サラリーマンのAさんは現在35歳。賃貸アパートで、2歳年下の奥様と、5歳と3歳の子どもとの4人暮らしをしています。
ただ、Aさんには、少々不安がありました。それは『住宅ローン』のこと。生活に影響がでないよう、「毎月の返済額を今の家賃と同程度で」と考えると、どうしても35年ローンになってしまうのです。そうするとローン完済時の年齢は70歳。
「今の家賃と同程度とはいえ、定年後も払い続けていけるのだろうか…?」
マイホームを購入する際に、多くの人が利用する『住宅ローン』。今回は、Aさんが少し不安に思っている、「もし住宅ローンが払えなくなったら?」ということについて、考えてみることにしましょう。
■60代で住宅ローンを支払中の人はどのぐらい?
まずは、Aさんが気になっている『定年後』について見てみましょう。60代になっても住宅ローン残高がある人はどのぐらいいるのでしょう?
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)( https://www.shiruporuto.jp/public/house/loan/yoron/futari/2019/ )」(各種分類別データより)をもとにみてみると、調査対象となった世帯主が「60歳代」の世帯695世帯について、借入金の有無は以下のようになっています。
借入金がある:34.1%
借入金がない:65.0%
無回答:0.9%
さらに借入金があると回答した世帯について、「住宅ローン残高」がいくらぐらいあるかという点については、以下のようになっています。
50万円未満:3.3%
50~100万円未満:1.4%
100~200万円未満:3.8%
200~300万円未満:5.2%
300~500万円未満:6.1%
500~700万円未満:6.1%
700~1,000万円未満:8.9%
1,000~1,500万円未満:11.3%
1,500~2,000万円未満:4.2%
2,000万円以上:9.9%
無回答(ゼロも含む):39.9%
ちなみに平均値は920万円。中央値(データを小さい順に並べたときに中央にくる数値。
全体の約3割(「借入金がある」と回答した世帯)の話とはいえ、定年後にこれだけの住宅ローンが残っている可能性もなくはないということになりますね。
【参考】
「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)( https://www.shiruporuto.jp/public/house/loan/yoron/futari/2019/ )」金融広報中央委員会
■意外に早く完済している人が多い
とはいえ、前述の調査においては、全体の約7割の人が「借入金がない」と回答しているわけですから、20年、30年といった長期のローンを組んでも、60歳代までには払い終えているという人のほうが多いことになります。では、みなさん、どのぐらいの返済期間で住宅ローンを組み、何年ぐらいで払い終えているものなのでしょうか?
たとえば、住宅金融支援機構による「2019年度 民間住宅ローンの貸出動向調査結果(住宅金融支援機構)( https://www.jhf.go.jp/files/400351738.pdf )」によれば、以下のようになっています。
・住宅ローンを借りたときの平均返済期間は26.7年
・借りてから完済までの平均期間は15.7年
この調査の回答者は金融機関のため、理由は推測となってしまいますが、最長35年のローンを組むことができるものの、短い返済期間で設定して借入をするか、積極的に繰り上げ返済をし、意識的に「定年後も払い続ける」ことを避ける人が多いということなのでしょう。
【参考】
「2019年度 民間住宅ローンの貸出動向調査結果( https://www.jhf.go.jp/files/400351738.pdf )」住宅金融支援機構
■返済が滞った場合はどうなるの?
さて、Aさんはまだまだ30代。これらのデータだけを見れば、定年前に住宅ローンを完済することは、十分可能なように思えます。また、多くの場合、住宅ローン借り入れの際には『団体信用生命保険』に加入しますので、自分に万が一のことがあっても、まず妻子が困るということはないでしょう。
しかし、リストラや病気など、一定期間働くことができなくなったことが原因で、返済不能になってしまった場合は、どうなるのでしょうか?
支払えない期間が長引くと、最終的に金融機関からは「一括返還請求」がなされることになります(多くは保証会社が代位弁済し、これに対して返済請求がきます)。ちなみにこうなってしまうまでの期間ですが、債務者の収入や金融機関により異なりますが、概ね1~2カ月滞納でイエローカード、3~4カ月滞納でレッドカードといわれています。
こうなると、自宅を売却して(任意売却)支払うこともありますが、住宅ローン残高を超える値段で売れるということは、まずありません。さらには、ここで買い手がつかなければ、金融機関(あるいは保証会社)が裁判所に手続きを取り、自宅は不動産競売にかけられてしまうことになります。
ただ、住宅ローンには、リストラや病気などやむを得ない理由があり、金融機関が認めれば、毎月の返済を軽くすることができる「リスケ」という救済措置が用意されています。返済が滞りそうだと思ったときは、できるだけすぐに金融機関に相談することをおすすめします。
■まとめ
住宅ローン破綻をする人の中には、リストラや病気の他にも、「早く完済したい」と考えるあまり、自分の状況が変化することを考えずに返済計画を設定した結果、返済不能に陥ってしまう人も多いそう。
住宅購入時は、ついつい住宅の設備などにばかり目が行って、ローンの返済にまではなかなか頭が回らないもの。「みんなが返すことができているんだから、なんとかなるだろう」と安易に考えるのではなく、自分自身のライフプランと照らし合わせ、無理のない返済ができるように、金額、返済期間ともによく考えて住宅ローンを組むようにしたいものですね。