TBSラジオ『要 潤のMagic Hour』毎週土曜17時から放送中!

8月6日(土)放送後記

今月のゲストは、環境と国際協力のNPO団体 ピーク・エイドの理事長の登山家:野口健さんです。

最上階10階にある 『エグゼクティブ オーシャンビュー テラス スイート 1007号室』
で 東京湾を眺めながら、お話伺っています。

ヒマラヤの森林を再生する。その理由は、防災?!

野口さんは、富士山やエベレストの登山清掃活動や、熊本地震テントプロジェクトを立ち上げるなど、多岐にわたる活動をされています。

最近は、ヒマラヤの森林を再生するプロジェクトのため、およそ3年ぶりとなる、ネパール訪問をされていました。

ネパールの森林限界は、およそ4000mといわれていますが長年の伐採により、多くの森が無くなってしまいました。
森の減少は、問題視はされていたものの、なかなか計画や行動には至っていませんでした。

そんな中、プロジェクトの立ち上げるきっかけとなったのは、2015年に起こったネパール地震でした。

当時、ベースキャンプ入り口付近にいた野口さんは近くの町の被害状況を歩いて確認...
すると、土砂による二次被害の多さに驚いたそう。

土砂災害が起きていたのは、村の周りの木を伐採した場所でした。

野口健と、ハイアット リージェンシー東京ベイで優雅な夕暮れ時...の画像はこちら >>

野口「森林を作ることは、環境問題というのもありますけど、それ以上に防災だなと思いましてね。それから、始めました。せっかくやるなら、と、最初は5万本から。今は、3万本までいきました。

順調にきてるので、どうせなら10万本!植える木は、遠くから苗を持ってくると外来種になるので、お寺など木が残ってるところから、種を採取して、そこから育てるんですよね」

近藤「育てるところからなんですね」

野口「そうなんですよ。苗木センターみたいのを作って。標高が高いので、育つのに時間がかかるんですよ。20~30cmまで育ったら、植えるんです。次の問題は、ヤクです。」

新たな問題となったのは、高山地帯に生息するウシの仲間:ヤク でした。
ヤクは、柔らかい芽が生えている苗木を食べてしまうことがわかりました。
そこで今度は、苗木の周りに柵を用意することに...。

野口「最初に始めたサマ村は、陸路で10日かかるんです。10日間、ヤクに苗木を積んでいって...ヤク対策するのに、ヤクに乗せて(笑)柵だけで500~600万円かかりましたね、その場所は。その次にガクッときたのは、村人はヤクを飼っているので、一部の人は柵を壊して、ヤクを中にいれてしまうんですよね(笑)でも、少しずつ。出来てきていますね。」

要「それだけ、種を苗木にして植えていたら、現地の方々の、雇用にもつながっていますか?」

野口「そうですね。現地の人を雇います。

カトマンズなどの専門家1人を雇って、村人に教えてもらっています。最終的には村人にバトンタッチしたいので。10年くらいしたら、もう、彼らに押し付けようかなって(笑)若い世代もこういう事に関心を持ってきて、僕らがやってる現場に見学に来ますよ。」

森林伐採の問題に悩むネパールで、このプロジェクトが成功する事は、活動が普及に繋がっていくのでは、と考えていらっしゃるとか。

野口健と、ハイアット リージェンシー東京ベイで優雅な夕暮れ時を。

『夢という概念が無い』ネパールの子供達との出会い

さらに野口さんは、ネパールに学校を作るプロジェクトも長年続けていらっしゃいます。
活動のきっかけは、マナスルという山に登った、2005年ごろだったとか。

野口「ほぼチベットで、当時は観光客も通るようなところではないしベースキャンプの村には電気もなく、学校もなかったんですよね。子供がたくさんいる大きな村なんですけど、喋っていて、深い意味もなく、『みんなの夢って何?』って聞いたんですよね。日本だとよく学校で聞くじゃないですか。そしたら、僕と子供たちの間にいたシェルパが、首をかしげるんですよ。『その質問は、意味がない』って言うんですよ。いいから聞いてくれと頼むと子供たちはきょとんとするんです。シェルパと『夢という考え方、概念が無いよ』って話になったんです」

要「概念が無い?!」

野口「彼らは、電気もないし、他の情報もない村で生まれて、村で育ち、いずれ村で亡くなっていく。となったときに、夢という概念がないんだと。

僕それにビックリして。自分の子供のころって、勝手にポッポッポッ、って湧いてくるイメージありません?僕なりの考えですけど、子供の事みた本やテレビで想像することが子供の夢を抱く事に多分つながってくるのかな、と思ったです。だからそのときに、読み書きとかって大事だな、じゃあ学校作ってみようか、と。」

野口さんご自身も、児童書『ドリトル先生航海記』が世界に興味を持ったことの1つ。
子供の夢は、幼少期の体験次第なのかもしれません。

野口「学校できて、もう17年経ちました。最初に夢と聞いてきょとん、としていた子供たちが、卒業するときには『村に病院が無いから、勉強して医者になって家族を助けたい』とか『パイロットになりたい』とか色々言うんですよ。たかだか4、5年で夢を語るようになったんです。ヘーと思いました。」

近藤「夢を与えたんですね、野口さん。」

野口「夢を与えたというよりも、ただ、きっかけを、ね。」

野口健と、ハイアット リージェンシー東京ベイで優雅な夕暮れ時を。

環境問題の相手は、人間社会!

野口さんが国内で行っている活動の1つが、20年以上に続けている【富士山のゴミ拾い】 です。

活動を始めた当時は、『富士山はゴミが多い山』と世界的に言われ多くの海外登山客を失望させてしまっていました。
管理が徹底される諸外国と比べると、管理体制が厳しくなかったのも原因の1つでした。

そんな富士山のゴミ拾いのボランティアを始めた、野口さん。
各地で公演で富士山のゴミ問題を訴え、ボランティア募集を募っていましたが、清掃スタッフが年間100人も集まらなかった事にショックを受けていました。

野口「そのときに、『伝える=伝わる』では無い、と思いましてね。どういうふうに伝えると関心を持ってもらえるか、という課題が数年ありましたね。」

要「どのように変化していったんですか?」

野口「やっぱり、現場の人間なんで、どこかで熱くなって、自分が正しいと思ってることは、皆も正しいと思ってくれるんだと思うんですよね。そうすると、言い方や表現がキツくなるんです。最初の頃、富士山の地域の方に、ゴミ問題は表に出したく無い話だからと厳しく言われて、凹んで、逃げたんです!活動って煮詰まるんで、逃げる時間大事です。煮詰まってると、周りが見えなくなるので、逃げちゃう!(笑)それで、ヒマラヤに逃げたんですよ」

要「かなりの距離逃げましたね(笑)」

野口「そう。冬のヒマラヤなんて誰もいないし、静かで、ボーっとして。そのとき、富士山を遠くに感じた時にふと思ったのが、自分が正しいと思ったことは、周りも本当に正しいのか、と疑問に思いました。富士山麓から山頂まで、多くの人が関わってます。そもそも、8合目から上は、神社さんの私有地ですから。そこで経済も動いてる。立場が違うと、それぞれの正義があります。『自分の考えは全てではない』と思ってからです。

今では20数年経ってますけど、当時わっと色々言ってきた人たちと仲良くゴミ拾ってますんで(笑)」

要「立場を尊重されたんですね」

野口「環境問題って、自然が相手っていうイメージありますけど相手は、人間社会です。だって、そこには生活がありますから、どういう社会を、みんなで作っていくのか、というのが環境問題かなと思います。」

野口さんと、娘の絵子さんとの共著・対談本
『父子で考えた「自分の道」の見つけ方 「正解」を選ぶのではなく、選んだ道を「正解」にすればいい!』が現在発売中です。

父と娘、師匠と弟子という関係のお二人の、対談がまとめられ、人生に幾度となく訪れる選択の機会に、どう対処し立ち向かえばいいのかを一緒に考えられる1冊となっています。

要「かなり読み応えある本でしたね。」

野口「1年半くらいかかりました。娘はニュージーランドなので、リモートでずーっと延々としゃべりましたね。最近、立場が逆転してきてます(笑)」

来週も、野口さんにお話伺います。

野口健と、ハイアット リージェンシー東京ベイで優雅な夕暮れ時を。

OA楽曲
Meteorite / Anna Of The North & North & Gus Dapperton

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