水沼貴史の欧蹴爛漫061
ドルトムント戦ではロイスとマッチアップするシーンも photo/Getty Images
巧みなスペース管理
水沼貴史です。2021-22シーズンも早いもので、開幕から3カ月以上が経ちました。
そんな中でも、今季、欧州で特に著しい成長を見せている選手がいます。今夏の移籍市場でジュビロ磐田からブンデスリーガのシュツットガルトへ、期限付き移籍で加入することになったDF伊藤洋輝です。今回はドイツで評価が急上昇中の伊藤について少々お話をしたいと思います。
当初はシュツットガルトのセカンドチームでのプレイが見込まれていたため、おそらくですが、移籍してすぐにトップチームでこのような状況になるとは、考えてもいなかったかもしれません。トレーニングを見て、監督が伊藤のポテンシャルやクオリティに可能性を感じたのでしょう。さらに、DFヴァルデマール・アントン、DFマルク・オリヴァー・ケンプフ、DFコンスタンティノス・マヴロパノスの3人が鉄板だった3バックに怪我人が出たことで、そこに伊藤がうまくはまっていった形です。今では彼らと遜色なくプレイし、リーグ戦では6試合連続出場中。3バックのセンターでプレイすることもありましたが、良い左足を持っているので、今定着しつつある3バックの左でプレイするのがベストでしょう。
スタメンで出た試合でなかなか勝つことができておらず、チーム自体も下位に沈んでいるため、本人もまだあまり納得はできていないかもしれません。
![攻守両面で高いポテンシャルを秘める伊藤洋輝 将来が楽しみで仕方がない[水沼貴史]](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FTheWorld%252FTheWorld_329310_bfb2_2.jpg,quality=70,type=jpg)
マインツ戦ではブンデスリーガ初ゴールを決めた伊藤 photo/Getty Images
伊藤の強みは「オフェンス」
これまで述べてきたように、守備の素晴らしさもそうなのですが、ただ、元々ボランチとしてプレイしていただけあって、私は伊藤の強みは「オフェンス」にあると思っています。ですので、欲を言うのであれば、短いパスでビルドアップに貢献するだけでなく、少し持ち上がって左サイドからロングフィードで相手を崩すといったシーンが増えてくるといいかなと思っています。第12節ドルトムント戦では、遠藤航に2回ぐらい合わせるシーンがありましたけどね。しっかりとした意思の疎通が図れる2人だけあって、もしかしたら遠藤は伊藤が持ったらある程度狙っているんではないでしょうか。そう思えるようなプレイでした。
シュツットガルトの前線のメンバーが固まっていないため、出し手としては少々やり辛さがあるかもしれません。足元で受けるのが好きな選手や、裏でもらうのが得意な選手など、選手の特長はそれぞれ違いますからね、しかし、逆サイドや前線へ長い早いボールを蹴ることができたり、同サイドのスルーパスも狙えたりする伊藤のキックには可能性を感じますし、他の選手に対してもこういったプレイがどんどん増えて欲しいです。
そして、26日に行われた第13節マインツ戦(2-1)では、素晴らしい状況判断からの積極的な攻撃参加で、ブンデスリーガ初ゴールをゲット。チームの勝利に貢献し、待望の白星も手にしました。この調子で今後も結果を残していって欲しいです。若さもありますし、トライ&エラーを繰り返しながら、今は色々なことをどんどんどんどん吸収している時期です。このままいけば、ウィンターブレイク明けにはさらに進化した姿が見られるのではないかなと期待しています。
日本代表の各カテゴリーでもプレイしてきていますし、この調子で成長していけば、いずれはA代表としてプレイするときも来るでしょう。センターバックやボランチ、さらに能力的には左サイドバックとしてもプレイできると思いますし、伊藤のユーティリティ性やフィジカル面の特長は貴重だと思いますね。私は伊藤の将来が楽しみで仕方がありません。
それでは、また次回お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。