(左から)戸島仁嗣さん、笹川友里
戸島仁嗣さんは京都大学法学部卒業後、現JICAの前身となる海外経済協力基金(OECF)で勤務を開始。旧国際協力銀行(JBIC)を経て、2008年からJICAで開発協力事業に従事。コートジボワールの他、タイ事務所次長、モロッコ所長、フランス所長と、計12年近くにわたり海外勤務を経験。2023年にCDOに就任し、現在は理事長特別補佐を務めます。
◆JICAの組織DXは「大きなチャレンジ」
JICAでは、世界各国のDX(デジタル・トランスフォーメーション)支援に加えて、自らの組織そのものにも変革の手を加えています。これは、トップの理事長をはじめとする経営層が組織DXを「極めて重要な取り組み」と位置づけており、戸島さん自身も特に注力している変革だといいます。
加えて「DXの性質上、定量的に成果を測りにくく、スタッフ一人ひとりが“うまくいった”と実感するまでに時間がかかる、という意味で大きなチャレンジだと思って取り組んでいますが、幸いなことに、スタッフの皆さんの努力によって少しずつ効果が見えてきています」と手応えを語ります。
なお、国際協力について世界的に見ると、フランスやドイツなどにも開発援助機関は存在しますが、「JICAのように技術協力や有償資金協力、無償資金協力、ボランティア事業、さらには、国際緊急援助まで総合的・一元的に担っている組織は、日本が唯一ではないかと思います」と戸島さん。この“支援の一元化”こそがJICAの最大の強みであり、「“途上国の方にとって最適な支援メニューは何か?”を考えて、今ある協力の形態を組み合わせ、またDXも加味することで、最大限のインパクトを生み出せるような取り組みをおこなっています」と力を込めます。
◆JICAが求める“人材”とは?
続いて、笹川が「“世界の働き方”に関して、今後どのように変わっていくと考えられますか?」と質問すると、戸島さんは「リモートやハイブリッドワークが、より一層浸透していくのではないか」と推測。
さらに、「『JICA DXLab(※)』などのデジタル・プラットフォームがどんどん作られていますので、そういうプラットフォームの活用、デジタル・エコシステムの整備によって、人々の生活が便利かつ効率的になり、結果として人々の幸福がより高まっていくのでないか」と未来を見据えます。また、ネットワークの強化によって海外の人々ともつながりやすくなり、「それにともなって、仕事の仕方もより便利になるのではないかと思います」と展望を語ります。
※「JICA DXLab」…デジタル技術を持つ外部パートナーとの共創を通じて、途上国の社会課題解決を目指す実験的な取り組み
そこで笹川は“JICAが求める人材像”を伺ったところ、戸島さんは「JICAを志望する人の多くは、もともと“途上国のために何かしたい”という強い気持ちを持って応募してくれるので、そこは心配していませんが、途上国相手だと、いろんな失敗や難しい課題に直面するケースが非常に多いので、そうした困難にもくじけず、前向きにチャレンジし続けられる姿勢が非常に大切だと思っていますし、そういう人材にぜひ来てほしいなと思います」と言及します。
そして、最後にデジタル・テクノロジーによって変わりゆく“近未来の風景”について尋ねてみると、「2つお伝えすると、まず自宅にいながら、あらゆる手続きが可能になるのではないかと思います。これによって空いた時間を、考える時間や余暇にあてることができれば、人々の幸福をより高める効果になるのではないでしょうか」と期待を寄せます。
もう1つは「多様性を包含する、共生できる社会の実現」です。そのための大事なピースとしてAIにも注目し、「“シンギュラリティ(人工知能が人間の知能を超える技術的特異点)を超えると(AIに)支配されるのではないか”という心配もありますが、それを乗り越えて、AIをうまく活用した便利な社会ができるといいなと思っています」と話していました。
次回8月9日(土)の放送は、協和キリン株式会社CDXO 亀山満さんをゲストに迎えてお届けします。医療用医薬品事業をおこなう日本を代表するライフサイエンス企業 協和キリンのDXの取り組みについて伺います。
<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/