10月1日に、スマホなどの通信機器に対するSIMロックが原則として禁止されます。競争促進の観点で、総務省がガイドラインを改正するためです。
ガイドラインの改正を見越して、キャリアは一部の端末をすでにSIMフリーで販売しています。代表的なのが、9月24日に発売されたiPhone 13シリーズ。同モデルには4キャリアとも、SIMロックをかけておらず、どのキャリアで買っても好きなSIMカードを挿すことが可能。iPhoneはキャリアごとの仕様の差異がないので、SIMカードを差し替えるだけで、あたかもそのキャリアで買った端末かのように利用できます。
ドコモやKDDIは、2年後の残価を設定し、それを除いた額で割賦を組める残価設定型プログラムを用意。ソフトバンクや楽天モバイルは4年割賦のうち、端末の下取りで2年分を免除する仕組みですが、回線契約者以外でも、こうした仕組みを使って端末を購入できます。

ドコモが新たに導入する「いつでもカエドキプログラム」。2年後の残価を引いた額で割賦を組み、月々の支払いを安く抑えられるのが特徴
実際、MVNOのイオンモバイルは、キャリアが販売したスマホと自社のSIMカードを店頭で組み合わせて販売しているといいます。MVNOがセット販売する端末は、メーカー自身で販売するいわゆるSIMフリースマホの一部を自社で取り扱うケースがほとんどですが、イオンモバイルであればキャリアのスマホからも選り取り見取りで選ぶことができるというわけです。イオン自体が大手キャリアの代理店でショップを運営していることから、こうした販売方法が実現したといいます。

イオンモバイルは、キャリアスマホと自社回線のセット販売を開始している
ガイドラインで定められたこともあり、今後、SIMフリーでの販売はAndroidのスマホにも広がっていく予定です。すでに、ソフトバンクが独占販売した「LEITZ PHONE 1」や、au、UQ mobileが取り扱う「Redmi Note 10 JE」はSIMフリーで販売済み。冬春商戦向けに販売される端末も、これに続くと見てよさそうです。ただし、Androidの場合、対応周波数やキャリアごとのカスタマイズには注意が必要になります。

Androidでは、ソフトバンクのLEITZ PHONE 1もSIMフリーで発売された
アップル自身の端末として販売されているiPhoneとは異なり、Androidスマホの多くは、キャリアが自身の型番を付与した専用モデルとして販売されています。ベースとなるモデルはありますが、仕様を策定しているのはあくまでもキャリア。一例を挙げると、3キャリアで販売中の「Xperia 1 III」は、ソフトバンク版の場合、LTEのBand 18、19、26に非対応です。これは、ドコモやKDDIのプラチナバンド。共通バンドもあるため通信自体はできますが、他社の回線で使うとエリアが狭くなったり、速度が遅くなってしまったりといったデメリットがあります。対応周波数の話は目に見えづらく、一部が非対応でもとりあえず使えてしまうこともあって顕在化しづらい問題。SIMフリーでの販売が一般化したときの課題と言えるでしょう。

ソフトバンクが販売しているXperia 1 IIIの対応周波数表の一部抜粋。他社の周波数に一部非対応であることが分かる
とは言え、やはり自身の使っているキャリアから端末を購入するのは一般的な慣習になっています。SIMフリー化した端末を単体で販売したからと言って、ユーザーの買い方が10月1日を境に一変してしまうことはないでしょう。一方で、イオンモバイルのように新しい制度を活用するMVNOが徐々に増えてくれば、スマホの買い方の1つとして定着する可能性もあります。キャリアにとっての端末は、回線契約の獲得を促進するための武器でしたが、その位置づけも少しずつ変わっていくことになりそうです。(文・石野純也)