ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。
山出美弥さん
岡山県出身の研究者。
出水:山出さんは小さい頃はどんなお子さんだったんですか? おうちに建築のきっかけが落ちていたんですか?
山出:そういった質問を学生からもよく受けるんですが、実は私、全く建築って興味がなくて・・・たしかに幼少期に家を新築したんです、今思い出しました(^^)ですが、その時もとくに興味なく過ぎていき、工業高校で建築に行った理由は・・・制服がかわいかったから(笑)
JK:女の子ね! ファッションの方がどちらかというと興味があった?
山出:そうですね、身近でしたね。でも本当に男まさりで、自由に生きていました。
JK:男まさりって感じはしないけど?
山出:みなさんそう言ってくださるんですけど、私すごく授業でも怒りますし、声を荒げるんです(笑) 学生が来てくれなくなりますかね? 結構やんちゃで、兄弟構成としては真ん中だったので。
JK:一緒だ! 私も真ん中。
山出:一緒です! 次女なんです。姉と弟に挟まれて、やんちゃをしていました(^^;)
出水:15歳で制服に惹かれて建築家に入られるわけですけれども、そこで学んだ何かでスイッチがパンって入ったんですか?
山出:高校1年生の時に設計製図を習うんですけれども、一番最初に書いたまっすぐな線を恩師が褒めてくれまして。きっかけは本当にそれです! そこでもうスイッチが入りました。
JK:私も高校の時は美術部だったんですよね。だから何にもなくて書くというのは何ともないんですよ。まっすぐな線とか、綺麗な丸が元通りの丸になる・・・当たり前なのにみんなできないの。
山出:そうですね、私たちはまっすぐな線を書く訓練をしているので・・・今はもう書けませんけど、当時はフリーハンドもそうですし、製図道具のT定規でまっすぐ書く。
JK:とくに建築とかは精密ですからね。
山出:その1本の線が壁だったり床だったりになるのを想像して、魂を込めて書くんですね。今でも思い出すんですけど、グーッと力を入れて書いた線を「すごく上手だ」って。
JK:ちょっと褒められるとその気になりますよね。若い頃って絶対そうなの! 私も筆を使うの好きなんで、お習字の時間に先生に褒められたの。それがずっと忘れない!
山出:今でもじゃあずっと続けられて? 絵画も筆で描かれてますよね。
JK:そう、鉛筆とかコンテじゃなくて。ラフでバーッと描くときは筆が一番です。それも中学生の時、お習字の時間にちょっと褒められたことが始まり。
出水:私も実は大学入試の時に、面接受けたら「いい声ですね、アナウンサー志望ですか」って言われた(笑)褒められるって大事ですね!
JK:絶対褒めてあげたらいいと思う! 人生を変える力がある。
山出:褒めて伸ばしたいですよね。
出水:その後大学でも建築学を専攻して、さらにオックスフォード・ブルックス大学で研究員も経験されてます。イギリスに行かれたのはどんな経緯だったんですか?
山出:工業高校では設計製図を勉強して、そこからもっと建築やりたいなということで大学、大学院と進む中で、次に建築を使う人に興味が出てきたんです。やっぱり人が存在しないと、いくら建物を建てても使われなければ意味がない。ということで人と人とのつながり=コミュニティデザインの方に興味が出まして。それを生涯の生業にしようと。ずっと研究を続けていくということがいいんだろうな、合っているんだろうなと思ったので、大学院の時の先生に「大学教員になりたいです」と言ったところ「英語が喋れないと先生になれないよ」って言われたんです。

山出:ただ私、理系で工学部なので英語の世界とはちょっと・・・距離が・・・絵で会話するっていうか、建築の図面で会話するっていうか。まず語学留学という形で1年ほど滞在しまして、そこから大学院の研究員として少し在籍をしていました。本当にもう建築ばっかりやっていたので、日本で英語の単位を落とすということを積み重ねておりまして・・・海外で勉強し直しました。今は英語で授業をしております。
JK:それはすごい!
山出:留学生だけのクラスも教えていますし、日本語学生に対して英語の授業もやっております。
JK:山手さんにとってマサカは何でしょうね。
山出:それはもちろん、コシノ先生との出会いです! タカラベルモントのおかげです。
JK:うれしいですよ! よかった、万博があって。これをご縁に、これからますますやりましょうね!
山出:はい、まだまだ。ここはスタートということで。
出水:山出さんはふだんアイディアがパッと浮かんだ時どういう風に形にしていくんですか? パッと浮かんですぐやるのか、それともじっくりやるって決めてデザインするのか。
山出:どちらもあるんですが、やっぱり全く違うものを見ている時にパッと浮かぶというのは多いですかね。
JK:出会いですね。出会いはクリエイティブって言うんだけど、人との出会いだけじゃなく物とか、ちょっとしたきっかけってあるじゃないですか。場面でもいいし、場所でもいいし、何か思っても見ない出会いがあってパッとひらめくわね。でも常に思ってないと、出会っても簡単じゃないですよ!
山出:そうなんですよ!
JK:せっかく良いものがあるのに、無関心だと何にもならないじゃないですか。
山出:そうですね。本当に全く一緒です! これ言ったら学生に笑われるかもしれないですね(笑)
JK:いつもやっぱり学生さんを意識しますか?
山出:私、学生好きなので、学生に届けばいいなあと思いまして。
JK:すごいね、いい先生ね! 私そういう感覚ってあんまりないんですよ。学生さんに喜んでもらいたいとか、そういうのはあんまり経験ないんですよ。
山出:えっ! そうなんですね! スタッフさんとか、事務所の皆さんとか・・・
JK:スタッフであろうが何であろうが、別にそういうすごい思いが・・・あんまり血が通ってないのかな?(^^;)
出水:いつ頃から誰かに何かを教えたいと思うようになったんですか?
山出:高校に入った時ですかね? 建築を教えてくれた先生方に本当に可愛がってもらったんです。でも学生を教えているという感覚は全くなくて、教わっているという感覚の方が強いです。ほぼ98%はそうです・・・2%は怒りますが(笑)
出水:山出さんがデザイン製作を担当した 2025年大阪関西万博の大阪ヘルスケアパビリオン、タカラベルモントのブースには商品などは並んでいないそうですが、そこにも意味はあるのすか?
山出:あえて自社の製品はすべて取り除きました。やはり、自分の内面と向き合う空間にしてほしいと、いう願いがあります。
JK:美って想像の世界でもあるし、現実でもあるんだけど、美を感じるということがすごく大切ですよね。物って美かどうか分からない。
山出:圧倒的に写真を撮られている方が多いブースということで、ブースを撮るだけではなく、ブースに映り込む自分を撮ってもらいたいなというふうに思います。

出水:撮りたくなりますよね、虹色に輝くパネルを1000枚以上使っているということで、いろんな自分がいろんな角度から映り込むのも楽しんでほしいということですね。QRコードを掲載したビューティーカードを配布するということですが、これはどういった役割ですか?
山出: QRコードを読み取ると、我々デザイナーの想いであったり、最新の美容技術だったり、そういったお話が読めますので、勉強の方はそこでしてください(笑)カードも少し形に仕掛けがあって・・・発想のもとが皆様の手に届きます。
JK:すごいですね! でもたくさんの方がいらっしゃるでしょ。たくさん作らなきゃいけない。
山出:タカラの社員の皆さんが、折って作ってくださいました(^^)それを万博の思い出として大事にとっておいてもらいたいなと思います。温かさが伝わると思うんです。
JK:見るだけじゃなくてね。
出水:携帯電話で撮影したのを後から見返すのもいいですが、デジタルデータなので、手に取って残るお土産として持って帰れるのはいいですね。
山出:今はよく分からなくていいんです。いろんなこと、全てを分かろうとしなくていい。
JK:先に答えはないんですね。いいきっかけですね! ぜひこのパビリオン行ってください!

(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)