世界選手権で世界一に返り咲くことが目標の阿部 photo/Getty Images
成長を実感
柔道全日本選抜体重別選手権が行われ、女子52キロ級に出場した東京五輪金メダリストの阿部詩が初優勝を飾った。
2024年の夏に行われたパリ五輪では、連覇を期待されるもまさかの2回戦敗退に終わった阿部。
一本を取られた直後は、投げられたこと自体が信じられないといった呆然の表情を浮かべたが、畳を降りた瞬間に号泣。その後、立ち上がれず、コーチに支えられながら会場を去った。
阿部がその挫折から復活を決意し、本格的な練習を再開したのは11月。そして今年2月に行われたグランドスラム・バクー大会では見事に優勝を果たした。
今大会も実力が拮抗した試合が多い中で、阿部は勝利を重ね決勝進出。その決勝戦でも緊迫した展開が続き、阿部は対戦相手の大森生純に対し果敢に攻め続けるものの、決めきれずゴールデンスコアの延長戦に突入する。そして1分25秒の時点で、阿部が仕掛け、試合が決まった。
阿部は大森の奥襟を掴み、強引に大外刈りから大内刈りに移行。大森も投げられまいと踏ん張り互いの体が伸び切った状態でもつれつつも、最後は阿部が力で押し切り、なぎ倒した。
阿部はこの勝利で、パリ五輪での悔しい思いを経て成長したことを実感。最後の技を決めた瞬間については、負けて一際強くなった勝利への執念が、技を押し切らせる結果につながったことを明かした。
彼女がそう語る通り、これまで華麗に技を決めてきた阿部にはなかったような、泥臭く気迫を全面に押し出した試合運びだった。
女子日本代表の塚田真希監督も、この阿部の勝利について「覚悟を感じた。素晴らしい試合で感情を揺さぶられた」と称賛した。
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