イギリスでペットシッター業を営む女が2021年9月、2頭のフレンチブルドッグを車内に放置し死亡させた。当日の最高気温は22度だったにもかかわらず、犬たちは窓が閉まった状態の車内に長時間放置されていたという。
今月6日に行われた裁判で女に懲役16週間、執行猶予2年の判決が下されたことを英ニュースメディア『WalesOnline』などが伝えている。

英ウェールズで暮らすステフ・ペンドルトンさん(Steph Pendleton、62)は2021年9月、旅行中に愛犬のフレンチブルドッグ“ライラ(Lila)”と“ファブ(Phab)”を亡くした。

当時、愛犬たちをブリジェンドにあるペットシッターサービス「Pet Patrol Club」に預けていたステフさんは、事故の経緯についてこのように振り返っている。

「9月3日から5日までウェールズ西部にボート遊びに出かける予定でしたが、犬たちが水辺で快適に過ごせるかどうか心配でした。それでFacebookに『Pet Patrol Club』を見つけて連絡を取ったんです。これまで愛犬たちを誰かに預けたことがなかったので、旅行の前の週に経営者のジャニン・マロニー(Janine Maloney、49)に挨拶して、犬たちが不安にならないようしっかりと準備しました。」

「ジャニンは旅行中も犬たちの写真を送ってきてくれたので安心していました。なのに旅行から戻るとライラとファブが亡くなったと告げられたんです。その日、彼女は昼間の暑い時間帯に犬たちを車の中に置き去りにしたと…そのせいで亡くなってしまったと言ったのです。」

今年2月6日にカーディフ治安判事裁判所で行われた裁判で、RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)の副主任検査官であるジェマ・ブラック氏(Gemma Black)は当時の様子についてこのように明かした。

「2021年9月5日、旅行から戻ったステフさんはジャニンから愛犬たちが亡くなったことを告げられました。その日の気温は16度から22度でしたが、犬たちは車内に置き去りにされていたのです。検死の結果、体内に多数の出血部分があることから、2頭は熱中症と熱ストレス(体が生理的障害なしに耐えられる限度を上回る暑さ)によって死亡したことが明らかになりました。また2頭ともフレンチブルドッグで、鼻が短い犬種に起きやすい短頭種閉塞性気道症候群(BOAS)も発症していました。
どちらも肥満気味だったため熱ストレスに弱かったと思われます。獣医からの検証書類には、犬たちは水も飲めず、エアコンもなく窓が閉まったままの車内に放置されていたことが記されています。体温調整ができず、BOASにより呼吸困難に陥り苦しんだに違いありません。」

これを受け、地方判事はジャニンに懲役16週間、執行猶予2年の判決を下した。それと同時に15日間のリハビリテーション活動と6か月間のアルコールプログラムへの参加のほか、裁判費用および被害者への補償金をそれぞれ500ポンド(合計1000ポンド、約16万円)の支払い、また5年間の犬の飼育禁止を命じて次のように述べた。

「ジャニン被告は既にペットシッターを廃業し、年老いた親戚の介護をしていると聞きました。今回の事故は悲惨な過ちでしたが、彼女は当日に何もせず、犬の様子を確認することもしなかったのです。明らかに注意不足でした。」

判決が下された後、ブラック副主任検査官は「この痛ましい事故に取り組んでくれた同僚のジュリー・ファデン検査官(Julie Fadden)とジェマ・クーパー副主任検査官(Gemma Cooper)に感謝します。そしてライラとファブの飼い主に心よりお悔やみ申し上げます。この事故を通じ、動物の命が危険に晒されることのないよう再認識してほしいです。私たちからのお願いは簡単なことです。決して暑い車の中に犬を放置しないでください」と注意喚起した。

そしてステフさんは亡き愛犬たちへの思いをこのように語っている。


「RSPCAのすべてのサポートと地元の人々にも感謝します。私とパートナーのスティーブ(Steve)はライラとファブを生後8週で家族として迎え、これまでたくさんの愛情を与えてきました。車の中に閉じ込められている間もあの子たちは私が迎えに来るのを待っていたのでしょう。あの子たちがどんな目に遭ったのか…それを考えると本当に恐ろしく、胸が苦しいです。私たちはジャニンを信じていました。他の人々や動物が今後、同じ経験をすることがないように願っています。」

画像は『WalesOnline 2023年2月7日付「Two dogs died after pet sitter left them in car on hot day」(Image: RSPCA)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)
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