TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』毎週月曜日~金曜日 朝6時30分から放送中!
9月19日(月)放送後記
7時30分過ぎからは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」
今日は最新の海水魚の養殖のお話。海水魚の養殖と聞くと、海をいけすにして魚を育てる、という景色が思い浮かびますが、今は、市街地のマンションなどの部屋でも簡単にできてしまうくらいに進化しているのだとか。
八畳の部屋でカワハギを養殖しています!
まずは、一年前から養殖をしている方にお話を聞きました。三重県のNPO法人どんぐりの会、理事長の池田芙美さんのお話です。のお話です。
NPO法人どんぐりの会・理事長の池田芙美さん
「今、カワハギを飼っています。もう出荷できるような状態になってまして、定期的に提携してる居酒屋さんに出荷してるという形になってます。その水槽がおいてあるお部屋っていうのが、八畳くらいで、水槽は横1mの縦1・5mくらいのものかな。水はね、替えないです。ね、お風呂だったら毎回水を排水すると思うんですけど、排水しないでも循環装置で綺麗になっていくっていう形で、水替えは必要なくてほんとに少しずつ水を足すのみなので、手間が無いっていう感じですね。なんていうんだろう、生臭い海水の臭いというか、海臭いにおいというか、それがまったくしない、というのが特徴で、そんな海水がまさか入っているっていうようなお部屋ではない、状態ですね。」
こちらでは、常に40匹ほどのカワハギを養殖しています。水槽の掃除もホームセンターのスポンジ。水は蒸発で減った分を水道からじゃーっと入れて、人工海水の塩で濃度調整。エサやりもスマホで管理できて、とにかく手間がかからない。
干潟に学んだ、新しい技術で浄水
これが実現できたのは、魚の排泄物などの化学物質をなくす脱窒という作業で、今までとは違う処理方法が開発されたから、なのですが、開発した東京海洋大学名誉教授の延東真さんに聞きました。
東京海洋大学名誉教授・延東真さん
「魚介類もやっぱり糞尿出しますので、人の下水処理と同じ方法を使って水をきれいにしてたんですね。酸素が無い条件でやる脱窒という方法なんですけども、これを大量に酸素がある条件でもできるようにしようと、いろいろ考えてですね。干潟の原理ですね。干潟の原理で、うまいこと酸素を使って脱窒っていう現象が起きるころが分かってですね、あの一日に二回、潮が満ちて潮が引いてっていう干潟の現象ですね、で、それを一日に数百回やらせると、爆発的にその脱窒っていう反応が起きると。電気でやる方法だとか色んな方法考えたんですけど、結局自然がやってるところに行きつきましたね。自然ってすごいですよね!」
養殖している魚介類の糞尿に大量に含まれるアンモニアや硝酸などの窒素分。これを処理することで、陸上でも、排水せず水を循環させて養殖しています。以前は、我々人間の下水処理と同じ空気の無い状態で、微生物を増やして、微生物に窒素分を処分してもらう方法(嫌気脱窒と言います)だったのですが、下水処理の水で魚を飼うと、どうしても微生物や有機物など色々悪さをするものがある、ということになり、魚のヒレがボロボロになったり、ちょっと臭いもするものになってしまう。しかも、専門の人を雇わなければならないほどメンテナンスが難しかった。
そこで、他の方法を探った結果、酸素がある状態で処理する方法(好気脱窒)に行きついた。これが、干潟で自然に行われている脱窒の方法。これで窒素分は綺麗に無くなり、微生物もいないので、例えばアニサキスなどの心配も無い。処理された水は、海洋深層水なみの綺麗さだとか!
養殖だけじゃない!活魚の在庫化ができる!
海での養殖は、エサや排水が環境を汚すとして問題だったが、それも解決、と、なかなかすごいこの新技術なのですが、この成果は、もっと別のところにもあるんです、と延東さんはおっしゃいます。
東京海洋大学名誉教授・延東真さん
「海洋深層水並みの綺麗な水になってるもんですから、長~く飼えるようになったですね。大きくなるし。単に養殖ができるだけではなくて、品質を長く保ったまま在庫ができるということが、やっぱり大きいかな、と思いますね。そういうことができると、競りにかからないで値段が決めることができるようになったんですよね。たくさん獲れたときは自分のところにそういうのを置いておいて、安いときには出さない、高いときに出すっていう出荷調整ができるようにもなったかな。漁師さんは、ここ20年くらい下がってるんですね、収入が。で、このままいくと漁師が、まあ高齢化もしてることもあるんですがいなくなっちゃうと。やっぱりちゃんと収入を得る道を作らんとだめだ、というのが業界での危機感があって、そういうことにひとつ貢献できるかな、ということも思います。」
在庫できるようになったことが大きい、と。
また、小型の水槽なので、街中、例えばデパートの屋上や駅などに置くこともできるので、観光ぶどう農園のように、来てもらい、見てもらい、場合に依っては釣ってもらい、食べてもらい、加工してお土産で持って帰ってもらう、という漁業の6次産業化も視野に入れている、とも話していました。(ただ、課題はコスト!極端に暑い、寒いはだめなので、その電気代などが、かなりかかる)