「お金持ちは見える化(可視化)されている」と思われがちです。その理由として、多くの人にとって「お金持ち」とはビジネスで成り上がった人であり、「そうした人たちはビジネスブランディングのためにも、積極的にメディアに露出をしている」と考えているからではないでしょうか?



しかし、お金持ちといっても様々なタイプがいるのです。

ビジネスで稼ぐだけではなく、不動産や株からの収益で稼ぐ投資家タイプなど様々あり、中にはメディアに取り上げられることを避けるお金持ちもいます。そうした人たちは「知られざるお金持ち」として一般社会に溶け込んでいるのです。



■ビジネス系は目立つ



華々しい成功というのは、メディア側も達成したビジネスマン側も、積極的に世間に知らせたくなるインセンティブが働きます。ビジネスサイドの事情としては「自らのビジネスの認知度と権威性をもたせたい」というブランディング効果を期待でき、メディアサイドは「話題のビジネスや人を取り上げることで、視聴者数を増やすことが出来る」からです。



筆者は高級フルーツビジネスや、英語のオンライン講座といった複数のビジネスを持っていますが、メディアに取り上げられるメリットはこれまでの実体験で感じています。



自社商品の高級フルーツが地上波の有名番組で取り上げられた時には、放送開始後わずか2時間で当時の2カ月分に匹敵する売り上げを記録しました。2時間で2カ月分の売り上げですので、すさまじい宣伝効果です。



また、その他でもビジネス誌などにメディア掲載されたことで、書籍の商業出版、講演依頼、テレビやラジオ出演、インタビューなどの副次的な収益につながったことがあるので、メディア掲載を経営戦略論で語る意義は大いにあると言えます。



こうした事情があり、ビジネスの経営者は積極的にメディア掲載をすることで、ブランディングや権威性を獲得するインセンティブが働くことで「目立つ」わけです。



■投資家にとって目立つことにメリットはない



その一方、投資家といった職業は事情が大きく異なります。



投資家はビジネスの経営者などと異なり、メディアに取り上げられて目立つメリットはほとんどありません。投資は最初から最後までソロプレーが原則であり、チーム戦はできません(集合知から得られる情報力、といった要素は今回省きます)。



メディアに取り上げられて知名度があがっても、投資の勝率を上げることはありません。メディア掲載で投資の活躍が知られることで、書籍出版や講演依頼など、副次的なビジネスの発生もあるかもしれません。しかし、本格的に投資で生活をしているような人は、そうしたビジネスの収益の額は、一時期投資活動を中止してまで、やりたいほどのメリットには映らないのではないでしょうか。



筆者はある経営者との会食の席で、知り合った投資家がいました。彼の知名度はゼロに等しく、名前はネットに一切出てきません。しかし、彼は資産家であり、資産は数億円を優に超え、投資先の株の配当金や不動産賃料だけでも十分豊かに生きていけるほどなのです。



このように驚くほどの資産を運用する投資家も、全員が可視化されているわけではないのです。



■目立ちたくない地主



ビジネスの経営者や投資家以上に目立ちにくい存在があります。それは地主です。代々受け継いできた土地(不動産)を持っており、派手にビジネスや積極投資をするでもなく、不動産などから長期的に収益を得続けるような「守り」の地主は目立つことはメリットどころか、デメリットにすらなり得るのです。



彼らのライフスタイルは倹約家である傾向があり、身なりも普通で、ぱっと目で普通の人と区別がつかないこともあります。しかし、彼らに話を聞くといくつもアパートやマンションを持っていて資産は数億、10億円超という具合です。



下手にお金を持っていることを知られてしまうと、泥棒に入られるリスクや嫉妬からの妬みにあう可能性が出てきます。地主と結婚をした「勝ち組の奥さん」になるはずだったのが、結婚相手が嫌われ地主の家系で近所から一緒に白い目で見られ、嫁いだ奥さんまで敬遠されてしまったという話も決して珍しくありません。



また、このように知られざるお金持ちは意外に多いのです。「有名税」などと言われますが、顔や名前が知られると、街中で声をかけられたり、隠し撮りをされたり、サインを求められるなど、面倒なことも発生するのです。



このような事情で、メディアに取り上げられることを嫌い、可視化されていないお金持ちは意外と多いのです。



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