TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』毎週月曜日~金曜日 朝6時30分から放送中!

7月25日(月) 放送後記

7時30分過ぎからは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」

7波に入った新型コロナの感染拡大ですが、今朝は、その医療現場の声をご紹介します。お話を伺ったのは、コロナ発生時から、病院などではなく、主に、老人ホームや介護施設などでクラスターが発生した現場に看護師などを派遣し続けている、NPO法人ジャパンハートのお二方です。

7波初期、すでに酸素投与の機械が使用率が高い!

まずは、現場で感じる、今回の7波の変異株の重症化の具合について。ジャパンハート副事務局長で全国のクラスター支援の統括担当の高橋茉莉子さんに伺いました。

ジャパンハート副事務局長兼地域医療・国際緊急救援事業部長 高橋茉莉子さん
「呼吸器のニーズですね、酸素濃度が低下して、酸素の投与が必要な方っていうのが、6波以前よりも増えているような印象はあります。例えばなんですけれども、クラスターになった場合というのは、自治体が支援をされるんですけれども、そのときに、在宅用の、酸素投与するための機械を貸し出したりするんですね、それぞれの波で機械の使用状況っていうのはひっ迫はしているものの、今の時点で、7波の初期の段階にあるという風な認識をしているんですが、かなりその機械の使用率が高い、という風な話は入っておりますので、投与が必要な患者さんの発生率が高まっている可能性はあるかな、と思っています。」

ジャパンハートでは、クラスター現場への人員派遣の支援とともに、各自治体へ現場の様子を伝える、橋渡しもしているのですが、実際に酸素投与の機械の貸し出しが、まだ7波の初期なのにかなりひっ迫している、という印象。その上、6波以前は無かった、コロナが治った後の酸素投与のニーズも聞いており、印象として、今までと違うな、と肌で感じているそうです。

エアコンきかず、厳しい暑さ・寒さ。

続いて、その実際のクラスター現場について、全国各地の施設で支援をしている、看護師の宮田理香さんのお話です。

ジャパンハート国際緊急救援担当の看護師 宮田理香さん
「コロナって換気がすごく大事なので、窓を開けるという換気の方法と、換気扇を使って、という形なんですが、エアコンが効かないです、ほとんど。なので、夏はめちゃめちゃ暑いですし、冬は寒いですし、とても過酷でですね、特に夏はもう、サウナスーツのような状態になってしまって、防護服の中が汗が溜まってしまう。まあ、ただ、暑さ・・とかそういうのもツライんですが、そういったことよりも、やはりクラスターになってしまうと、医療が必要な状態なのに、医療者がすごい少ない状態で、その施設の中で治療を行わなければいけないっていうのは、かなり厳しい状況だと感じていて、それが充分に改善されていない、というのは、今まで6波を経験してきて感じていることです。基本的に病院には運ばず施設内療養という形をとっているので、今までと変わってないんですね、その状況は。ただ、そこに医療者が集まる、ということに関しては進んでいないので、医療者不足スタッフ不足という深刻さは変わっていないので、クラスター現場がとても大変な状況になってしまう、というところは改善されていないのかな、と感じています。」

老人ホームなどの施設では、結核病棟のような陰圧部屋を確保することは難しいです。そこで、とにかく窓を開ける、という方法で換気をするわけですが、そうなるとほとんどエアコンが効かない状況になり、非常に過酷な現場の状況です。

しかし、それより厳しいと感じるのが、医療者不足。6波までの反省が活かされていないんですね。このようなクラスター現場への支援は、各自治体が行っていて、その取り組みにはかなりばらつきがあるそうで、非常に頑張ってくれている自治体ももちろんある、ということでしたが、クラスター現場の医療者不足は、ほとんど改善されていないのが現実。

老人施設などのクラスター現場にいるのは、介護や介助のスタッフが主で、看護師が常駐していない施設も多いし、いても2,3人ということも。しかも、クラスターになると、その看護師も罹患してしまうことが多い。50人の入所者の半分がコロナに罹り、常駐の看護師3人のうち、2人が罹患。看護師たった一人で24時間、一週間以上カバーしなくてはいけない、という想像を絶する状況もあった、というから深刻です。

誰にも看取られず、骨になるまで会えないなんて!

クラスター現場に医療者が足りないことで、宮田さんが最もつらいと話すのは、こういうことなのです。

「ほんとに、たくさん看取ってきたんですよ。かわいそうなんですよ、ほんとに。誰にも看取られずにお一人で亡くなって、未だに家族が骨にならなきゃ会えないなんてことも全然あるので。そんなことないんですよ、普通に対面していただいて。だってコロナウイルス吐かないじゃないですか、息してないから。

だけど、まだまだ対面されないまま骨になってからお会いする、っていうご家族が、日本中にたくさんいる、っていうのが事実で。だからそういうケアとかも、医療者がある程度いたらできるわけですよ、臨終のときに、臨終の後とかも、きちんと感染防護して会わせてあげるとか、そういうことが医療者が入ればできるのに、結局それができない。こんな高齢化社会と言っている日本で、こんなことがなんで起き続けるんだろう、こんな7波にもなって、っていうのはすごい感じてますね。」

医療者がいればこれだけ変わるのに、第1波の時から全然変わっていないことが、とても悔しそうでした。

以前から、ベッドを増やすといっていますが、現実的には、みんなを収容できるほど、ベッドを増やせていない。それなら、医療スタッフを、施設などにスムーズに集める仕組みを考えるべきではと指摘していました。

一方で医療活動再開の動きも。

お話を伺った、NPO法人ジャパンハートでは、ミャンマーでの日本人医師による医療活動を再開します。日本人の医療者が渡航し、治療を行うのは2020年3月以来2年4か月ぶりのことだそうです。ミャンマーでは、国内情勢や新型コロナウイルス感染症の影響で、日本からの医療者派遣が停止していました。今年に入り、入国制限が緩和されたため、活動を再開し、渡航する吉岡秀人医師と現地ドクター2名との合計執刀で、およそ一週間で100件以上の手術が予定されているそうです。ジャパンハートは、日本人医療者による現地での支援活動を徐々に再開していく予定、とのことです。

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