今月3日に台湾で発生した、マグニチュード7.7の地震。多数のレスキュー隊が現場で活動する中、1匹の災害救助犬に注目が集まった。
もともと麻薬探知犬になるために訓練を行っていたが、遊びたがりでやんちゃな性格だったため、麻薬探知犬としては落第してしまった。しかし今回、災害救助犬として大活躍を見せ、キャリアチェンジに成功したそのストーリーを米ニュースメディア『CNN』などが伝えている。

過去25年間で最大級となった、台湾東部で発生した大地震。大きな被害をもたらした中で、レスキュー隊や他の仲間とともに活躍を見せた災害救助犬がいた。それはラブラドール・レトリバーの“ロジャー(Roger、8)”で、自慢の嗅覚を駆使して瓦礫に埋もれていた21歳女性の遺体発見に貢献した。

任務終了後にもかかわらず、報道陣のカメラの前で元気いっぱい遊ぶロジャーの無邪気なその姿が話題を呼び、その過去にも注目が集まった。



麻薬探知犬の訓練センターで誕生したロジャーは、成長とともに訓練を受け始めたそうで、誰もがそのまま麻薬探知犬になると思っていた。しかし楽しいことが大好きなロジャーは食べ物や人などに気を取られることが多く、訓練士の命令に従えず、集中するのも難しかった。そして最終的に、麻薬探知犬には不適格と判断された。


高雄市消防局、災害救助犬部隊のチェン・チーサン隊長(Chen Chih-san)は「ロジャーが優秀ではなかったとか、他の仲間と上手くやっていけなかったということではありません。ただ麻薬探知犬は、落ち着きがなさすぎたり、自我が強すぎるのは良くないのです」と、決してロジャーに欠点があったわけではないと話す。

「ロジャーのような性格は、災害救助犬に求められるのです」とチェン隊長は話しており、明るくやんちゃな性格のロジャーは、1歳の時に災害救助犬の部隊に入った。
そして2018年に台湾を襲ったマグニチュード6.4の地震の際に派遣されたのを皮切りに、これまで7度も救助活動に参加したベテランとなった。

高雄市によると、ロジャーは2022年に国際救助犬連盟から認定を受けたそうで、これは台湾の災害救助犬として2019年以来の快挙だった。

今回のロジャーの活躍ぶりに、高雄市のチェン・チーマイ市長は、「ロジャーはアイスクリーム型のおもちゃをもらうと、自分の見た目など気にせず、夢中になって噛んで遊んでいました。被害に遭って疲れている人々に、笑顔をもたらしてくれましたね」と振り返った。


取材中にカメラに向かって突進したりマイクに飛びつくなど、持ち前の天真爛漫さを発揮し、疲れ切っている人々に元気を振りまいたロジャーだが、年齢はもうすぐ9歳になり、引退が近づいている。引退後は一般家庭に引き取られ、穏やかに暮らすことになるそうだ。



ロジャーの活躍は世界中のメディアが取り上げており、「震災後の活躍で大勢の心を掴んだラブラドールは、人類の最良の友だよ」「ある分野で力を発揮できないからといって、他の分野で活躍できないことはないという証明になったね」「適材適所って大事だ」「みんなそれぞれ強みがあるってこと」といった、ロジャーのキャリアチェンジに前向きな声が集まった。


ちなみに2021年にはイギリスで、手に負えない“問題児”だった野良犬が、救助犬の訓練で才能が開花し、「この犬のクローンが欲しい」と言われるほどの活躍を見せていた。



画像は『CNN 「Roger, overly playful dog who failed police academy, becomes star of Taiwan quake response」(Kaohsiung Fire Department)』『TVBS新聞網 Instagram「【花蓮地震/汪汪隊Roger搜救立功!累翻萌笑餓到飛咬麥克風】」』『The Mirror 「Stray Labrador deemed “rude and stubborn” becomes expert fire service search dog」』『Sam TikTok「#dogsoftiktok #dogs #animals」』『CIA X「Lulu wasn’t interested in searching for explosives.」』『Governor of Queensland Facebook』より
(TechinsightJapan編集部 iruy)