ヨーロッパリーグを制したフランクフルト photo/Getty Images
巧みな補強が優勝へ繋がった
2018-19シーズンのヨーロッパリーグ・べスト4の顔ぶれを覚えているだろうか。ベスト4の対戦カードはアーセナルVSバレンシア、もう1つはフランクフルトVSチェルシーだった。
当時も、フランクフルトの勝ち上がりはちょっとしたサプライズだった。長谷部誠の存在はもちろんだが、チームを引っ張っていたのはFWルカ・ヨビッチ、セバスティアン・ハラー、アンテ・レビッチの超強力3トップである。
当時は現レアル・マドリードのヨビッチが全コンペティション合わせて27ゴール、現アヤックスのハラーが20ゴール、レビッチが10ゴールを挙げており、この3トップを抑えるのに対戦相手は手を焼いていた。
しかし、中堅クラブとはタレントを引き抜かれる運命にある。シーズン終了後の2019年夏、ヨビッチはレアル、ハラーはウェストハム、レビッチはミランへ移籍。3トップは一瞬で崩れることになり、フランクフルトのEL4強入りは2018-19シーズンのみのサプライズと受け取ったサッカーファンが多かったはずだ。
ところが、フランクフルトはそんな予想を裏切ってきた。強力3トップを失った3年後の今季にヨーロッパリーグを制することになり、改めてフランクフルトのフロントを称賛すべきだろう。
何より凄いのは、決勝のレンジャーズ戦に先発していた11人の獲得費用が僅か4500万ユーロに抑えられている事実だ(金額は『Transfermarkt』より)。
センターフォワードとしてブレイクするコロンビア代表のラファエル・サントス・ボレはフリーで獲得し、攻撃的MFイェスパー・リンドストロームは700万ユーロ、中盤のセバスティアン・ローデは400万ユーロ、11人の中で最も高額なMFジブリル・ソウでも1000万ユーロだ。
攻撃で違いを生む左のフィリップ・コスティッチは660万ユーロ、鎌田大地も160万ユーロで獲得された選手であり、フランクフルトは超低コストで決勝の11人を揃えたことになる。
2019年の夏にハラーをウェストハムへ売却した際、移籍金は5000万ユーロだった。これより低いコストで決勝の11人を揃えたことになり、フランクフルトの補強戦略があったからこそのEL制覇だ。
2018-19シーズンだけのサプライズにせず、それをも上回る成果を残した今季のフランクフルト。今夏にはDFエヴァン・ヌディカ(550万ユーロで獲得)や鎌田など主力の一部を引き抜かれるかもしれないが、すでにフロントは強さを維持すべく次のターゲットに目をつけていることだろう。補強上手なクラブとなったフランクフルトの動きは今後も見逃せない。