TBSラジオ『蓮見孝之 まとめて!土曜日』毎週土曜日内で8時20分頃から放送している「人権TODAY」
様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回は、ろう者で性的マイノリティという、二つのマイノリティの当事者について考えたいと思います。

耳の聞こえないろうに加えてLGBTQ+の人は、推定で全国に4000人から6000人くらいいるとされています。今、耳の聞こえるLGBTQ+の人たちも積極的に活動をしているなかで、ろう者のLGBTQ+の人たちの当事者団体も全国にはいくつかありますが、耳が聞こえないゆえに情報が入ってきにくいため遅れをとってしまうという課題があるそうです。そうした問題を解決するために「日本ろうLGBTQ+連盟」という全国組織が、ことし4月に設立されました。そこで、連盟のお二方、こうへいさんとかえでさんにお話を聞きました。お二人ともプライドハウス東京レガシー多言語多文化推進事業デフデー担当でもあります。

「日本ろうLGBTQ+連盟」代表のこうへいさん

ろう者で性的マイノリティのネットワーク『日本ろうLGBTQ+...の画像はこちら >>

まずは連盟の代表のこうへいさんです。

自身もろう者で、ノンバイナリーです。ノンバイナリーとは、性の在り方が男性・女性という性別二元論にとらわれない人です。こうへいさんに全国のネットワークを作った理由について聞きました。ラジオで放送した音声は、今回手話通訳をお願いした高島由美子さんの声です。

日本ろうLGBTQ+連盟の中に7つの団体が組織的にあるわけなんです。それでLGBTQ+に関わる手話について、それから団体の地域性など色々情報を交換したいという気持ちがありまして、たまたまコロナがあったので、手話というのは目でする言語なので、あらためてZOOMという方法を使って今の必要性は何か、団体それぞれの代表が集まってろうLGBTQ+連盟を可視化することがすごく大事だと思ったんですよね。

(こうへいさん)

「日本ろうLGBTQ+連盟」は、全国7つの当事者団体が連携して当事者同士の情報共有や関連用語の手話言語の普及を目指しています。では、その関連用語の手話に関する課題について、「日本ろうLGBTQ+連盟」の運営でゲイの当事者のかえでさんに教えてもらいました。

例えば「デート」っていう手話は、親指と小指を立てて男と女が一緒にデートするっていう意味で「デート」する、と。でもそれだとLGBTQにはちょっと違和感があるので、男同士とか女同士とか臨機応変にその人の立場によって手話を変えていった方がっていう案が出ているんですね。それから2つ目には「結婚」という手話があって、男と女がくっつく結婚という社会通念で生まれた手話なんです。でも男性と女性だけではないですよね、結婚は。

ずっとモヤモヤしていたんですよ、僕。どうして男と女だけが結婚?って。結婚っていう手話じゃなくって、“薬指に指輪をはめる”っていうので「結婚」っていう手話に変えたらいいんじゃない?って。(かえでさん)

かえでさんが話してくれた2つの手話。はじめの「デート」は、男性という意味の親指と、女性と言う意味の小指を立てたものです。よくある“アロハ”のサインに近いといえば分かりやすいと思いますが、それもデートは男女でするものという前提の手話ですよね。

それを両手の親指同士や、小指同士など、臨機応変に変えたらいいのではという話でした。そして次に教えてくれた「結婚」も、右手で指輪を持って、左手薬指にはめる、という手話に変えたらいいのではという提案でした。

ろう者で性的マイノリティのネットワーク『日本ろうLGBTQ+連盟』が設立

さらに、もう一つの大きな課題として「地域差」も挙げてくれました。代表のこうへいさん自身も山口県出身で、現在は東京に引っ越して数年が経ちます。都会では、これまでの先人たちの活動のおかげでLGBTQ+の知識もある手話通訳者がいますが、地方では予算の問題などもあって関連用語のわかる手話通訳者がなかなかいない現状があります。この件は、群馬県在住のかえでさんも大きく頷いていまして、自治体から派遣された手話通訳者には「ばれたくないので頼みづらい人が多い」と話していたんです。

地域のコミュニティでの噂は広まるのが速いので、通訳もかなり慎重に頼むようにしているということでろう者のLGBTQ+によくある問題だと教えてくれました。

人によっては、ホルモン注射や性別適合手術を行う場合には同行する手話通訳者へのカミングアウトやその人との関係性に加えて関連用語の専門知識もないととても不安だというお話も。

かえでさんがLGBTQ+という手話表現を教えてくださいました。

おしまいに、代表のこうへいさんに今、日本ろうLGBTQ+連盟が必要な支援を聞きました。

今必要としている支援は、今みたいなインタビューのような場所をどんどん増やしていきたい。ろう者の中にLGBTQがいるんだっていうことを聞いたり見たりする機会。

私たちの団体だけの力では絶対に難しいこと、だから皆さんのお力添えがあってこそ。ですからそういう支援はすごく必要としています。(こうへいさん)

今後、連盟では各地のパレードといった地域のイベントに参加したり、さらにはこれまでのろう者のLGBTQ+の歴史などを綴った本を出版することで存在を可視化していきたいということでした。