TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』毎週月曜日~金曜日 朝6時30分から放送中!

9月12日(月)放送後記

7時30分過ぎからは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」

今日、取り上げる「あるもの」の実物を見に行ってきましたので、まずはその様子から。

●「青空の照明がある、と伺って来たんですけれども、どこにあるんですかね?どれがそうですか?『こちら上にございますのが、青空照明の【misola】になります』え?これ?これ窓じゃないんですね!『そうですね、はい。

こちら照明になっております』え~!すご~い!空にしか見えませんよね。これ照明なんだ!すごい!」

空にしか見えない照明「青空照明 misola」

三菱電機グループが開発した、青空照明の『misola』を見てきました。展示場でぐるっと見渡しても見当たらず。窓だと思っていたのが照明でびっくり!いったいどうなっているのか?なぜこんなにも、青空にしか見えないのか?発案者で、開発を担当した、三菱電機先端技術総合研究所の岡垣覚さんに聞きました。

三菱電機先端技術総合研究所 岡垣覚さん
「本物の空が青く見える、レイリー散乱という光の散乱の減少があるんですけど、その同じ原理を使ってるというところが一つ。もう一つは、青空の周囲に、我々フレームって呼んでいる窓枠みたいな部分があって、そこにホントの太陽の光が差し込んでいるようにLEDを使って見せる、ということで、この組み合わせでホントの空にしか見えない、そういうものができました。奥行きですね、ポイントになります。あの、例えば青色の紙とかを眺めたときに、そこに青い物体がある、という風に人間の目には見えてしまって、それには当然奥行きは感じないんですけれども、レイリー散乱という現象ですと、粒子の粒が非常に小さいので、人間の目にはその粒は全然見えなくて、青く光ってる面がどこにあるか、っていうのが、人間は知覚できなくて、どこに物があるか分からない、つまり奥行き感がどこまでも続いてる、っていう風に感じるものになってます。」

▼青空照明【misola】昼の空 三菱電機イベントスクエア「METoA GINZA」にて

まるで窓から見える青空みたい!な照明!?の画像はこちら >>

空はあまりにも遠いから、無幻影を見ているような感じで、焦点があってないのだそう。それを再現すべく、目の焦点が合わないようにしたんです。しかし、このレイリー散乱を使って青く光れば、それだけで空に見えるか、と思ったが、やってもやっても青空に見えない!やはり青空は太陽との組み合わせがあってこそだ!と思い、窓枠のようなフレームに、日なたと日陰を作ったら、ついに青空にしか見えないものになったのです。試作品が出来上がったときには、こんなものが作れるんだ!とすごく感動した、とおっしゃっていました。

照明の常識から外れた照明にビックリ!

そして商品化のため、その試作品を受け取ったのが、三菱電機照明株式会社開発本部の小松琢充さん。照明一筋14年のベテランは、青色照明を見て、ものすごくビックリしたそうです。

三菱電機照明株式会社、開発本部器具技術第一課の小松琢充さん
「技術的にすごいというより、アイデア的にすごいな、って思ったんですよ。

青空が光ってる周りが光ってると思うんですけど、影を再現するために、光ってるところと、光ってないところがあるんですね。で、照明屋さんで考えると、影の部分光らない、日なたの部分光る、みたいなことをせずに、全部光らせたくなるんですけど、そこをあえて影の部分を作ることによって、あたかも日が差し込んでいるように見せる、というそこのアイデアがすごいな、って。だって、そこの部分光らせたら、言ってみたら効率よく照明器具としてはもっと出せますから。そうなんですよ、一般的にはそうですよね、部屋を明るく照らす、というのが目的ですんで。う~ん、そうですね、常識を覆したっていうか、あ、光らせないところあるんだ!みたいな(笑)。」

照明器具の常識から外れていることに、本当にびっくりしたし、すごいな、と思った小松さんですが、その試作品を手に「で?どうしたらいいの?」と途方に暮れたそう。というのも、照明って、もうかなり昔からありますよね。だから、照明器具の会社は、改良という作業がほとんどだったから。「岡垣さんが青空を切り取って持って来た」もんで、という小松さんの言葉に、何から始めたらいいのか分からなかった、という気持ちが滲んでるな、と思いました。

「これ、外つながってるんですか?」

そして、苦労の末に出来上がった商品について、展示会でお客さんに見せた時のことを、小松さんはこう話します。

三菱電機照明株式会社 小松琢充さん
「展示会ですと、大きな、当然外は見えないような空間の中で、我々ブース立ててやるんですけど、『これ、外つながってるんですか?』って言われたことがあるんですよ。ブースの上見たら全然つながってもなく、大きなだだっ広い空間が広がってるだけなんですけど、それは何かすごいほめ言葉だったな、と思って。『外つながってるんですか』って言われたのはちょっとうれしかったですけど。

そのお客さん、照明だと思わなかったんですよ。それってすごい、我々が求めてたもの、っていうか。技術者としてはヨシ!って感じでした、だから。そうですね、違う概念のものを作り上げたっていう感じはありますね、私の中では。今回照明を見せる、みたいな形とか、だから照明の幅が広がったいうのは、すごい嬉しいなって思ってます。」

発案者の小松さんは、光の技術の研究者で、照明器具に関しては、いわば素人。しかしその素人ならではのアイデアを、その道のプロがバトンを受け取って商品となった。僕らでも思い付いたんじゃないかな、って、ちょっと悔しさはある、と小松さんは言っていましたが、これを機に照明は新しいものに変わっていくかもしれません。このmisola、すでに販売されており、病院や窓の無い事務所などに採用されています。お値段は従来品の10~20倍ですが、年500台の目標もまもなく達成しそう、だそうです。(ちなみに、昼間だけでなく、日の出、朝、昼、夕方、日の入り、夜と変化もします!色の違い分かりますか??)

▼日の出から朝 三菱電機イベントスクエア「METoA GINZA」にて

まるで窓から見える青空みたい!な照明!?

▼夜になってきました。 三菱電機イベントスクエア「METoA GINZA」にて

まるで窓から見える青空みたい!な照明!?
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