子ども観光学講座参加者にロマンスカーミュージアムを紹介する吉久館長。VSEは1階スペースにRSE(20000形)などと並んで展示されるそうです(筆者撮影)

名前だけ聞くとちょっぴり難しそうな「子ども観光学」。

その中身は地域や社会を知る体験型学習です。子どもたちが大好きな鉄道なら興味百倍。列車や駅から生まれる観光や旅行のアイディアがあふれます。

小田急を素材に小学生が実践的な観光を学ぶ、「子ども観光学講座in海老名」が2026年1月17日、神奈川県海老名市の小田急電鉄海老名本社と海老名駅隣接のロマンスカーミュージアムで開かれ、関東一円から参加した小学3~6年生の児童約30人が自分たちで考えた小田急や沿線の魅力を発表しました。

小田急といえば、日本の私鉄を代表する観光路線。副都心の東京・新宿と国際観光地・箱根を結びます。参加した子どもたちからは、「小田原城で歴史を学んで、箱根で大自然に触れる」など、大人顔負けの鉄道旅行が発想されました。

自分たちの地域を知る、好きになる

学問としての観光……。本サイトをご覧の皆さまは、「世界最初の鉄道パッケージツアーは、時刻表に名を残すイギリス人のトーマス・クックが1841年に企画した禁酒団体旅行」(諸説ありますが)などと思い浮かべるかもしれません。

しかし、小学生が学ぶのは学問の観光ではなく「観光まちづくり」。自分たちの地域を知って魅力を発見し、日本や世界に発信して多くの人たちに訪れてもらう。自分たちも地域を好きになる。社会科の「自分たちの地域を知る学習」に近いカリキュラムです。

小学生の観光学習を研究するのが、東京都多摩市にキャンパスを置く多摩大学。最寄り駅の一つが小田急多摩線永山駅で、多摩大と小田急グループ(当初は小田急不動産、その後は小田急電鉄も)は2022年から、同じ多摩線の栗平駅でワークショップ形式の「マチカドこども大学」を継続開講します。

こども大学は多摩大や観光の専門家を講師に迎え、子どもたちにやさしく地域の魅力の見つけ方を紹介してきました。

子ども一律50円運賃でインパクト

小田急は、子どもたちにもっと電車で出かけてもらおうと考えます。具体策が2022年3月スタートの「子どもIC運賃全区間一律50円」。「子育てしやすい沿線の実現に向け、小田急は走り出します!」のスローガンは、社会に大きなインパクトを与えました。

今回はそうした考え方を広げ、小田急、日本観光振興協会(日観振)、マチカドこども大学の三者共催の観光学講座を初めて開催。観光教育の第一人者で、名桜大学(沖縄県名護市)の寺本潔特任教授(玉川大学名誉教授)を先生に迎え、小田急沿線からの観光を考えました。

大好きなロマンスカーで小学生が観光を学ぶ 小田急と日観振がロマンスカーミュージアムなどで「子ども観光学講座」【コラム】
寺本先生(前列)を囲む講座参加者。先生は小田急沿線の玉川大から、沖縄都市モノレール(ゆいレール)を除いて鉄道のない沖縄県に移って鉄道の便利さが分かったそうです(筆者撮影)

地図の観光読みと観光の花びらで小田急の魅力を読み解く

グループに分かれてのワークショップ、1時間目は「地図帳の観光読みと観光の花びら」。普段、学校で使っている社会科の地図帳で、新宿から小田原、箱根まで指でたどります。これが「観光読み」。下北沢、登戸、町田、海老名……。沿線にはいろいろなまちと、それぞれの魅力があります。

続く「観光の花びら」は観光を花にたとえます。真ん中のめしべが「観光」。周囲のおしべが「自然」、「食べもの」、「歴史・伝統」などで、さまざまな要素で観光が成り立つことが分かります。

小田急線の場合、自然は箱根や生田緑地、食はかまぼこやシラス丼、歴史・伝統は小田原城や招き猫発祥の豪徳寺など。ロマンスカーも重要な観光メニューです。

寺本先生は、「箱根への家族旅行でも、お父さんは温泉、お母さんは食事、子どもたちはロマンスカーやロープウェイと旅の目的はそれぞれ。いろいろな旅行が楽しめる。それが小田急や箱根の観光の魅力」と説きます。

ロマンスカーなりきりで箱根旅行をPR

講座2時間目は、ハネムーナー(新婚旅行)、女子大生3人組、ファミリー、シニア、インバウンドと各タイプの旅行者を想定。それぞれに応じた観光旅行のメニューを考えました。

3時間目はバーチャル観光案内所。子どもたちが案内所にやってきた観光客と、案内所スタッフに分かれ、顔はめパネルで小田急沿線の魅力を自分たちの言葉で語りかけます。

顔はめパネルは寺本先生オリジナル。

もちろん、ロマンスカーバージョンもあります。子どもたちは「ぼくはロマンスカー。楽しい箱根旅行にお連れします」と笑顔で話しました。

大好きなロマンスカーで小学生が観光を学ぶ 小田急と日観振がロマンスカーミュージアムなどで「子ども観光学講座」【コラム】
講座オリジナルの顔はめパネル。新宿の高層ビル群とGSE(70000形)、そして早川と箱根湯本の温泉街。いずれも特徴がよく表現されています(筆者撮影)

「白いロマンスカー」に歓声

観光学講座放課後はロマンスカーミュージアムを見学。鉄道が大好きな子どもたちも、ミュージアムは初めての子どもたちも、ロマンスカーは一番人気です。

吉久治朗館長(小田急エージェンシーグループ営業部ディレクター)からは、本サイトでも紹介の通り、「2026年3月末には皆さまに愛された白いロマンスカー『VSE(50000形)』が当ミュージアムにやって来ます」。子どもたちだけでなく、鉄道ファンのお父さん(お母さん)からも歓声があがりました。

大好きなロマンスカーで小学生が観光を学ぶ 小田急と日観振がロマンスカーミュージアムなどで「子ども観光学講座」【コラム】
地図帳を指で「観光読み」する参加者。普段は時刻表の鉄道ファンも、地図帳を見れば新しい発見があるかもしれません(筆者撮影)

【参考】大人気の「白いロマンスカー」、3月19日からロマンスカーミュージアムで一般展示開始
https://tetsudo-ch.com/13021910.html

「地域観光のリーダーに」

日観振からはもう一題、2026年の観光キックオフを告げる「観光立国推進協議会」と「2026年観光関係者新春交流会」(2026年1月14日、東京プリンスホテル)のニュースも。

話が後先になりましたが、日観振は行政、自治体、民間が集う日本の観光のナショナルセンターで、JRグループや私鉄の鉄道会社も主要メンバーです。

2025年は「大阪・関西万博」というビッグイベントがありましたが、2026年は目玉不在。

物価高騰や中国との国際問題も観光関係者を悩ませます。鉄道業界トップからは、「沿線と協力しながら、地域観光のリーダーとしての鉄道の存在感を高めたい」などのコメントが聞かれました。

記事:上里夏生

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