする高齢者の支援情報を掲載するムック「お一人様 老後のこれで安心大丈夫(ミリオンムック)」を紹介します。

ひとり暮らし高齢者の支援情報ムック 「お一人様 老後のこれで...の画像はこちら >>

内閣府や厚労省などの調査によると、ひとり暮らしの高齢者は年々増加傾向にあり、2010年の段階では約480万人でしたが、2025年にはおよそ700万人になると見込まれています。ひとりでも自立した生活を送れる年齢の平均、いわゆる「健康寿命」は伸びていますが、それでも健康に過ごせる年齢には個人差があり男性・女性ともにひとり暮らしの将来に不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。

今日紹介するムック「お一人様 老後のこれで安心大丈夫」はそうしたひとり暮らし高齢者、また、近い将来ひとり暮らしの老後を迎える人たちに、健康維持や介護サービス、居場所づくりなど実用的な情報を発信しています。2019年から発刊され、現在4号まで出ており、それぞれ約25,000部が売れています。高齢者向けの情報は、インターネットには情報が氾濫していて迷うこともあり、むしろ雑誌のような形の出版物のほうが手にとりやすいという印象も受けます。

ひとり暮らし高齢者向けの情報を発信し、不安を解消したい

まず編集長の比嘉健二さんにムックを企画した理由を聞きました。

「お一人様 老後のこれで安心大丈夫」編集長の比嘉健二さん
ほとんどの人はよっぽど家族が密接で、親戚もみんな周りにいて「おじいちゃん頑張って」と言われながら息を引き取る幸せな人って、これからいるのかな?って考えて、ひとりでもこうやって、やっていけるよとか、不安を解消してあげたいなという気持ちと、一人ひとりを勇気づけられるような内容にもっていきたいなと。むしろ手軽に手に取れるこういう本があるほうが助かるんじゃないかと思って。

記事の内容は、たとえば犬や猫などペットと一緒に暮らし元気をもらっているひとり暮らし高齢者は多いと思いますが、もし入院することになったらペットをどうするべきかやペットと暮らせる老人ホームの紹介など、日常の課題に根ざした情報を幅広く、丁寧にとりあげています。
また貯金が少ない人でも、生活保護を受けていても受け入れてくれる老人ホームの情報なども掲載されていて、より支援が必要な人のための情報もフォローしています。
肺炎などの感染症にかかってしまい、介護施設に入居できなかったり戻れなくなってしまう人のために、感染症でも入れるホームの記事なども掲載されていました。

「ひとり暮らし高齢者」の実情を知るライターが執筆

  
このように細かい気配りで編集されているのは、このムックに執筆しているライターに、実際にひとり暮らしの高齢者であったり、フリーランスで独身、親ひとり子ひとりで親の介護に携わり、困りごとにどう対処したか実体験をもとに書いている人が多いからです。
ライターのひとり、青井なつきさんはひとり暮らしの85歳のお母さんが末期癌になりました。青井さん自身もひとり暮らし、年齢がまもなく前期高齢者となる60代半ばで再生不良性貧血という持病をかかえ、彼女の家から必要な時に通いながらお母さんを支えています。青井さんにひとり暮らしの母を支援する時の課題を聞きました

同書に執筆したライターの青井なつきさん
母がひとり暮らししてるんですけど、全部自分でできるって頑張ったんで、やらせたら大混乱でした。ヘルパーさんに払うお金の銀行引き落としを「それぐらい私できるわよ」っていうかやらせたらハンコを全部間違えてて、結局そういう事がある時は「娘さん、一緒にいてください」という話になって。私の主治医には、「ともかく疲労の数値が高すぎるから、これ以上続けてると、あなたの方が先に心筋梗塞で死ぬよ」っていわれました。「他にいないの?看る人いないの?」って言われた時に、「1人娘ですからね」と返事をしたら、主治医が「そっか、仕方ないな…」。そこに救いはないですよね。

青井さんの場合は娘が一人でお母さんを支えています。介護や治療の補助を求められ、ご自身の健康も気をつけないといけない。仕事もあるために、かなり困難な状況を抱えています。こうしたケースはこれから増えていくと思われます。


青井さんはこうした場合、まず、ひとりで抱え込まないこと、利用できるサービスは公共のもの、民間のものにかかわらず、あるものは何でも使った方がいいと記事にも書いています。家族が近くにいないひとり暮らしの高齢者の場合は、自分だけで対応しなければならないので、情報はより重要です。
当事者が住んでいる地域にどんな福祉サービスがあるか、地域包括支援センターなどが教えてくれますが、青井さんはそうした具体的な相談先の活用法も含めて、実用的情報を提供することを心がけていると言っていました。再びライターの青井さんです。

同書に執筆したライターの青井なつきさん
今80代になっちゃってから調べろっていうのは無理かなって思うんですよ。できればこの記事で、調べないで納得できて、あとは電話するだけくらいのものにしたい。じゃ、どうやって探すの、どうやって頼むの、何を基準にすればいいの?いっぱい聞きたいことがあるはずなんですよ。じゃあそれをするにはどうしたらいいかっていうことを書いてあげたいなと思うんですよ。

青井さんは、自分の体験を記事として書いて同じような立場の読者と共有することが自分にとっても一種の癒しになっていると言っていました。

ひとり暮らし高齢者の支援情報ムック 「お一人様 老後のこれで安心大丈夫」

こうしたひとり暮らしの高齢者に向けた情報媒体はほかにもいろいろ出版されていますが、青井さんによると、雑誌1号だけで組まれる特集記事や、別冊のような形でまとめられたものよりも何号も続けて発売されている媒体のほうが鮮度や実用性の高い情報を書きやすいので号数の多い媒体を選ぶことが賢明だと言っていました。

今後は「心が癒される」企画を提案したい

実はこのムックの編集長、比嘉さん自身も、一年半ほど前に両親を亡くされました。それまでの間、両親ふたりとも介護する大変さがあったので、同じような立場の読者のためにより分かりやすい情報の掲載をめざしているということでした。


最後に比嘉編集長に、これから考えている内容を聞きました。

「お一人様 老後のこれで安心大丈夫」編集長の比嘉健二さん
こういう本を読む人って、心の問題も抱えてる人もいるので「読むとこの本読むと落ち着くよね」「この本、心が癒されるよね」っていうような企画を提案したいなと感じます。

まだ高齢者世代になっていなくても、老後や介護に関する情報は気になる人も多いと思います。そうした世代の人たちには、ネット情報よりも紙の媒体で発信されているほうが安心して情報をうけとりやすいと思います。

「お一人様 老後のこれで安心大丈夫」は4号まで大洋図書から545円プラス消費税で発売されています。書店やネットショップで1号からでも手に入ります。次の第5号は2月15日発売予定です。

(取材報告:藤木TDC)

◆2月6日放送分より 番組名:「人権TODAY(蓮見孝之 まとめて!土曜日 内)」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20210206070000

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