チェルシー移籍に合意したジョアン・ペドロ photo/Getty images
ブルームとバーバーの名コンビ
ブライトンが過去3年間でチェルシーから得た資金は、なんと2億8200万ポンド(約552億円)に上る。これは、同クラブの本拠地アメックス・スタジアムを3つ建設できる規模の金額であり、選手とスタッフの売却がいかに巧妙かつ利益を伴うものであったかを物語っている。
内訳は、モイセス・カイセドの移籍金が1億1500万ポンド、マルク・ククレジャが6000万ポンド、ジョアン・ペドロが6000万ポンド、ロベルト・サンチェスが2500万ポンド、さらにグレアム・ポッター前監督とそのスタッフ5名に対する補償金が2200万ポンド。そして、現在はチェルシーのフットボールディレクターを務めるポール・ウィンスタンリー氏に関しても、非公表ながら一定の移籍補償金が支払われたとされる。
もちろんこれらの金額は全額が純利益というわけではない。例えばペドロにはワトフォードに3000万ポンド、ククレジャにはヘタフェに1500万ポンド、カイセドにはインデペンディエンテ・デル・バジェに400万ポンドが支払われているほか、エージェントへの報酬や売却に伴うボーナス、そして物価上昇によるスタジアム建設費の増加なども考慮する必要がある。
とはいえ、選手の原石を見抜いて成長させ、プレミアリーグのビッグクラブに高額で売却するという一連のプロセスにおいて、ブライトンのスカウティングと交渉術は際立っている。とりわけトニー・ブルーム会長とポール・バーバーCEOのコンビは、その卓越した交渉力から、映画史に名を刻む名ダンスデュオ、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースになぞらえられるほど。“しなやかな交渉者”として現地で高く評価されている。
派手さはなくとも緻密で着実なブライトンの経営方針は、現代サッカークラブ経営の理想形の一つとして、ますます注目を集めている。