日々の天気や街のトレンド、おいしいゴハンに大人の悩み、社会の仕組み・・・1日イチ「へぇ~」なトピックスを。新進気鋭のコラムニスト、ジェーン・スーが、生活情報や人生の知恵をナイスなミュージックと共に綴る番組。
ゲストは、医療ジャーナリストで医師の森田豊さん!
各地で夏日を観測している場所が増えてきています。「まだ5月」と思いがちですが、水分補給をしっかり行い、この時期から熱中症に注意してくださいね。
大阪・関西万博で見た、医療の進化
先月の4月20日(日)、大阪・関西万博に行ってきた森田さん。とても人気のある日本館やイタリア館には入ることはできませんでしたが、医療関連のパビリオンは一通り体験することができました。本来の万博と楽しみ方が違うかもしれません。今回の感じたのは「再生医療の進化」。今回は、森田先生が万博で見て、感じてきた医療の進化についてお話していただきました。
『iPS細胞から作成した‘動く心臓’が見られる!』
人材サービスの会社「パソナ」グループが展示しているパビリオン「PASONAパソナ NATUREVERSE」では、大阪大学の澤芳樹特任教授などのグループが開発した、iPS細胞から作った「小さな心臓」が展示されていました。
この心臓は大きさが親指くらい。すでに実用化されている「iPS心筋シート」という技術を応用し、心臓の形をしたコラーゲンの膜にiPS細胞から作った心臓の筋肉の細胞を染み込ませて作ったものになります。
Youtubeなどでもたくさん動画が上がっているので、リスナーの方で気になった人は確認してみてください。
おそらくiPS細胞をもとにした、動く心臓の立体モデルを展示しているのは世界でも初めての試みだと思います。
万博の期間中は一週間ごとに新しいものに交換して、培養液の中で常に動いているような状態を観察できるようにする ということです。
この「iPS心臓」ですが、「血液を循環させる機能はまだない」とされているので、将来的に研究が進めば、人に移植できる日が来るかもしれません。
これ以外にも、PASONAパソナ NATUREVERSEネイチャーバースパビリオンでは、最先端技術による「手術用ガイドワイヤー操作体験」や遠隔治療を可能にする「未来のカテーテル手術体験」なども行うことができます。
このような体験から「医療」だったり「医者」という職業に興味を持ってもらえるのも、私としては嬉しいですね。
また、最適な眠りを実現するため、睡眠中の心拍数や呼吸、体の動きなどをセンサーで測定し、自動でリラックス状態に導く香りや音などを出してくれるベッドの展示もされていました。こちらはすでに実用を目指して動いている ということなので、楽しみです。
『心臓以外にも再生医療は進化している!心筋シート! 』
「大阪ヘルスケアパビリオン」というところでは、iPS細胞から作った心臓病の治療に使われる「心筋シート」の展示がありました。先ほど紹介した「iPS細胞の心臓の基になっているもの」のようなイメージでしょうか。iPS細胞から心臓の筋肉の細胞を作り、薄いシート状に作られています。
先ほどの立体的な心臓とは違い、ペラペラのシート状のものが鼓動のように動いていますよね。
例えば、この心筋シートは、心臓手術の際に、心臓に貼り付けることで、疲労感や動悸の症状が軽くなり、新機能の数値も改善したという実績も出しているので、今後はもっと本格的な臨床応用もされるでしょう。その他にも、脊髄の損傷、1型糖尿病、ガンなどに対しても研究が進められています。
また、視野が狭くなってしまったり、視力の低下を引き起こす「網膜色素上皮不全症」という、病気があります。神戸市にある神戸アイセンター病院で、その病気の患者3名に、iPS細胞から作った網膜細胞を移植する臨床研究を行ったところ、移植した細胞が1年後も定着していることや、このうち1人は見え方も改善しているとの報告がありました。
安全性が確認されて効果が明らかになってからなので慎重にならないといけませんが、一般的には5年~10年くらいかかりますが、厚生労働省も受理している背景をみると、数年以内に医療現場で治療の手段の1つとして当たり前に採用される可能性はあります。
日本人の寿命はこの150年で40歳ほど延びています。
iPS細胞の今後の研究により、さらに寿命は延び、人類に対しての貢献度はとても大きくなりますよね。医学が進歩しこれまで治らなかった病気も治せるようになっていくことを期待しましょう。
『25年後の自分と会う、リボーン体験!』
こちらも、大阪ヘルスケアパビリオンで体験した「リボーン体験ルート」というものです。こちらでは様々な指標から、健康スコアの測定を測定し、25年後の自分のアバターと対面できるコーナーがありました。
まず、生年月日を登録して場内を進むと7つの項目に関する健康データを、複数のセンサーやカメラで測定する「カラダ測定ポッド」というものが設置されていました。ここで画面を見つめて、いくつかの質問に答えて、両手を金属の探知機に触れると、心血管、筋骨格、髪、肌、歯、目、脳の全7項目、およそ45種類の健康データをおよそ5分で取得できます。両手を特定の位置に置いて体脂肪率などを調べる測定には、健康機器を手がける「タニタ」の最新技術が使われている様でした。測定が完了すると、画面には7つの項目それぞれのランクと、測定結果に基づく「カラダ測定年齢」が表示されました。

森田先生は・・・ 目と脳と歯はA!肌はD!カラダ測定年齢は61歳で年相応!(※森田先生は61歳)
もちろん測定結果は参考程度にすべきだと思いますが、体の状態を数値化し、健康について考えるキッカケになりますよね。
さらに体験を進めると、計測した健康データを基に、「25年後の自分のアバター」と会うことができます。スマホにアプリをインストールすると体験後もアバターを送ってくれるのですが、そのアバターの森田が周囲の人と動いたり、踊ったりしていました。本日はその写真を用意しました。
こちらが25年後、86歳の森田先生です。

「25年後の自分」が楽しそうにしているところを見ると、「この先の人生も健康を大切に生きよう」という気持ちになります。今回の放送で、ご自身の健康を今一度考えるキッカケにしてみてください!

(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)