東京の多摩地域にお住まいの方、出身の方もそれ以外の方にも多摩を愛していただきたい!という番組「立飛グループpresents東京042~多摩もりあげ宣言~」(略して「たまもり」)。MCは土屋礼央さん(国分寺市出身)&林家つる子さん(八王子市の大学出身)。
今週のゲストも、指揮者でオーボエ奏者の茂木大輔さん(小金井市在住)。茂木さんの大スターとのエピソード披露に土屋&つる子が驚愕! お気に入りの「小金井公園」の穴場スポットの紹介、「のだめカンタービレ」の話、中央線を◯◯に例えると、など、茂木さんの素敵なお話が盛りだくさん!
「クラシック史を中央線で例えると三鷹はブラームス、立川はワグナー」茂木大輔さん(小金井市在住)②
「国立音楽大学」まで「五日市街道」を自転車通学で35分
土屋:今週のゲストのご紹介です。先週に引き続き、指揮者の茂木大輔さんです! よろしくお願いします!
茂木さん:よろしくお願いします。
土屋:今週は多摩でどう育まれて、今の茂木さんになっていったのかを伺っていきたいと思います。まず、「国立音楽大学」にオーボエ専攻で入るわけですよね。なぜ「国立音楽大学」に行こうと思ったのですか?
茂木さん:ズバリ答えは一つで、先生が良かった。亡くなられましたけど、丸山盛三先生という方でNHK交響楽団の主席だった方で。丸山先生は他のオーボエ奏者の方とは一線を画す、特別に美しい音を出す方で品のある演奏をされる方だったんですよ。大ファンで、「国立音楽大学」でしか教えてないことも知っていたので、音大に行こうと決意した時に習うなら丸山盛三先生に習うと、大学を決める前に先生を決めていたんです。

つる子:なるほど。
土屋:クラシックのオーボエは、高校時代からどれだけ練習していたんですか?
茂木さん:僕は高校2年の途中から始めましたから、1年半で入っちゃったということになるんだけど。当時、吹奏楽部でそんな人数が必要がないということもあって、オーボエをやっている人もそんなにはいなかったからフルートに比べれば入りやすかったとは言えるんじゃないかな。
土屋:でも音楽大学に行こうということですから、けっこう練習はされたわけですよね?

茂木さん:これはどの楽器でもそうで音大で専門でやろうとなったら、本当は1日3、4時間から6時間は練習、ピアニストなんか1日10時間練習している人もいるくらいですけど・・・僕はしてなかったですね(笑)。
つる子:ええ!?
土屋:で、「小金井」のご実家から通われていたんですか?
茂木さん:そうですよ、自転車で。
土屋:ということは、「五日市街道」を全力で行くということですか?
茂木さん:そうです、「玉川上水」沿いをずっと行くんですよ。良い道があってね。
土屋:真っ直ぐですけど、ただそれなりに距離はありますよね?
茂木さん:35分だったですね。
つる子:よく覚えていらっしゃる(笑)。

高校時代、作曲を習っていたのは、あの大物作曲家!
土屋:となると、大学時代、一番遊んでいた場所は・・・?
茂木さん:遊んでたということが全然無くて。これは真面目にオーボエをやっていた、ということではないんですよ。
つる子:えっ?
茂木さん:オーボエで受験するということになって。ただ、その前に一つプロセスがあって。高校2年生で音大に行くことを決めてオーボエの先生に習っていたけど、その途中に受験のためにピアノとか歌とかも習うんですよ。僕のいとこが売れない作曲家と結婚したんですよ。
つる子:はい。
茂木さん:その人があまり仕事も無かったから、いとこからその人にレッスンを頼めばいいよと言われて、毎週その人にレッスンを受けていたわけ。
つる子:はい。
茂木さん:レッスンを1時間受けた後に、オーケストラの楽譜を見せてもらったり、アニメの音楽も担当されていたので<この音にアニメが出てくるんだよ>というような話を聞いて、じゃあ作曲がいい!と思って。

つる子:へえ!
茂木さん:そしたら、<作曲家はおもしろいからなりなよ!>というわけですよ。<じゃあ、大学受験はオーボエじゃなくて作曲科にした方が良いですよね?>って聞いたら、<いや、作曲科に行っては絶対にダメ!>というわけ。
つる子:ええ?
茂木さん:<作曲科というのは禁止事項を教えるところだから>って。“禁則”というんですけど、そういうものを習わない方が良いって言うんですよ。<その代わり、オーボエを一生懸命やって。バッハとかバロック音楽をやって、空間の中で自分の音がどのように呼応するか、それを知っている方がいい作曲が書けるようになる!>と、その人が言うわけ。
つる子:おもしろい!
土屋:大人になってそのアドバイスの良さを感じますね。素晴らしいアドバイスですよね。
茂木さん:この人が・・・「久石譲」!
つる子:えええっっっ!?

土屋:オチが凄すぎる!

茂木さん:久石譲さんに作曲科に行くなと言われた話です(笑)。

つる子:震えました!
土屋:それは素敵な出会いでしたね!
山下洋輔トリオのレコードは「1回だけしか聞けない!」
茂木さん:その頃、久石さんが即興とか、イェローンやテリー・ライリーなどミニマルミュージックの大家がいるんですけど、いろんなことを教えてくれるわけですから、僕もそういうのに凝っちゃって。オーボエ科に受かって通ったんですけど、初めからオーボエ科の部屋にいなくて、打楽器の部屋に行ってミニマルミュージックを見に行ったりしてたんですよ。
つる子:はい。
茂木さん:それで、即興演奏集団を作ったりして。インドみたいな服を着て、ローソクの火が消えるまで即興しましょうみたいなことをやったりして。即興は難しい、終わりが無いな、みたいな。
つる子:はい。
茂木さん:で、芸術祭=文化祭があるんですよ。ジャズのビッグバンドをやっていて。僕がコード進行が読めたんですよ。そこで一緒にやっていたやつから<おまえ、コードでピアノが弾けるらしいな。ビッグバンドのピアニストがいなくてコード弾きだけだから、おまえ弾け!>って言われて。
つる子:はい。

茂木さん:そしたら、そいつが<これからとんでもない音楽を、1回だけ聞かせる。2度聞かせることは無いからな! 1回だけ心して聞いてくれ!>って言われて、とんでもないレコードをかけてくれたんですよ。それが・・・「山下洋輔トリオのクレイ」というレコードですよ。それで人生が変わっちゃった。それが音大1年生の秋だったんですよ。今でも忘れられないですよ、<1回しか聞かせない!>というのが。
土屋:なぜ1回なんですか?
茂木さん:お願いします。僕も今、それを聞かせる時は<2回聞かないで!>って言いますね。いや、2回聞けない、凄すぎて。山下洋輔さん、坂田明さん、森山威男さんがドイツでやっている演奏なんです。
土屋:今のところサボりまくりですよ。何もやって無いですよ。

つる子:(笑)。
土屋:そんなこともやっていたから、ほぼ遊ぶなんてことは・・・
茂木さん:遊ぶというとバンドの仲間の家に行って、徹夜でセッションやっていたんですよ。いろんなことやって遊んでましたよ。
つる子:音楽が遊びだったと。
監修を担当したドラマ「のだめカンタービレ」は“こんなガチなのか!”
土屋:そして、そんな茂木さんといえば、「のだめカンタービレ」! 大ファンのつる子さん、お待たせしました!
つる子:めちゃめちゃ見てました!

土屋:これはどういう経緯でお話が来たんですか?
茂木さん:僕はもともとマンガが好きなんですよ。ジャズだ、前衛だと言った時にアングラのマンガとかを読んでいて、青林堂さんの「ガロ」とか。ガロは留学先のドイツまで取っていましたからね。帰国して、しょっちゅう本屋さんでマンガをのぞいているわけですよ。
つる子:はい。
茂木さん:そこに「のだめカンタービレ」のマンガが平積みだったんですよ。表紙が楽器なんですよね。オーボエが表紙になっていたことがあって、この絵が正確だった! これはおかしい、漫画家がプロの音楽家じゃないかなと思って、マンガを全部買って。帰って読み始めたら、爆笑だし涙するし、しかも演奏の描写、あとドイツ語もものすごく正確なんですよ。しかも、旅行ガイドブックから引っ張ってきたドイツ語ではなくて、口語で日常で音楽大学で喋っている言葉を書いていらっしゃるんですよ。

つる子:すごい!
茂木さん:これはかなりすごい人なんじゃないかなと思って。選んでいる曲もマニアックだしね。
つる子:へえ!
茂木さん:この番組に出させていただくきっかけとなった時と同じ、<コンサートなどもやっているので、もしよかったら来てください!>ってファンレターを出して。そしたら、翌日すぐに講談社の編集者から電話がかかってきて。<茂木大輔さんのお書きになっている本は、連載が始まる前にすべて読んでおります。参考にしております>と。それからコンサートや打ち上げに来たり、リハーサルを見てくれたり。ちょうどマンガがプロの世界に入っていくところだったので、親しくなっていたので二ノ宮知子さんがプロの人たちをいっぱい知りたいということでね。
つる子:はい。
茂木さん:で、「のだめカンタービレ」のドラマ化の話があった時に、1人プロが現場に入っていないと心配だからということで呼ばれて。“その世界にいる人が読んだり見たりして、ヤな思いをすることだけは避けたい”とおっしゃって。それで私がドラマの監修に入ったんですね。演技指導もしましたし。
土屋:なるほど。ちゃんと音楽への愛があるんだよ。
茂木さん:二ノ宮知子さんはそこはすごくしっかりした方で。
つる子:役者さんは実際に演奏されてましたもんね! あれはどのくらいやられていたんですか?

茂木さん:凄かったですよ。テレビを単純に見ている人間には誤魔化せるんですけど、玉木宏さんも上野樹里さんもものすごい勉強されてましたよね! 頭下がります。まさか、こんなガチでやっているのか!って思ったもん。玉木さんは車の中でずっとラフマニノフのピアノ協奏曲を聴いて。上野さんは特にね。尊敬しましたね。
つる子:茂木さんから見ても素晴らしい作品になったわけですね!
茂木さん:我々の世界をいい加減に扱わないということが嬉しかったですね。
小金井在住の茂木さんが教える「小金井公園」の穴場スポット
土屋:そして、この番組は多摩の番組なので、茂木さんがお住まいの「小金井市」の魅力を伺わないと。
茂木さん:僕は他で住んだことが無いので。多摩はディープなド田舎ではないじゃないですか。適度に緑があって。僕が「小金井」で好きなのは「小金井公園」ですね!
土屋:いいですよね、横に広くて!

茂木さん:横に広いが、意外に大事ですよ! 「武蔵境」から「東小金井」から「立川」に至る横のラインで多摩は繋がっているじゃないですか。南側には「野川」があってね。
土屋:はい。
茂木さん:僕は6年前に病気をしたんですけど、お医者さんから歩きなさいと言われて。「小金井公園」に行く日と、「野川公園」に行く日と決めて毎日散歩してました。季節によって咲く花が違うんだなとか思ったりして。
土屋:僕も子供の時には“草滑り”に行って、高校時代はお花見をしに友達と行って。各世代が楽しめる公園ですよね。あと、江戸の・・・
茂木さん:「江戸東京たてもの園」ですね。「小金井公園」の中に出来たんですけど、ここは何回行っても楽しい。僕はヨーロッパにいたので、外国人が日本に来て建てた家がそのまま残されているんですよね、移築してね。
土屋:明治時代の洋館があってね。モダンで素敵ですよね。
茂木さん:そこでコーヒーが飲めたりカレーが食べられたり。春先とかほんとに楽しいですね。
つる子:素敵ですね。
茂木さん:「小金井公園」に、一つ、穴場があって。散歩していて見つけたんですよ。「小金井カントリー倶楽部」というゴルフ場があって「小金井公園」との間に1本だけ細い道があるんですよ。これ、散歩している人だけしか気付かないんですけど。左が「小金井カントリー倶楽部」で、右が「小金井公園」のバックヤードというか、裏側から「たてもの園」を見る感じなんですけど。木がけっこういっぱいあって、そこに細い道があって。夜は小さい電気が点っているだけで、誰もいない道を1人でずっと歩いていると、静かで虫の声だけが聞こえて。おすすめです!

土屋:「たてもの園」がうっすら見えながら。
茂木さん:ほぼ暗いんですけど。物を考えるのに本当に良いですね。
つる子:そこ見つけたいですね!
茂木さん:見つけてください。素敵ですよ。
クラシック史を「中央線」で例えると・・・
土屋:それと、収録が始まる前に「中央線」の話を少しされていたんですけど・・・
茂木さん:そうそう。先ほど話に出てきた「山下洋輔さん」が今「立川市」にお住まいなんですけど・・・
土屋:あ、そうなんですか! 良いこと聞いた!

つる子:(笑)。
茂木さん:ぜひゲストに呼んでください! 一緒に出たい! 大ファンの「山下洋輔さん」といっぱい共演していて、いろんなライブに出させてもらえて。本で対談も何回かやっているんですよ。その時、山下洋輔さんが、<中央線ってのはさ、横に駅があるじゃない? これでジャズ史に例えられるよね>って。でかい駅と小さい駅とがあるじゃない?みたいなことを言うわけですよ。
つる子:はい。
茂木さん:<東京駅に“ルイ・アームストロング”や“デューク・エリントン”などがジャズの始祖みたいな人がいるとするじゃない、四ツ谷・お茶の水に“ベニー・グッドマン”“グレン・ミラー”みたいな古典的な人がいて、新宿は誰?ってなったら“マイルス・デイビス”だって。マイルス以前と以降で世の中が全然違うんだ>と。
土屋:はいはい。
茂木さん:これ、クラシックでも言えるんですよ。東京駅が“バッハ”なんですよね。バッハは音楽の父と言われていて、バロック音楽と言われて。新宿に“ベートーヴェン”がいて。ベートーヴェン以降で音楽が人間的になっていくんですよ。で、「中央線」を進んで荻窪・「吉祥寺」・「武蔵小金井」「立川」と、音楽史が広がっていくという。

土屋:なるほど! 言われてみると! 分岐点があるわけですね。
茂木さん:「三鷹」は“ブラームス”で、「立川」は“ワーグナー”なんですよ(笑)。
つる子:これ、落語でもやりたいですね(笑)。
土屋:茂木さん、お時間です!
茂木さん:ああ(笑)。
土屋:茂木さんが打ち合わせが長くて、なかなかスタジオに現れないってことは、こういうことだったのか! お話が面白いですよ!
茂木さん:(笑)。
土屋:全然最後までいかなかったですよ。「小金井のグルメ」の話、聞きたかったですよ!
茂木さん:お願いします。
土屋:僕も「中央線」でいろんな物を例えてみたい! 本日のゲストは、指揮者の茂木大輔さんでした! ありがとうございました!
茂木さん:ありがとうございました。

(TBSラジオ『東京042~多摩もりあげ宣言~』より抜粋)