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◆GDPはプラス成長だが…
内閣府が8月15日に発表した、今年4月~6月期の「GDP(国内総生産)」の速報値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3ヵ月と比べてプラス0.3%となりました。これが1年間続いた場合の年率に換算すると、プラス1.0%です。市場の予想を上回るプラス成長になったということです。
吉田:塚越さん、今期のGDPについて、詳しく教えてください。
塚越:GDPとは、国内で生産した物やサービスの付加価値の合計額で、これが一般的に国の経済力を示しています。この変化率が経済成長率と呼ばれて、景気を読むバロメーターにもなっています。
今回の4月~6月期は、物価変動を除いた実質の伸び率がプラス0.3%になったということで、アメリカの関税の影響が限定的だったことが大きな理由と言われています。ただし、これは自動車メーカーが「身銭を切った」からと言えます。
どういうことかと言うと、4月からアメリカで販売する自動車には25%の関税がかかったのですが、6月の時点で日本のメーカーは車の輸出価格を2割ほど下げて販売しました。つまり、価格を下げてその分(台数を)を売ったということです。価格を下げた分の負担を自分たちでかぶりました。
他の要因だと、GDPの半分以上を占める「個人消費」は、5四半期(1年3ヵ月)連続でプラスになりましたが、伸び率は0.2%程度です。全体としてはプラスにはなったものの、自動車の件も含めると素直には喜べないという感じですね。
◆自動車産業以外は関税が引き上げられるところも
吉田:トランプ関税の影響について、今回は限定的でしたが、次の四半期=7月~9月期のGDPは関税の影響が表れてくると見られていますよね。
塚越:そうですね。やはり問題は7月以降ですね。関税が始まったのは4月ですが、影響が出る企業は3月までにできることをしていたので、3ヵ月くらいはある程度耐えられたかもしれない。ただ、やっぱりここからが厳しいですよね。
実際、読売新聞が主要な民間調査機関に予測を聞いたところ、7月~9月期の実質GDPの成長率は、10社のうち8社がマイナスと予測していて、平均すると年率0.7%減少するとみています。日経新聞も民間のエコノミストに見通しを聞いたところ、だいたいみんなマイナス成長になるという予測を出していて、特に輸出と設備投資が落ち込むと予想されます。
例えば、自動車メーカーですが、これまで先行きが不透明だったので自腹で価格を下げて関税分を負担していたわけですが、この対応も限界がきています。現状では、2025年度の関税による営業利益の損失分は自動車大手7社合計で2兆6,000億円を超えるとみられています。実際、東証上場企業の4~6月期最終利益はマイナス23.4%と、5年ぶりの減益です。他にもいろいろな要因がありますが、関税コストが数字に出てきていると言えます。
そうしたなか、日米の関税が15%で「確定」したので、そろそろ関税分を価格転嫁(=値上げ)する方向に動くと見られます。そうすると、どうしても販売数は減るので、GDPにも影響するだろうということです。今後は15%の関税を前提に、その上で、どうやってアメリカで自動車を売るか、戦略を立てる段階に入ったかなと思います。また自動車産業以外でも、電機や機械産業はこれまで10%程度だった関税が15%に上がるので影響が出ますし、一部では0%だったところが15%になる分野もあります。自動車は25%から15%に下がるわけですが、他の業界ではむしろ上がるところもあるので、そこを含めて考えないといけないのが、今後の課題かなと思います。
◆求められるのは“アメリカ依存”からの脱却か
ユージ:4月~6月期のGDP。塚越さんは、どうご覧になりましたか?
塚越:大きいところでは関税だったのですが、国内の消費はあまり伸びていません。国内消費も盛り上げないといけないですが、なかなか難しいですよね。
これから考えられるのは、大きな戦略です。アメリカ以外の販路拡大を考える必要があります。例えば、中国が2年前に日本の海産物(ホタテなど)の輸入を禁止した際に、業界は中国以外の販路を拡大した結果、中国依存を脱することができました。今や中国だけでなく、アメリカもリスク要因のある国に分類されてしまっているのです。ビジネスマンとしては、東南アジアなどいろいろなところに販路を拡大して、全方位で考えていく必要があるのかなと思います。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
番組公式X: @ONEMORNING_1