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6月22日(木)放送後記

「日本郵便とヤマト運輸が協業」というニュースがありましたが、人手不足の問題で悩む物流業界では、とにかく様々な変化が起きています。今回は、そうした動きをさまざま取材しました。

写真店や居酒屋がアマゾンの荷物を運ぶ

まず最初の変化は、あのアマゾンの配送です。

実はアマゾンの配送は色々な人が担うようになっていて、そのお一人、普段は江東区で写真店「フォトショップ・ダイヤ」を営む82歳、鈴木吉昭さんに、どう関わっているのか伺いました。

「フォトショップ・ダイヤ」店主 鈴木吉昭さん
週に2回だけ、運動の形でやってるんですよ。町内会の近隣で、午前中1時間半ぐらいやって、午後に1時間半ぐらいやるって形ですよね。いや、もうほとんど頭ん中にね、地図が入っちゃいましたから。右回りでこういうふうに行ってっていうふうにやってますから。そうするとそれでね、平均すると8キロぐらい歩いてるんですよ。1万4000歩ぐらいですね。写真店なんてのは食っていかれないですからね。じゃあ、車じゃなくて、自転車じゃなくて、バイクじゃなくて、徒歩であれば、実益を兼ねるんじゃないかなと思ったんですよね。

82歳の鈴木さんは、週2回、本業の写真店を運営しつつ、近隣のお宅にアマゾンの荷物を届けています。

鈴木さんの場合、まず10時前に、30~50個ほどの荷物が届きます。それを、午前と午後にわけて、歩いて、運動がてら配達します。

40年以上、写真店を経営していて土地勘はあり、宛名を見るだけで、どの家かが分かるそうです。

そして、こうした地域の中小企業に、本業の隙間時間を利用して配達を担ってもらう取り組みですが、アマゾンは去年12月から始めています。新聞配達のお店や居酒屋、美容室、花屋など、全国で、数百のお店が、副業として、配達を請け負っているそうです。鈴木さんのように徒歩だけの方は珍しいようですが、皆さん、自転車・バイク・車などで、近所に配達しているようです。

タクシーで旅客と貨物運送を「かけもち」

物流の変化もう一つ。今度はタクシーで、人も荷物も、「かけもち」して運ぶ動きも出てきています。

岡山県のタクシー会社「二葉観光運輸」の専務、頼正 健志さんに伺いました。

「二葉観光運輸」専務 頼正健志さん
タクシーでお客さんを乗っけて行った帰りに、レンコン積んで帰ったり。人を乗せて行って、帰りに野菜を、直売所間を品物輸送という感じですかね。
田舎だから、お客さんっていうと病院の送迎が主なんですよ。あと、買い物客かな、過疎地からのね。そんなお客さんばかりだから、時間決まるんですよ、だいたい。9時半ごろ~1時過ぎぐらいまでが、ちょっとタクシー忙しい。

で、2時ぐらいから電話ないような状態が続くから、夕方まで。その間に、運転手さんもボーっとしてるのも退屈でしょう。体も動かしてもらわんと健康状態もアレだから、ちょっと運転手さんに仕事をつけて。もう多いときは、週に2回ずつぐらいかな。

人も、荷物も、「かけもち」で、お客さんを降ろしたついでに、近くの直売所で野菜を積みこんで、倉敷市や、笠岡市の直売所まで届けています。

こちらは、個人のお宅への輸送ではなく、地元JAの依頼を受けて、岡山県内の直売所から、別の直売所に、レンコンや桃を運んだり、お米をスーパーに運んだりしています。

5人乗りのタクシーだと、乗客がいない場合、最大で220キロ積めるので、20キロのお米を10袋、タクシーのトランクに載せて、スーパーに運ぶことも。

ただ、これは違法ではないのかと思ったのですが、実は、タクシーで荷物を運べる規制緩和が、物流網の弱い過疎地から始まっていて、これはその一例なんです。

そして、今月30日には、ついに全国で規制が緩和されるので、今後東京でも、乗り込んだタクシーが、さっきまで野菜を積んでいた!ということも出てくるかもしれません。

人を運ぶ以上の利益があるかどうか

人が乗っていないなら、荷物を載せちゃおう!というのは効率的ですが、では実際に、「かけもち」の動きは広がるのか?「二葉観光運輸」の頼正さんに伺いました。

「二葉観光運輸」専務・頼正 健志さん
例えば、弁当1個運ぶのに、片道5キロあるところを、持って行ってあげたりするけど、200円ぐらいかな、もらっても。1個が。

ほぼボランティア。年末のお歳暮時期とかああいう時期は、「軽貨物」で手伝ったこともあるけど、そこらの運賃でもなかなかね。それだけでやっていこうと思っても、たぶん、だいぶやり方考えないと、採算が取れんのじゃないかな。それだけの運賃くれたらできるかもわからんけども、お宅に人がいなかったら「再配達」とかね、大変ですよ。その間にタクシーの方が留守になっても困るでしょう、本業が。すぐお客さん運ばんといけんってなったら困るから。タクシーが今度、動かなくなるからね。

当然ですが、「人」も「荷物」も運ぶ場合、「どれだけ儲かるか」「人を乗せる以上の利益があるかどうか」がポイントのようです。

個人宅への配送も行っている北海道のタクシー会社は、「正直、採算が厳しい」と話していました。また、「再配達が大変だから」と、撤退した企業もあるようです。

この「かけもち」が、どこまで効果を発揮するか?ヒトの移動、モノの移動は、既存のインフラをうまく活用して、合理的に行うのは良いことですが、物流は「生活のインフラ」なので、国や自治体がバックアップしていく必要も出てきそうです。

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