1月30日、全豪オープン最終日の男子シングルス決勝、第2シードのダニール・メドベデフ(ロシア/同2位)に2セットダウンからの大逆転勝利で、2度目の全豪制覇を成し遂げた第6シードのラファエル・ナダル(スペイン/世界ランク5位)が記者会見で、決勝では「自分の中にあるものをすべて出し切った」と語った。
【写真】ナダルvs.メドベデフ全豪OP決勝写真館(写真19点)
決勝までの7試合で、23時間28分を戦い抜いたナダル。
35歳にして、2009年以来となる2度目の全豪制覇。史上最多となる21度目のGS優勝となっただけでなく、2度目のキャリアGS達成。偉業と言える。ただ、ナダルはタイトルだけが大事ではないんだ、と準決勝後に語っている。
「グランドスラムを達成することよりも、自分の好きなことをできるようになることのほうが幸せだ」
優勝後の記者会見でも、この思いについて「本当に信じている」と語った。
以下が記者会見での一問一答である。
司会者「グランドスラム決勝で、最高のカムバック勝利ではないでしょうか?」
ナダル「そうだね。シナリオ、勢い、意味合いなどなど。すべてを合わせると間違いなく、私のテニスキャリアで最大のカムバック勝利だったと思うよ」
Q.あとがなくなった第3セットの第6ゲーム、0-40と3本のブレークポイントを握られてから、どうキープしたのでしょうか?
ナダル「うーん、わからないな。あの瞬間は、もちろん危機的な状況だったことは確かだよ。でも、スポーツは予測不可能なものだよね? ストレートで負けるのが普通だったけど、2セット目にも大きなチャンスがあった。どうなんだろう。試合中も自分に言い聞かせていたけど、チャンスは何度もあったし、時にはちょっとアンラッキーもあった。ただ、最後まで信じていたかった。自分にチャンスを与えたかったんだ。それこそ私がやったこと。ただ戦い、ただ信じ続け、解決策を見出そうとした。もちろん、あの瞬間はラッキーもあったよ。
今夜は私にとって2012年、2014年、2017年に次ぐ、ケガ明けの大会だった。それでも、今夜は忘れられないものになったよ。私はとても幸運だと思う。同時に、ツアーに復帰し、テニスを続けるチャンスを得るためにも、よく戦ったと思う」
「本当に…ツアーに復帰できるかわからなかった」
Q.グランドスラムの歴代最多の21冠達成について、どう感じていますか?
ナダル「正直なところ、自分の視点を変えたくはないんだ。もちろん、自分のキャリアのこの瞬間に、またグランドスラムを達成できたことは素晴らしいことだよ。私にとっては、とても大きな意味があるし、もちろん、21という数字が特別なものであることもわかっているんだ。それがどのような意味を持つかは知っている。このタイトルには大きな意味がある。でも、私の立場からすると、先日言ったこと(グランドスラムを達成することよりも、自分の好きなことをできるようになることのほうが幸せ)を本当に信じている。今日が忘れられない日になることを願っている。
でも、とても光栄だよ。自分のテニスキャリアの中で、もう一つ特別なことを成し遂げられたことを幸運に思っている。自分が史上最高だとかは、正直なところあまり気にしていないんだ。
僕にとっては、今日のような夜を楽しむことが大事。それが僕にとってすべてなんだ。2度目の全豪オープン制覇は、他のどんなことよりも重要なことなんだ」
Q.<最高のカムバック>だとおっしゃいました。あなたのキャリアの中で最も偉大な成果だと思いますか?
ナダル「間違いなく、最も予想外の出来事だよ(笑) そして、誰にとっても最も驚くべきことだと思う。あなた方にとってもね。
それでも、観客の応援は本当にすごかった。試合中、ずっと感情的になっていたよ。これ以上になく疲れ切っていることもあるから、いつものように一緒にお祝いすることはできなかったけれど、心の中ではそう感じている」
Q.2セット先取されて第3セット第6ゲームでブレークに失敗したあと、メドベデフに変化は感じられましたか? 彼は観客と問題を抱えていたと語っていました。それも影響していたと思いますが、どんなことを感じましたか?
ナダル「わからなかった。ダニール(メドベデフ)は偉大なチャンピオンだ。彼は負けたことを、潔く受け入れた。彼にとっては、とてもつらい夜だったと思うので、私はただ、彼にありがとうと言うしかない。
彼はいつも僕に良くしてくれる。この試合が僕にとって、そしてこのタイトルにとって、どれだけ感情的で重要なものであるかを理解してくれていた。試合の最後も、とても親切だったよ。
観客が彼に影響を与えたかどうかはわからない。もちろん、観客を味方につけるのは良いこと。今夜は僕にとって信じられない応援だった。しかし、彼が偉大な未来を持っていると信じている。将来、観客の愛を感じることになる。彼はそれに値する」
「自分の中にあるものをすべて出し切ったよ」
Q.あなたは、よく「ビッグマッチに勝つためには苦しまなければならない」と言いますね。足の状態や休養期間もあり、今夜はいつも以上に苦しかったでしょうか?
ナダル「正直なところ、この戦いに向けて体は準備できていなかった。十分な練習をしていなかったので、準備不足だった。
でも、今日はすべてを出し切る日だったと思うよ。私は戦いを楽しんだ。感動を味わった。そして、最後にこのトロフィーを手にしたことは、今日のすべてを意味するよ。これ以上の幸せはない。ちょっとだけ回復して、ちょっとだけ楽しみたいね」
Q.おめでとうございます。足の痛みは実際、どの程度のものでしたか? 試合後半の痛みは?
ナダル「ありがとうございました。今夜はまったく痛くなかったんだ。見てのとおり、全力で走れないなんてことはなかった。明日、どうなるかはわからないけど、テニスをすることができたのは幸運だったよ。自由にテニスをすることができた。それは素晴らしい感覚だよ。
先日も説明したように、僕のケガは治すのが難しい、本当に不可能なものだから、状況は変わる可能性があるのは分かっている。でも、1ヵ月間プレーすることができた。これはとても大きなことで、予想外のことだったし、前に進むためのエネルギーをたくさん与えてくれた。
この瞬間を楽しみたいし、もちろん、これからも頑張るつもり。ツアーに戻ってこられたことを本当にうれしく思っている。これからは、自分のスケジュールに従うようにするよ」
Q.1ヵ月半前は、引退も考えていました。今晩、あなたは進み続けるエネルギーがあるとおっしゃいました。この数週間で得た自信で、今後数ヶ月、数年に渡ってトッププレーヤーと戦えますか?
ナダル「どうでしょう。物事はすぐに変わってしまうからね。この1ヵ月間、このような形で戦えたことを幸運に思う。私にとって、忘れられない素晴らしい時間だった。もちろん、この1ヵ月間、ハードな練習をし、非常に長い試合をこなしたけど、足はこのストレスに耐えることができた。もちろん、これからもこの美しいスポーツを楽しみ、戦い続けられるという自信はある。それが、プロとしての私の幸せなのか。そうだね。ただ、しばらくはテニスで戦えるチャンスがあるという自信はある」
Q.困難を乗り越えてのこの成果です。その苦難の最後にふさわしいと思いますか?
ナダル「試合について言えば、もちろんだ。最後を飾るのは、勝利だしね。でも、個人的な気持ちの面で試合に勝つというのは、また別の話。今夜、このトロフィーを手にした試合は、私のテニス人生の中で最も感動的なものの一つであり、忘れられないものになった。私にとって、とても意味のある試合になったよ」
全豪優勝するためにナダルの支えになったもの
Q.表彰式で「観客の皆さんは、私がここにいるためにどれだけ戦ってきたかはわからないと思います」と言いましたね。その過程で最も大変だったのは、どんな瞬間でしたか?
ナダル「いつも同じことを言っている。足首をくじいた時、手首を痛めた時、ツアーには予定がる。キャリアの中で、何度かこのプロセス(ケガからの復帰)を経験してきた。4ヵ月の休みがあるとわかっていた。個人的には、毎週違うことをやって改善を実感し、この期間が過ぎれば普通にうまくいくのだから、その方がずっと受け入れやすいと思っているんだ。
私の立場はまったく違う。私たちはいろいろなことを試してきた。そして、長い間、何の進歩もなくゼロのままだった。これまでのキャリアで経験してきたことを考えれば、この年齢だから、当然不安になる。ケガのあと、回復しないとなれば、当然、疑いたくなる。精神的にタフだった。回復のために、毎日、ジムやプール、練習コートで復帰するために本当に必要なことが長い間できないというのは、つらいことだった。
精神的につらいね。すべての作業、ルーティン、毎日の積み重ねが、私にとっては大きな違いになる。常に支えてくれる素晴らしいチームが隣にいることは、とても幸運なことだと思う。チームというより、時には友のような存在だった。良い時も、特に落ち込んだ時も、いつも隣にいてくれる素晴らしい家族がいる。彼らなしでは、私はここにいなかったはずだよ」
Q.グランドスラム初優勝の時のような、幸せな表情でした。どうやって、ここまでその感情を維持してきたのでしょうか? クレーコートで得たものですか?
ナダル「わからないよ。今はクレーについて考えてもいない(笑) でも、最初の優勝より感情的になっていることは、間違いない。どうなんだろう。キャリアが浅いうちは、チャンスも少ないので、こういう瞬間をより楽しむことができると思う。でも、いいプレーをしていれば、その瞬間を味わうチャンスはずっとあるものなんだ。今日も何が起こるかわからなかった。もちろん優勝を誇りに思うし、個人的な満足感は、数年前よりも増していると思う。ただ、あまり先のことを考えずに、よりその瞬間に集中できるようになっただけだと思う。
クレーコートでは何が起こるかわからない。ただ、この瞬間を、この忘れられない瞬間を楽しみ、家族と分かち合い、そして次に何が起こるかを考えたいと思う」
Q.あなたがこの偉業を成し遂げることができた最大の理由は何だと思いますか? 全豪オープンで優勝するために、何が支えになりましたか?
ナダル「ゲームへの愛、情熱、前向きな姿勢、そして努力しようという精神。それがすべてだ。そして、隣で毎日助けてくれる正しい人たち。それがすべてだと思う」
■全豪オープン2022
日程/2022年1月17日(月)~30日(日)
開催地/オーストラリア・メルボルン:メルボルンパーク
賞金総額/7,500万豪ドル(約62.7億円)
男女シングルス優勝賞金/287.5万豪ドル(約2.3億円)
サーフェス/ハード
試合球/「ダンロップオーストラリアンオープン」
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