イギリス在住の視覚障害者のある男性は、現在4パーセントの視力しか残っていない。しかし瞳孔の動きが普通の人と同じように見えることから、過去にスポーツジムで女性を凝視していると勘違いされ、ジムから退去させられてしまったという。
米ニュースメディア『New York Post』などが伝えている。

英ウェスト・サセックス州チチェスターに暮らすトビー・アディソンさん(Toby Addison、21)が、このほどYouTubeチャンネル『Happy Hour Podcast』の動画にゲスト出演し、過去の困った出来事について語ったところ注目を集めた。

英「ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFC」のブラインド・サッカーチームに選手として所属するトビーさんは、視力がわずか4パーセントしかない。彼は11歳頃から次第に視力を失い始め、10代前半までに視力の80パーセントを失ってしまったそうだ。

そんなトビーさんが17歳の時、初めてスポーツジムを訪れた際に嫌な経験をしたという。彼がトレーニングに励んでいたところ突然、若い女性に「気持ち悪いから私を見つめるのはやめて」と言われたそうだ。


トビーさんはすぐに「僕は目が見えないんですけど…」と説明しようとしたが、女性は耳を貸そうとはしなかった。トビーさんの膝の上に折り畳んでいた視覚障害者用の白杖も、“目が見えないふりをするための小道具”だと思ったようだ。そしてその女性がジムに苦情を訴えたことで、トビーさんは最終的にジムから退去するよう言われてしまった。彼は当時の出来事についてこのように語っている。

「誰かと話している時以外は、僕はどこを見ているのか分かっていないんだ。あの時の僕はただまっすぐ顔を向けてトレーニングしていたんだけど、残念なことに目の前でエクササイズしている女性がいた。
彼女がスクワットしていたのか、それとも無防備で見られたくない格好だったのか、よく分からなかったけどね。」

「そして彼女が僕のところにやって来て話しかけてきたけど、最初は気づかなかったんだ。だって僕は何も悪いことをしていなかったからね。彼女はこう言ったんだ。『なんでずっと私を見てるの? 気持ち悪いからやめて』って…。」


その後、トビーさんがそのスポーツジムに行くことは二度となかったそうだ。またトビーさんは「最近の公共のジムでは、気味の悪い人を捕らえようとする文化がある。それはトレーニング中の他人をじっと見つめたり、無断で動画を撮影したりする人がいるからね」と付け加えた。


トビーさんは最後に「それは辛い経験で、当時は自分の自信が大きく打ち砕かれて、目が見えないことで大きな問題を引き起こすと感じた瞬間だった」と明かしている。なお現在利用しているスポーツジムでは、誰もがトビーさんのことを知っており、良好な関係を築いているという。



画像は『New York Post 2023年6月19日付「I was kicked out of a gym for ‘staring’ at a woman ― even though I’m blind」(Instagram)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)