ツアーでは開業前の「新横浜駅」やANAの訓練施設を訪問しました。鉄道ファンにとっては気になる新線、工事中のコンコースや駅ホームの様子は本稿後半で紹介いたします

2022年8月20日(土)、ANAグループとJRTT(鉄道・運輸機構)による「コラボで見せます!鉄道と航空の舞台裏体感ツアー」が開催され、18名の参加者がANAグループの訓練施設「ANA Blue Base」や相鉄・東急直通線の「新横浜駅」(※)を訪れました。

社員の訓練施設や地下鉄駅の建設現場は、普段は旅客の目に触れることのない「舞台裏」です。鉄道と航空という異業種で、しかもANAグループとJRTTはこれが初めての連携という異色のコラボツアーは一体どのようなものだったのか? その様子を写真中心にレポートするとともに、企画が生まれたきっかけについても深掘りします。

※厳密には駅名が確定しているわけではありませんが、本稿では「新横浜駅」の呼称で統一します。

訓練の様子を間近で見られる「ANA Blue Base」

相鉄・東急「新横浜駅」やANAの訓練施設へ……鉄道と航空の舞台裏に触れる異色コラボツアーに密着【レポート】
訓練中の様子。現役社員の説明を聞きながら熱心にメモを取る参加者の姿も

ツアー参加者が最初に訪れた”舞台裏”は「ANA Blue Base」。鉄道ファンにはあまり馴染みがないかもしれません。羽田空港周辺や関東近郊の訓練・教育・研修施設を統合・集約し、通常のオペレーションにかかわる訓練を一通り行えるようにした総合訓練施設です。場所は羽田空港の西側で、京急の穴守稲荷~天空橋駅間から北へ500メートルほど進んだ先にあります。

施設そのものが「一般のお客様の見学」を意識した作りになっており、航空機の運航に関わる6職種の訓練の様子などをガラス越しに見学できるのがポイント。ツアーでは、現役の社員が各訓練の様子や業務に関わる展示内容の解説を行いました。

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夏休みということもあり、親子連れで参加された方も
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ボーイング787(左)とボーイング767(右)のエンジン。オイル交換や、内視鏡でエンジン内部にある部品の状況確認を行う訓練などを行っているそうです
相鉄・東急「新横浜駅」やANAの訓練施設へ……鉄道と航空の舞台裏に触れる異色コラボツアーに密着【レポート】
訓練の様子や設備の紹介などを行いつつ、参加者からの質問にも応じます

「ANA Blue Base」では2021年12月から一般公開を行っており、同施設のホームページで見学ツアーの予約を受け付けています。実際に訓練を受けている社員が案内するという強みもあってか、「将来は客室乗務員になりたい」といった航空業界への就職志望者が来場されることも多いようです。

普段の見学ツアーは男女比がおおよそ半々、個人よりは2~4名での参加が多く、夏休み中は子供連れのご家族も増えます。

今回は鉄道とのコラボツアーだったこともあり、「乗りもの」ならなんでもござれな方、逆に航空業界にあまりなじみのない鉄道ファンの方もいらっしゃいました。質問内容も普段とは異なる角度からのものが多く、案内側としても新鮮な体験であったようです。

相鉄・東急「新横浜駅」やANAの訓練施設へ……鉄道と航空の舞台裏に触れる異色コラボツアーに密着【レポート】
最後に訪れた部屋では、壁面に飛行機から見下ろしたような世界各地の風景を映し出しました

建設中の新横浜駅へ

相鉄・東急「新横浜駅」やANAの訓練施設へ……鉄道と航空の舞台裏に触れる異色コラボツアーに密着【レポート】
新横浜駅は相鉄・東急の共同使用駅となっており、コンコースのデザインは相鉄側・東急側で少し異なります

「ANA Blue Base」での見学を終えると、参加者らは豪華な昼食を挟み、次なる”舞台裏”相鉄・東急直通線の「新横浜駅」へ向かいました。

2023年3月開業予定の「相鉄・東急直通線」は、相鉄・JR直通線羽沢横浜国大駅から東急東横線・目黒線日吉駅を結ぶ約10キロの路線。東急側の新横浜~日吉駅間約5.8キロは東急新横浜線、相鉄側の羽沢横浜国大~新横浜駅間約4.2キロは、すでに相鉄・JR直通線として開業済みの西谷~羽沢横浜国大駅間約2.1キロとあわせて相鉄新横浜線となります。

相鉄・東急の直通により7社局14路線を結ぶ広大な鉄道ネットワークが形成され、東京~神奈川の往来に必要な時間が短縮されたり、東海道新幹線の発着するJR新横浜駅へのアクセスが良くなったりと様々な効果が期待されており、鉄道ファン的にも待ちに待った新線開業ということで注目を集めています。ツアーでは開業前の新横浜駅をJRTTの職員らが案内しました。

相鉄・東急「新横浜駅」やANAの訓練施設へ……鉄道と航空の舞台裏に触れる異色コラボツアーに密着【レポート】
JRや市営地下鉄ブルーラインへの乗り換え案内
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コンコースからホーム階へ降りていきます
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地下4階部分にあるホーム階
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ホームの端から地下鉄の線路上に降りて対面のホームへ移動。参加者はここで記念撮影もできました
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同じ場所から反対側(日吉方)
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東急新横浜線の行先案内 行先は渋谷・池袋・目黒・赤羽岩淵・西高島平
相鉄・東急「新横浜駅」やANAの訓練施設へ……鉄道と航空の舞台裏に触れる異色コラボツアーに密着【レポート】
ワンマン運転への対応として、モニターでホーム上の様子を確認できるようになっています

現在は電気設備等の工事もおおむね終わり、試験や調整を行っている段階で、秋ごろからは試運転も始まります。開業前の地下鉄駅を訪れるチャンスはなかなかないもので、ツアー参加者はJRTT職員の解説に聞き入りながら、新横浜駅の様子を物珍しそうに見学していました。

見学ルートにはコンコースやホームだけでなく、普段は立ち入ることのできない変電所、火災発生時などに役立つ排煙設備なども。「鉄道はどのように安全・安心な定時運行を確保しているのか」「異常時にはどう対応するのか」といった学びを得ます。

その他にも地下鉄の線路に降りて記念撮影を行うなど貴重な体験が山盛りで、良い思い出になったのではないでしょうか。

なぜANAグループとJRTTがコラボを?企画担当者に聞く

鉄道と航空のコラボといえば、最近では航空大手と鉄道事業者が共同で「おかえり東京」キャンペーンを展開するなど、連携する動きも見られます。

しかしJRTTはあくまで陸・海のインフラ整備を支援する独立行政法人であり、新幹線や相鉄・東急直通線のような新線の建設などは行いますが、旅客と直接やり取りをするわけではなく、言ってしまえば鉄道の裏方です。

なぜANAグループとJRTTがコラボしたのか。背景にあるのはコロナ禍でした。航空大手の客室乗務員(CA)がコロナ禍で様々な業界へ出向している、というニュースは皆さん聞き及んでいることと思いますが、実はJRTTも2021年10月よりANAグループからの出向者を受け入れています。

企画担当者の横畑汐音さんもANAからの出向組。客室乗務員としての仕事が減ってきたところで、客室乗務員以外のスキルを身に付けられる仕事でキャリアアップを考えていたところ、JRTTの出向の募集を目にしたといいます。

「鉄道の現場はダイナミック」だと語る横畑さん。出向先で様々な現場を見せてもらったことで、(鉄道の)建設現場は今しか見られないものだと強く感じ、たくさんの方に知ってもらいたいと思ったのがツアー企画を担当するきっかけとなりました。

鉄道と航空とでは取り扱っているものが大きく異なりますが、どちらも安全に運行させるために安全を第一に考えているところは同じ。時間通りに安全に運行する公共交通。

その見えない部分を知っていただきたい、今回のツアーにはそんな思いが込められています。

相鉄・東急「新横浜駅」やANAの訓練施設へ……鉄道と航空の舞台裏に触れる異色コラボツアーに密着【レポート】

記事:一橋正浩

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