未来を見据えた10年後のモビリティ(イメージ)

JR東日本は9日、モビリティ事業として初となる中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」を策定しました。7月に発表したグループ経営ビジョン「勇翔 2034」で掲げる二軸経営による成長戦略を具体化すべく、20年後(2045年)の未来のモビリティを見据え、10年後のモビリティ像と成長戦略を構築。

実現に向けた4つのアプローチを掲げています。

同戦略の推進により、JR東日本は安全レベルを高めるとともに、「勇翔 2034」で掲げた「2031年度営業収益4兆円超」のうちモビリティ事業の営業収益2兆円超(2024年度比+2,000億円超)を目指すとしています。

20年後のモビリティの姿は

JR東日本、モビリティ中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」策定 未来のモビリティを見据え10年後の姿と成長戦略を示す
2045年 未来のモビリティ(イメージ)

20年後の未来のモビリティを想像したイメージ図も示されました。「自宅から目的地までシームレスに移動」「駅は『ナカ』『ソト』の概念がなくなり、人々が交流する拠点となる」「様々な輸送モードが相互に連携するモビリティサービス」「人に優しく快適な空間の醸成」といった文言が躍ります。新幹線と思しき車両のほか、「空飛ぶクルマ」や路面電車らしき次世代モビリティも描かれています。

最初に示された「10年後のモビリティ」イメージには、AIロボットやウォークスルー改札、半個室空間を備えた新幹線などが登場しており、これらは比較的早い段階で実現するものと見られます。

【参考】
Suicaでタッチもきっぷも不要に? 上越新幹線新潟駅・長岡駅で「ウォークスルー改札」実証実験へ(※2025年4月掲載記事)
https://tetsudo-ch.com/12999543.html

戦略の柱となる4つのアプローチ

「PRIDE & INTEGRITY」では、未来(=10年後)のモビリティ像を実現するため、以下の4つのアプローチを掲げています。

(1)安全レベルの向上

「安全」を経営の最優先事項とし、デジタルツインやAIなどの最新技術を活用。これにより、環境変化に応じた「想定外を想像する」取り組みを進めます。また、ホームドアなどの整備推進や衛星を活用した踏切保安システムといった新技術の導入により、2031年度までに「鉄道運転事故30%減」「ホームでの鉄道人身事故80%減」(いずれも2023年度比)を目指します。

(2)収益力向上・社会課題解決

新幹線の増備による輸送力強化に加え、長距離夜行特急列車のような移動が楽しくなる空間や、コンサートの誘致など魅力的な目的地の創出を図ります。また、地域のバス交通との連携によるリ・デザインや、荷物輸送サービス「はこビュン」の拡大などを通じて、少子高齢化といった社会課題の解決にも貢献します。

【参考】
「受け継がれるブルートレインの記憶」JR東日本、新型夜行特急列車導入へ 2027年春(※2025年6月掲載記事)
https://tetsudo-ch.com/13003110.html

(3)技術革新・構造改革

最先端技術を積極的に導入し、新たなサービスを創出します。具体的には、スマートフォンなどで完全にチケット購入から乗車までが完結する「完全チケットレス」や、立ち止まる必要のない「ウォークスルー改札」の実現など。

さらに、衛星を活用した新たな列車制御システムの導入や、エアモビリティの新規事業化、水素・フュージョンエネルギーといった高効率な新エネルギーの追求にも挑戦します。

(4)社員の働き方改革

AIやロボットとの協働を進め、社員は定型的な業務から、人でなければ提供できないサービスや高度な技術的判断、異常時対応などに注力する体制へと移行します。これにより、社員一人ひとりがプロフェッショナルとしての「誇り(PRIDE)」と「誠実さ(INTEGRITY)」を持って成長を実感できる働き方を実現します。

JR東日本はこれら4つのアプローチによって、「環境に優しく定時性に優れ、大量輸送が可能な鉄道」と「駅から目的地までを結ぶバス・タクシーといった様々な輸送モード」を最適な形で組み合わせる「モビリティのベストミックス」を構築。多様化する移動ニーズに応えながら心豊かな生活の実現を目指します。

未来へのロードマップ

JR東日本は、未来のモビリティ実現に向けた具体的なロードマップも示しました。直近では「福島駅アプローチ線使用開始」「新幹線へのドライバレス運転」「在来線のワンマン運転拡大」などが示されます。

JR東日本、モビリティ中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」策定 未来のモビリティを見据え10年後の姿と成長戦略を示す
※JR東日本の発表にあわせ、本画像を差し替えました(2025年9月10日18時38分)

3月に発表された「E10系新幹線の営業運転開始」もロードマップに明記されています。その後に「次世代新幹線の導入」とあるのは「E10系以降に導入する新幹線全般を指すもの」(JR東日本コーポレートコミュニケーション部)とのこと。記事掲載時点では、北海道新幹線の札幌開業を見据えた車両の開発を「E10系をベースに別途検討する」ことが報じられています。

(画像:JR東日本)

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