TBSラジオで金曜午後10時00分~11時30分に放送中「武田砂鉄のプレ金ナイト」。 2月23日放送回のゲストは、ヒコロヒーさんでした。
ヒコロヒー:だいぶお久しぶりで。そんな感じがしないんですけどね。
砂鉄:その時に何の話をしたかというと、自己啓発本をたくさん読むと、必ず“ジョギングしろ”と書いてあるっていう話をどうやらしたらしいんですけど。その後は自己啓発本とジョギングの絡み合いというんでしょうか、考えは変わりましたか?
ヒコロヒー:変わらないですね。よく目にしますね、まだ。(中略)でも若い時は試してみようと。食わず嫌いが一番いけませんから、やってみましょうということで取り組んでみた時期もあったんですけど、さしてそんなに。
砂鉄:走る前から走る人はもう変わっているのかもしれないですよね。
ヒコロヒー:そうそう。だからそういう本を読んで走ろうって思える人なので、健やかじゃないですか、元々。
砂鉄:その素直さがね。走る前から完成していると。
ヒコロヒー:そんな人はジョギングいらないんですよ、言っちゃえば。そのお気持ちがあるからすごいことなんですよ。ジョギングをすることよりもその心の方が大事なんだと思いますけどね。
相変わらずのヒコロヒーさん。この後も続きます。
“茶をしばく”をしばいている
砂鉄さんも火曜日・13時台に出演されている、文化放送『大竹まことゴールデンラジオ!』。ヒコロヒーさんは木曜日のパートナーとして出演されています。砂鉄さんはヒコロヒーさんが使っていたある言葉にハマっているようです。
砂鉄:前に、大竹まことさんのラジオにヒコロヒーさんが出ていた時かなんかに、“喫茶店に行く”っていうことをヒコロヒーさんが、“茶をしばく”っていうふうによく言ってます?
ヒコロヒー:言います、言います。
砂鉄:その言い方がすごく好きで。夫婦で喫茶店行く時に“茶をしばこう”って(笑)ものすごい流行ってるんですよ。
ヒコロヒー:えー。うれしい。
砂鉄:茶しばくようになっています。“今日、茶しばこうよ!”って。
ヒコロヒー:“茶をしばく”って言葉をしばくようになっているんですね。人に影響を与えられていたとは。
ヒコロヒーさんの本の向き合い方
砂鉄さんとヒコロヒーさんは、毎日新聞の『今週の本棚・話題の本』で連載をされています。砂鉄:毎日新聞の書評を毎週楽しみにしているんですけれども、あんまり家に本をたくさん溜めずに、IKEAのボックスセットか何かに入れているんですよね?
ヒコロヒー:そうです。本棚っていう物が無くて。ちょっと前までは雑多に押入れの中にバーっと詰め込んでいたんですけど、基本的に読んだらすぐ売っちゃうんですよ。とっておきたい本はとっているんですけども。本棚がある生活をしていた時に、文字が否応なしに目に入るじゃないですか、家に居て。あれがちょっと得意としないというか。例えば『悪者』みたいな名前の名著があったとして、本棚に入れとくと悪者っていう文字が否応なしに目に入ってきて、その瞬間私は悪者について考えないと気が済まないんですね。
砂鉄:考えるとこまでやらないと気が済まないですか?
ヒコロヒー:自制心がないんでしょうね。ないですかね?今もこうやってね、ラジオのブースの中にはいろいろと文字の見えるモノがあって、例えば“地震発生時には落ち着いてください”みたいなことが今パッと入ってたりするんですけど、その時に“落ち着いてとは”とか、“繰り返すとは何回程だろう”とか。これはもう本当に邪魔くさい性質なんですけど。
砂鉄:それはでも、客観的に見るといろんな物事の違和感に気付いてとか、言葉にこだわりがあってみたいなことになるとは思うんですけど、暮らしてると面倒くさいですよね。
ヒコロヒー:面倒くさいですよ、ややこしいです。だから、空き時間とかずっとインターネットを見てる人とかの気が知れないというか。なんかもう…うわーってなりますけどね。
砂鉄:そういう物があまり入らないような暮らしをするということですね。
ヒコロヒー:そうですね。暮らしをするようにしています。
砂鉄:タバコ・麻雀・酒と。
ヒコロヒー:はい、愛してます。
砂鉄:そうすると、文字は入りにくくなりますよね。
ヒコロヒー:東南西北(トンナンシャーペー)ぐらいですね。
砂鉄:(笑)文字の物はね。
「ちょっとぐらいいらん肉あっても許される」
ヒコロヒーさんは、2024年1月に初の短編恋愛小説集『黙って喋って』を発売しました。砂鉄:今回、短編恋愛小説集ということだから、1つ1つは7~8ページぐらいの短い形ですけど、1つ1つは壮大な物語というよりも、生活の一部分を切り取ったというか、この話の前にもいろんな物語があって、この話の後にもいろんな物語があるんだろうなっていうふうに想像させるような物語が多かったんですけど。これは恋愛というテーマで書いてくれないかという依頼に対して、割と軽い気持ちでやりますよと?
ヒコロヒー:軽い気持ちでしたね。かといって私に恋愛のことを書ききれるような経験値も筆の技術も無いので、これは別でモチーフを貰おうかみたいな話をしてて、中島みゆきさんが惚れた腫れたのエキスパートというイメージを…私も大ファンなんですけど、彼女の私の好きな楽曲から何かヒントを得て書くみたいなことをやってみようか、なんて話してそれでいきましょうって言ってたんですけど。途中から私も編集部の人も忘れててその設定。3個目ぐらいの物語からは、とにかく締め切りが迫っている、書かねば、という気持ちで一生懸命やってたっていう感じでしたね。」
(中略)
砂鉄:今回の小説の中でも、大きな物語を転換させるようなことをどんどん言うというよりも、男女の会話であったり、少し転がったり少しネジが飛んだり歯車が噛み合わなくなったりするみたいなものの、それが会話で書かれたりしてるじゃないですか。そういうものっていうのは、これまで作られてきたコントとか、そういうものと作りというのは違うもんですか?
ヒコロヒー:共通点として白紙のものから1つの話を書くっていうところはすごく似てるっていうのと、あと前振りがあってバラシがあるっていう、私のコントはそういう作り方。世の中いろんなコントのパターンがあって、私のコントの場合は振って振ってバラすっていう作り方なので、似てるようなところもあるのかなと思いつつ。
砂鉄:自由に羽ばたかせること出来るわけですよね。
ヒコロヒー:コントの時って笑うかどうか、お客さんがウケるかどうかがとにかく一番大事で。それ以外の肉みたいなものを削ぎ落としていく作業を繰り返していくんですけど、不思議と文字・活字・本・物語ってなると、ちょっとぐらいいらん肉あっても許されるなみたいなところがあって、その辺も楽しくやらせていただきました。
また、
・セットアップを買おうとするとヒコロヒーさんみたいになる
・閏年の向き合い方
・J-POPのお琴バージョン
などなどお話しました。
ヒコロヒーさんの新刊『黙って喋って』は、朝日新聞出版から発売中です。