いわゆる「老後2000万円問題」をきっかけに、公的年金の実態に不安を感じた方も多いのではないでしょうか。特に専業主婦の場合には、退職金も1人分なので、不安はますばかりかもしれません。

そこで今回の記事では、専業主婦だからこそ始めておきたい資産運用について見ていきたいと思います。



■老後資金2000万円問題をおさらい



2019年に話題になった「老後2000万円問題」について、金融庁のデータを見ながらもう一度確認していきましょう。



・平均的な無職の高齢夫婦世帯で月5万円の赤字が見込まれる
・その場合、老後の20年間(20年×12カ月)で不足額は約1300万円
・30年間では、不足額は約2000万円にのぼる



このような数値が話題になりました。



共働き家庭であれば退職金が2人分ですが、専業主婦の場合はそうはいきません。そのため退職をするまでにある程度の資金を作っておく必要があるのです。その時の選択肢としてiDeCoなどの投資も視野に入れてみてはいかがでしょうか。



iDeCoは所得税の優遇が魅力なので、専業主婦はiDeCoを利用してもメリットがないのでは?と言われることもあります。しかし運用益そのものが非課税となる点は、長期で見ると大きな利点となります。公的年金や老後資金の貯め方について、改めて考えてみましょう。



■年金受給額はいくらになるのか



年金の見込み額については、誕生月に届く「ねんきん定期便」で確認できます。支給額は加入実績により異なり、2020年度は厚労省から以下の金額が目安として提示されています。



・国民年金(満額)受給者…1人あたり月額6万5141円
・厚生年金のモデル世帯…月額22万724円



日本国内に住んでいる20歳以上60歳までの人が加入しているのが国民年金。

公務員・会社員が加入しているのが厚生年金です。ただし、すべての人がこの金額を受給できるわけではありません。



厚生年金の「モデル世帯」とは、以下のような定義となっています。



・夫…平均賃金(賞与を含む月額換算43万9000円)で40年間勤務
・その妻…専業主婦



厚生年金では、この条件を満たすケースとして算出しています。
給与所得者の平均年収については、国税庁のデータ「平成30年分民間給与実態統計調査結果について( https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/minkan/index.htm )」によると、平成30年度は平均年収441万円で、男女により差があります。



・男性平均545万円
・女性平均293万円



モデル世帯「平均賃金43万9000万円」は年収換算で約526万円ですので、男性の給与所得の平均値と近い数字になっていることが分かります。



■老後の生活費の目安は?



老後に必要となる生活費はどの程度なのでしょうか。生命保険文化センター調査「令和元年度 生活保障に関する調査(速報版)( https://www.jili.or.jp/press/pdf/press_190920_2.pdf )」によると、2019年の平均額で夫婦2人の老後の生活費は以下の通りです。



・「最低日常生活費」の平均額…22万1000円
・「ゆとりある老後の生活費」の平均額…36万1000円



厚生年金のモデル世帯であれば「最低日常生活費」とほぼ同額になる見込みです。しかし支給額には加入者ごとに差がありますし、支給額が将来改定される可能性もあります。



また年金を65歳で請求せずに、繰り下げることで割り増し受給することも可能ですが、誰もが有利になるとは言い切れません。



66歳以降70歳までの間で繰り下げた場合、増額分は「繰り下げた月数×0.7%」で計算。

増額分は最大で42.0%となりますが、各人が将来の生活費を考えてそれぞれ備えていくことが重要になるといえるでしょう。



■「iDeCo」「つみたてNISA」の組み合わせで有利に貯める



継続的に貯めながら税制優遇を利用できる「個人型確定拠出年金(iDeCo)」や「NISA」について特徴を確認していきましょう。金融庁の「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査( https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20191220.html )」によると、2018年1月からスタートした「つみたてNISA」については、2019年9月末の段階で加入数170万口座を超え急増しています。



iDeCoの節税効果と限度額

iDeCoには3つの節税効果があります。掛金を拠出するとき、運用益、受け取るときの3段階です。掛金の拠出額が所得控除となり、期間中の運用益が非課税(約20%分)となり、60歳以降に受け取る際に退職所得控除が利用できます。



iDeCoの積立て上限額は以下のようになっています。
1.自営業者→最大月額6万8000円
2.企業年金制度のない会社員→最大月額2万3000円
3.専業主婦→最大月額2万3000円
4.企業年金に加入している会社員→最大月額1万2000円
5.企業型確定拠出年金に加入している会社員→最大月額2万円
6.公務員→最大月額1万2000円



専業主婦の場合、上限額は月2万3000円です。またiDeCoは60歳になるまで引き出すことができないため、老後用の資金として確実に貯め続けることができます。



NISAの仕組み

NISAも同様に投資信託の運用益が非課税になる制度で、「一般」と「つみたて」のどちらかを選択します。資金使途は自由で、いつでも引き出し可能な制度です。



非課税枠の対象は以下です。
・「一般NISA」…年間120万円限度×5年間(最大600万円まで)
・「つみたてNISA」…毎年40万円限度×20年間(800万円まで)



「iDeCo」「つみたてNISA」専業主婦:月5万6000円を運用すると

専業主婦の場合、iDeCoとNISAの上限枠は
・iDeCo毎月2万3000円
・つみたてNISA(年間40万円限度)毎月約3万3000円
合計で月5万6000円となります。この金額で積立した場合をシミュレーシしてみましょう。



【60歳までの20年間(20年×12カ月)】
・積立元金…約1,344万円
・平均リターン5%の場合、元利合計…約2,277万円(運用益:約933万円)
       3%の場合、元利合計…約1,832万円(運用益:約488万円)
あくまで投資ですので変動もありますが、長期間の積立による運用益部分が非課税となりますので、この点だけでも大きなメリットといえるでしょう。



■さいごに



数十年にわたる老後に備えていくためにも、iDeCoなどの税制優遇を活用しながら資産を作っていくことが大切でしょう。資産形成の一助として大いに活用してみてはいかがでしょうか。



【参考】



「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」国税庁



「令和元年度 生活保障に関する調査(速報版)」生命保険文化センター



「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」金融庁



【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。





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