元女子世界ランク1位のクリス・エバート氏が、最近男子ツアーで頻発している選手の暴挙について、『Eurosport』のインタビューで「選手の感情やメンタルの崩壊が心配」と懸念を示した。
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今年2月の「メキシコ・オープン」では、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/世界ランク3位)が、試合中の判定をめぐって試合終了に不満が爆発。
さらに、ニック・キリオス(オーストラリア/同94位)は、3月の「BNPパリバ・オープン」で不適切な発言に加え、試合終了後にラケットを叩きつけると、それが危うくボールボーイに直撃する場面もあり、3万ドル(約370万円)の罰金に。「マイアミ・オープン」でも同様にラケットを破壊するなど3万5000ドル(約433万円)の罰金を科せられた。
ATPもこれらの行動を受け、極度のプレッシャーの中で戦っていることを理解しつつも、選手に向けて「(暴言、危険な行為は)すべての人に影響を与え、特に若いファンに対して間違ったメッセージを送ることになる。我々のスポーツが世界中のファンに対して、ポジティブな模範を示すように努力していきましょう」と忠告している。
その中、グランドスラムを18度制したエバートは、「テニスほど選手が審判を罵倒するスポーツはない。私は選手の振る舞いを心配しているし、コート上で感情が壊れ、試合途中で立ち去るのではないかと心配している。選手の感情やメンタルの崩壊が心配」と、現在男子テニスで起きていることを憂いた。
「批判するつもりはないけど、選手たちのことが心配なの。なぜ選手がコントロールを失い、ラケットを壊し、他人を危険にさらすのか。これらは対処しなければならないことで、議論されるべきこと。テニスはスポーツであり、人生ではない」と言う。
女子テニスでは、昨年の全仏オープンで元世界ランク1位の大坂なおみ(フリー)がメンタルヘルスの問題を提起し、自身もセラピストを付けた。また、4月4日に女子世界ランク1位になったイガ・シフォンテク(ポーランド)もスポーツ心理学者が強い味方になったことを明かしている。
「今、多くの女子選手がスポーツ心理学者をチームに抱え、セラピストもいる。これは彼女たちが自分たちの問題に取り組んでいるということで、素晴らしいこと」
「トッププレーヤーの生活を送るのは簡単なことではない。勝つか負けるかで、自分のアイデンティティーが変わってしまうの。全世界から勝者か敗者かで判断され、それは感情、精神的にも影響を及ぼす。私たち元選手は一般の人たちが思っている以上にそのことを理解しているつもり。だからこそ、テニスの世界では感情的なことが起きていることに対処する必要がある」とこれから根本的な原因を議論すべきだとした。
現役時代は、コート上では冷静沈着。感情を表に出さないため、“アイスドール(氷の人形)”とも呼ばれたエバートだからこそ、思うところがあったのかもしれない。
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