ウクライナ・オデッサ出身&在住のヤストレムスカ
ウクライナ人で21歳のダヤナ・ヤストレムスカは、世界ランキング自己最高21位で現在は104位。かつて大坂なおみ(フリー/同77位)のコーチだったサーシャ・バインがフルタイムコーチをしていたこともある。
【動画】妹イバンナと共にウクライナから逃れる様子を投稿するヤストレムスカ
ウクライナのオデッサ出身のヤストレムスカは、5歳の時にトルコのイスタンブールにあるアカデミー「Koza WOS」にてテニスのトレーニングを開始した。16歳でITFジュニアランキング6位につけ、19歳で世界ランク21位をマークするほどの実力者だ。
一時期、大坂の元コーチとして有名なサーシャ・バインがフルタイムコーチであったこともあったが、ヤストレムスカと大坂が対戦しヤストレムスカが敗れた後に、バインが大坂を評価するようなコメントをSNSに投稿したところ、これにヤストレムスカが反発。このことが原因となったかは不明だが、その後ヤストレムスカはバインとの師弟関係を解消した。現在はフルタイムコーチを雇っていない。
2018年に香港で開催された「プルデンシャル香港テニス・オープン」(香港/WTA250)で優勝した際、地元の子どもたちと一緒にヒッティングを行うなどフレンドリーな姿を見せていたヤストレムスカ。若いうちに成功しているものの、サービス精神は旺盛なようだ。
ラッパーとして活動し収益を慈善活動へ
テニスの才能に恵まれたヤストレムスカだが、2020年にはラッパーデビューも果たしている。『Thousands of me』という曲はYouTubeでも多くの視聴者を集めた。ラッパーとして得た収益は、新型コロナウイルスのパンデミックにより困っているウクライナの人々を助けるため寄付された。
男子選手ではデニス・シャポバロフ(カナダ/同14位)がラッパーとして曲をリリースしているが、ヤストレムスカも同様に音楽に強い思いがあるようだ。ちなみにシャポバロフは2019年の「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウェルズ/ATPマスターズ1000)で勝利した後ラップを披露したことがあったが、歌詞を忘れるなど出来はイマイチだった。
キャリアにおける重要なタイミングでドーピング疑惑
テニス界においてドーピング疑惑は多くの選手の選手生命を脅かす非常に恐ろしいものだ。元世界1位のマリア・シャラポワも同様に、ドーピング疑惑により試合に出られない期間を経験している(シャラポワもヤストレムスカもその後、疑いが晴れツアーに戻っている)。
ヤストレムスカの場合、摂取された物質は汚染によるものであり、故意や過失によるものではなかったと法廷で証明された。とはいえ、出場できなかった6か月の間には全仏オープンやウィンブルドンを欠場することとなり、大きな代償となったことは否めない。テニスはドーピングに対して非常に厳しい基準を設けており、ドーピングの検査員がやってきたらいかなるタイミングであっても検査を行わなければならないなど、必要なことであるとはいえ選手にとっての負担は大きいようだ。
妹イバンナと共にウクライナから逃れたヤストレムスカ
現在ウクライナで起こっていることは、当然テニス選手たちにも大きな影響を及ぼしている。ウクライナ・オデッサ在住のヤストレムスカは、ロシアからの爆撃から逃れるため両親と離れ、同じくテニスプレーヤーである妹イバンナと共にフランスのリヨンに向かった。
3月上旬に開催された「リヨン・オープン」(WTA250)では、決勝まで進んだもののジャン・シューアイ(中国/同43位)に敗れて準優勝。ヤストレムスカはこの大会で得た賞金は全額ウクライナのために寄付する、とした。ラップの収益同様、自身が得た賞金を困っている人々のために使う精神は、若いながらも尊敬に値する。
ヤストレムスカの未来に期待
現在、非常に苦しい状況に置かれているヤストレムスカだが、テニスの才能はもとより、そのオープンで親切な性格を生かしてより素晴らしいプレーヤーになっていくことだろう。彼女の未来に期待せずにはいられない。
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