今や、日本人の“国民食”となったラーメン。どの店も麺やスープ、具材に工夫を凝らしている。

目前に迫ったGWに、食べ歩きを計画している人も多いだろう。



 だが、全国でラーメン店は2万軒を超えるといわれ、お気に入りの一杯を見つけるのは案外、難しい。



 そこで、今回はラーメン通に徹底取材。そのうえで、編集部で7大ジャンルの美味ベスト3を決定した。



王道!しょうゆ味

 ラーメンの王道はしょうゆ味! 日本人の多くが、そう思うのにはワケがあった。本誌連載でもおなじみのフードジャーナリストのはんつ遠藤氏は、こう言う。



「ラーメンのルーツが中国にあるのはご存じの通りですが、明治時代に日本に伝来したときは、動物系のだしを使った塩ラーメンだけ。文明開化直後で、肉食に慣れていなかった日本人には受け入れられませんでした。



 そこで、しょうゆで味を調えた“支那そば”が誕生。後のしょうゆラーメンの原形になったんです」



 まさに、しょうゆラーメンは日本人の工夫が生んだ国民食なのだ。

そんなしょうゆ部門の第3位は『蓬来軒』(山梨県甲府市)。先に触れた、支那そば(現在の中華そば)を現代によみがえらせた名店である。



「前時代的な名称もあって、支那そばは姿を消していましたが、蓬来軒が全国に先駆けて復刻。味も、ふくよかなしょうゆスープに、ツルリと舌触りのよい麺を合わせていて、しょうゆラーメンの歴史と、おいしさを感じられます」(前同)



 第2位の『火風鼎』(福島県白河市)は、ラーメン通から絶大な人気を誇る店だ。教えてくれたのは、『TVチャンピオン』(テレビ東京系)のラーメン王選手権で優勝経験を持つ、ラーメン評論家の山本剛志氏だ。



「福島県南部のご当地グルメ“白河ラーメン”を出す、老舗です。独学でラーメンを究めたというご主人が作る特製の手打ち麺が、とにかくうまい。鶏ガラなどを使ったうま味満点のスープとよく絡むので、すすれば“口福”が訪れます」



 そして、第1位に選ばれたのが『カドヤ食堂 総本店』(大阪府大阪市)だ。



「しょうゆラーメン好きにとっては聖地のような店で、味、知名度ともに全国トップクラス。見た目こそ、昔ながらの中華そばですが、コク深い動物系のだしと、煮干しなど、厳選した食材の風味が合わさったスープは唯一無二です」(前同)



 もう一つの魅力が、こだわりの自家製麺で、「その麺を最大限に味わうなら“つけそば”がオススメです。また、全国でも珍しい“豚足トッピング”があるので、あわせて楽しんでください」(同)




定番!味噌部門

 続いては、味噌みそ部門。しょうゆと並ぶ定番の味は、北の大地で誕生した。



「旭川のしょうゆ、函館の塩とともに“北海道三大ラーメン”の一つに数えられる札幌味噌ラーメンは、1954年に『味の三平』(札幌市)で誕生。以降、全国に味噌ラーメンが広まり、各地で独自の進化を遂げました」(前出のはんつ氏)



 第3位の『らぁ麺しろがね 安曇野店』(長野県安曇野市)も、進化形の一つだ。



「チェーン店であるしろがねの同店には、味噌王国・信州ならではの“合わせみそ”を使った特製ラーメンがあり、まろやかで甘いスープが絶品です」(同)



 第2位は『麺屋 彩未』(北海道札幌市)だ。



「札幌味噌ラーメンの超有名店『すみれ』ののれん分けで、味は当然、最高クラス。チャーシューの上におろしショウガをのせるスタイルも継承していて、濃厚スープにそれを溶かしながら食べます。滋味深く、あっさりとした後味がクセになります」(前出の山本氏)



 そして、第1位は『ど・みそ』(東京都中央区)。味噌の名産地でもない東京がトップとは意外だが、



「中華鍋で味噌と野菜を炒める札幌スタイルとは異なり、ラーメン丼に味噌ダレを入れて、そこにスープを注ぐという“組み立て式”の東京スタイルを考案した店です」(はんつ氏)



 そんな進化形の東京スタイルで作られた一杯は、



「信州味噌など5種類をブレンドした特製スープに背脂を加えることで、味噌の塩気と背脂の甘さが一体化。そこへ、喉越しのよいタピオカ麺を合わせた新感覚の味になっています。

味噌ラーメン好きなら、一度ご賞味ください」(同)




根強い人気!豚骨うまい店

 続いては、豚骨部門だ。



「福岡県久留米市の老舗『南京千両』の店主が、長崎のちゃんぽんと、当時はやっていた中華そばをヒントに作ったのが、豚骨ラーメンの発祥とされています。



 その後、チェーン店『ラーメン一風堂』『一蘭』などの登場で、全国へ広まりました」(グルメ誌記者)



 今や味噌の牙城といわれた札幌にも専門店があるほどだが、今回のランキングではやはり、九州勢が強かった。



 第3位は『らーめん 天天有』(鹿児島県姶良市)。ご当地グルメの鹿児島ラーメンとはひと味違う、個性派が食べられるという。



「鹿児島には一風変わった豚骨ラーメンを出す店がいくつかあって、その一つが天天有です。

しょうゆダレが際立つスープに、卓上の味噌ペーストを加えながら食べるという独特のスタイルで、豚骨ラーメン好きなら一食の価値があります」(山本氏)



 首位争いは豚骨の本場・福岡県の名店同士に。第2位は『拉麺 久留米 本田商店』(久留米市)だ。



「久留米市の豚骨ラーメン店では、修業先の店にスープを分けてもらって、そのスープを軸にして新たなスープを作る“呼び戻し”という製法が広く用いられていますが、本田商店もその一つ。豚骨のうま味が凝縮したスープは、一度飲めばやみつきになること間違いありません」(前同)



 そして、激戦を制したのが『駒や』(福岡市)。



「本来、豚骨ラーメンは野性味のある香りが売りですが、全国に広まるにつれて、ケモノ臭さを抑える方向へ進化しました。そんな中、駒やは、原点回帰で昔ながらの豚骨を提供。超濃厚な味で、創業からわずか数年で人気店になりました」(はんつ氏)



 ちなみに、豚骨ラーメンは、麺の硬さを選ぶ楽しさがあるが、



「人気だった“バリカタ(硬め)”に代わって、近年は、“ヤワ(柔らかめ)”がトレンドです。スープとの親和性が高く、より豚骨のおいしさを感じられるので、ぜひ、お試しを」(前同)




奥が深い塩味

 次は、塩部門。前述の通り、日本のラーメンで最も歴史が古いジャンルで、それだけに奥が深いという。



「塩ラーメンのスープは、あっさりとしてシンプルですが、その分、だしを取る食材や、味の組み合わせで個性が出ます」(同)



 第3位の『黄昏タンデム』(香川県丸亀市)は、「看板商品の“潮騒の鶏塩そば”が、貝柱や昆布などのだしに鶏のうま味を加えていて、手が込んでいます。



 余談ですが、店名のタンデムはバイク乗りの店主に由来していて、ラーメン通だけでなく、多くのバイク乗りからも愛されているんだとか」(山本氏)



 第2位は『らーめん チョンマゲ 高知本店』(高知県高知市)。高知の他、大阪にも店舗がある人気店だ。



「厳選した土佐のカツオ節と日高昆布のだしに、6種の塩をブレンドした特製のかえしを合わせたスープは、あっさりだけど深みがあって、クセになるおいしさ。



 また、ラーメンの他に、名物の“玉子焼きめし”が人気で、素朴な味わいが、スープと相性抜群でした」(はんつ氏)



 そして、第1位は『ぜんや』(埼玉県新座市)。



「99年の創業以来、ずっと行列が絶えないという伝説的な店。昼のみの営業で、スープがなくなり次第終了と、ややハードルは高いですが、行くだけの価値はあります」(山本氏)



 多くの客をトリコにしているのが、店主こだわりの黄金色の塩スープだ。



「何種類もの食材を夜通し煮込んで作っているそうで、その味はまさに芸術。塩スープのクリアなおいしさの奥に、力強いうま味が感じられます。プリッとした食感の中太麺も食べ心地がよく、食後の満足感はひとしおでした」(同)




人気上昇中の家系

 ここからは近年、人気上昇中のジャンルを紹介。まずは家系ラーメンから。



「家系は、74年に神奈川県で創業した『吉村家』が考案したもので、豚骨しょうゆスープに太麺を合わせ、トッピングにのりやホウレンソウをのせた、スタミナ満点の一品です」(はんつ氏)



 後に吉村家に影響を受けて「○○家」というラーメン店が乱立したことで、それらを総じて、家系と呼ぶようになったという。そんな家系部門の第3位は『らーめん 三浦家』(東京都葛飾区)だ。



「人気チェーン店『武蔵家』の統括責任者が手がける店。その三浦さんは、探究心がすごく、最新の家系のトレンドを常に発信しているので、店には、その味を求めるファンが行列を作っています」(同)



 第2位の、『SHOWTIMEーRamenー』(神奈川県横須賀市)でも、同じく、最新トレンドの家系が食べられるという。



「2020年に創業したばかりの新鋭で、横須賀という土地柄らしいオシャレな店づくりが好印象。ラーメンは、豚骨などの生ガラを丁寧に炊いて、つぎ足して作った白濁スープが特徴の“ネオ家系”スタイルです。



 しょうゆダレの味が濃く、まろやかな後味で、食べ応え抜群です」(同)



 そして、第1位は『ラーメン 厚木家』(神奈川県厚木市)。この店が神奈川対決を制した理由とは?



「家系発祥の『吉村家』の創設者・吉村実氏の次男が店主を務めていて、数ある店の中でも人気はトップクラス。家系の最大の魅力の濃厚スープはそのままに、舌にまとわりつかない絶妙なあんばいで、とても食べやすく、かつクセになります」(山本氏)



 また、前項で、麺は“ヤワ”がトレンドとの声が上ったが、山本氏も同意見で、



「家系も麺の硬さが選べるので、柔らかめを」と、アドバイスをくれた。




大盛りスタミナ二郎系

 続いて、二郎系ラーメン。



「1968年に東京都目黒区で創業した『ラーメン二郎 本店』(後に港区に移転)を元祖とし、首都圏を中心に支店が多数誕生。それらに影響を受けた模倣店を、総じて二郎系と呼びます」(前出のグルメ誌記者)



 その特徴はというと、「濃厚豚骨スープに極太の平打ち麺、山盛りのモヤシとキャベツ、“ブタ”と呼ばれる巨大チャーシューなどが目を引く、大盛りのスタミナ系麺です」(前同)



 字面だけでも満腹になりそうで、若い頃はともかく、今は……と思った読者諸兄も、安心してほしい。



「かつての二郎系は麺少な目に対応しなかったり、のんびり食べると怒られるという体育会系でしたが、全国に広まってメジャー化したことで、細かい注文にも応じてくれる店が増えました。なので、小食の人も楽しめます」(はんつ氏)



 そんな二郎系の第3位は『ラーメン風林火山 鶴岡本店』(山形県鶴岡市)だ。



「豚バラやゲンコツ、背脂、背ガラなどを長時間煮込んだ濃厚スープに、自家製の平打ち極太麺を合わせた、こだわりの一杯。ワシワシと麺を頬張る快感が味わえる、本格派でした」(前同)



 第2位は『ラーメン二郎仙台店』(宮城県仙台市)。



「二郎の本店で修業をした店主がいる、まさに直系。濃厚スープと、二郎の魅力である特盛り具合はそのままですが、意外と、あっさり食べられちゃうほど味のバランスが絶妙で、気持ちよく満腹になれます」(同)



 そして、第1位は『ラーメン二郎 札幌店』(北海道札幌市)だ。



「味は言うまでもなく最高ですが、札幌店の魅力は、麺量を細かく調整できるところで、初心者でも安心です。名物グルメが多い札幌市で、あえて二郎を食べるのは、ラーメン好きにとって特別な思い出になるはずです」(山本氏)




斬新な創作系

 ここまで人気ジャンルを紹介してきたが、ラーメンの進化はとどまることを知らず、定番にとらわれない、斬新な創作系ラーメンが次々と誕生しているという。



「例えば、『えびそば 緋彩』(愛知県名古屋市)は、スープだけでなく香味油にもエビを使った、エビづくしの“濃厚えびそば”を提供中です」(はんつ氏)



 最後は、これらに負けず劣らずの逸品を紹介しよう。創作部門の第3位は『ラーメン246亭』(神奈川県横浜市)。人気メニューはなんと「コーヒーラーメン」だ。



「タレやだしを組み合わせず、スープはコーヒーのみ。注文が入ると店主がコーヒーをいれるんですが、その所作を見ていると喫茶店に来たような感じです(笑)。



 ただ、味は本格派のラーメンで、意外かもしれませんが、コーヒーのほのかな酸味と甘みが麺と相性抜群ですよ」(山本氏)



 第2位は『石垣中華そばウシのカドデ』(沖縄県石垣市)。



「もとは東京のラーメン店で働いていた店主が、石垣島に魅了されて引っ越してきたそう。近年、そうした料理人が多く、島の食材を使った創作系ラーメンが誕生しています」(はんつ氏)



 そのため、ラーメン界では今、沖縄が注目だという。



「ウシのカドデも、石垣牛の牛骨スープを使った中華そばと、石垣牛の脂を生かした“あぶらそば”が大人気です」(同)



 堂々の第1位に選ばれたのは『ロックンビリーS1』(兵庫県尼崎市)だ。



「看板商品の一つが“元祖昆布水のつけ麺”。麺のほぐし水に、昆布だしのきいた水をまとわせたものを昆布水つけ麺と言って、関東圏を中心に流行中なんですが、それを考案したのが、こちらの店主です」(山本氏)



 他にも、コーラを使った冷やしラーメンなど、数々の名作を生み出していて、



「創作系ラーメンの最先端の店と言っても、過言ではありません」(同)



 本誌を参考に、自分だけの一杯を見つけてほしい!




消費額は2年連続日本一!“ラーメンの聖地” 山形はやっぱりスゴかった!

 今、ラーメン通が注目するのが山形市! 総務省「家計調査」のラーメン年間消費額では、ライバル新潟市を抑えて22年から2年連続の日本一に。そして、「昨年末、山形ラーメンのブランド化のために“山ラー”というフレーズを商標登録するなど、官民一体で山ラーの普及に取り組んでいます」(タウン誌記者)



 そんな山形市に、本誌記者は麺好きのライターの案内で潜入。ラーメン王国の実態に迫った。まずは地元民に、ラーメン好きの背景を聞くと、「山形の人は、昔から麺好き!



 かつては各家庭で、そばを作って食べる文化があったし、外食は、家庭で作るのが難しいラーメンが人気だった。その需要に応えて、そば屋が“中華そば”を出すようになって、ラーメン提供店が増えていったんだよ」(山形市在住・60代男性)



 なるほど! では、実際に店を訪れよう。まずは、“山形ラーメン四天王”に数えられる中華そばの人気店で、1970年創業の老舗『大沼食堂』の中華そば(700円)から。



「黄金色の鶏ガラしょうゆスープにナルト、チャーシュー、のり、メンマがのった、昭和世代にはたまらない一杯。山形駅から離れた住宅街のど真ん中ということもあって、店内は、家族連れや地元の学生であふれ、懐かしい雰囲気ですね」(麺好きライター)



 一方、県を代表する人気店『ケンチャンラーメン山形』の中華そば普通盛り(900円)は、



「うどんのような極太の平打ち麺と、煮干しベースのパンチのあるスープがインパクト大!



 普通盛りでも、麺が丼からあふれんばかりなので、大食い自慢にピッタリ」(前同)



 そして、今や山形名物にもなった、『栄屋本店』の冷やしラーメン(1000円)。もとは山形市の厳しい夏を乗り切るための季節料理だったが、現在は一年を通じて食べられるとのこと。



「氷が浮いたしょうゆスープにモチモチ食感の中太麺を合わせていて、あっさりだけど、食べ応え抜群。これからの暑い日に食べたら最高でしょうね」(同)



 最後は、地元スーパー『ヤマザワ』のフードコートにある『軽食ひまわり』のひまわりラーメン(※)。



「安くてボリューム満点で、まさに庶民の味方。フードコートのメニューの一つですが、老若男女問わず、みんなラーメンを食べていて、根強い人気を感じます」(同)



 ちなみに、同スーパーの食料品売場には、棚いっぱいの袋麺が。さすが、ラーメン年間消費額日本一の称号はダテじゃない。



 ぜひ本誌を参考に、山ラーの食べ歩きに挑戦してもらいたい。



※「ひまわりラーメン」は4月15日に価格改定の予定です。