今、ゴールデンウィーク中という方も多いと思いますが、本来なら休みなのにやむを得ず仕事をしている方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今日は「つながらない権利」の話題です。
これは「業務時間外に仕事に関する連絡に対応しなくてもいい」権利のことです。
「つながらない権利」注目の背景
なぜ今「つながらない権利」が叫ばれているのか、労働法が専門で、この権利に詳しい青山学院大学法学部 細川良教授に伺いました。
青山学院大学法学部 細川良教授
もともと仕事をしない時間が休憩とか休日ですから、通常仕事はしないわけですよね。日本の最高裁の判断でも、業務から完全に解放されていることが、休憩時間と評価するための条件だという判断をしているんですね。ところが今は通信技術が発達して、メールとかいろんなチャットツールとか、気軽に業務上の連絡ができるようになってしまったので、結果的に休憩とか休日の間に、業務に関する連絡が頻繁に来るようになってしまったことで「つながらない権利」が現実にはなかなか上手くつながらない状態をキープできなくなってしまっている。つながらないということをきちんと確保することが必要なんじゃないかと、つながらない権利が注目されるようになった、経緯があると思いますね。
コロナ禍以降はテレワークも普及して、オンラインでのコミュニケーションが当たり前になったことも影響としては大きくありそうです。
日本では「つながらない権利」自体の法制化はされていませんが、海外では、フランスで2017年施行の改正労働法に盛り込まれたほか、今年2月にはオーストラリア議会で、勤務時間外に雇用主が労働者に連絡することを禁止する法律が制定されました。
休日に仕事の対応、していますか?
実際に皆さん、休日に仕事の対応をしているか、街で聞いてみました。
「広告の営業です。今ちょうど映画観てきて、この後ジムに行くんですけど、そこの間でお客様から連絡あったのでゴールデンウィーク後に自分が大変になるのでやったって感じです。」
「出版社で勤めているので、今日とか倉庫では出荷の作業とかしてたりするので、確認の電話が来ても対応はします。僕が休んでいても働いている人がいるので、電話もらっても「僕休みだから」とかちょっと言いづらくてという感じですね。」
「してます。というか私がさせてるかもです。経営者側なので。
嫌だな、ストレスたまるな、と言いつつも対応している方がほとんどでした。その一方で、最後の医療クリニック経営者の女性からは「申し訳ないと思いつつ忘れてしまうのでその場で確認のLINEをしてしまう」といった、経営者側の率直な意見もありました。
去年、連合が働く人1,000人に行った調査によると「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがある」という人は72.4%、「つながらない権利によって、勤務時間外の連絡を拒否できるのであればそうしたい」という人は72.6%という結果になるなど「つながらない権利」が、いま必要とされ、注目を集めているんです。
つながらない権利、制度 導入の企業は
そんななか日本でも「つながらない権利、制度」を導入している企業があります。空調自動制御システムの設計や施工、メンテナンスを行う、株式会社オーテック環境システム事業部中部支店 白石肇さんのお話です。
株式会社オーテック環境システム事業部中部支店 白石肇さん
休んでいる最中に業務用の携帯に電話がかかってくるのを支店に自動転送するシステムです。2023年11月から開始しました。担当以外の社員が緊急のトラブルでも対応できるように、各現場ごとにマニュアルをまとめていて、誰でも対応できる体制にしてあります。土日に仕事に入らなきゃいけない工場や病院などが多々あって、平日に代休や振替休日をとります。
今は中部支店の技術部のみ、20代~50代の10人の社員が利用している制度ですが、今年度は各支店や部署で制度設計を進めて、全ての支店で展開予定だということです。
「つながらない権利」。業種や職種によって対応できる、できないは様々だと思います。まずは各企業がルールを作って進めていくことになるのでしょうか。