2019年は金融庁の「老後2000万円問題」が報道で大きく取り上げられました。この話題をきっかけにマネープランの見直しを始めた、という方もいるでしょう。



また、「公的年金だけで生活していけるのか」「リタイヤ後の資金対策をそろそろ考えなくては」と焦りを感じている人もいるのではないでしょうか。



生命保険文化センターの『生活保障に関する調査 平成28年度( https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/10.html )』によると、「公的年金で老後の生活費は大部分まかなえるか」という質問に対し、「まったくそう思わない」「あまりそう思わない」と回答した人の合計は79.9%に上ります。



「定年退職なんて何十年も先の話だからピンと来ない」「今抱えている仕事や家庭のことで手一杯!」と思うのも無理はありませんが、老後が身近に感じられるようになってからでは打てる手が限られてしまいます。



「人生100年時代」はすぐそこに来ています。長い老後に備えるために、”今からできること”について考えてみましょう。



■約8割の人が「将来に不安…」



はじめに、金融広報中央委員会の『2019年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査][単身世帯調査]( https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/ )』をもとに、老後の生活に対して不安を感じている人がどのくらいいるのかをご紹介します。



二人以上世帯で、老後の生活をお金の面で「それほど心配していない」と回答した割合は、全体の18.3%でした。一方、「多少心配である」と「非常に心配である」のいずれかを選んだ世帯の割合は81.2%に上ります。



単身世帯はさらに深刻です。約半数が「非常に心配」 と回答していて、「多少心配である」と「非常に心配である」を合計した割合は85.6%を占めているのです。(表「老後の生活についての考え方」参照)



高齢者世帯の過半数が「生活苦しい」…「今からできるお金育て」そのコツとは

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老後の生活についての考え方(金融広報中央委員会の資料をもとに編集部作成)



■「元本割れはイヤ!」リスク性のある金融商品を避ける傾向が強まる



本調査では、「元本割れを起こす可能性があるが、収益性の高いと見込まれる金融商品」に対する意識調査も実施しています。



「今後1~2年の間にそうした商品を保有しようとは全く思わない」を選んだ人は二人以上世帯では78.9%、単身世帯では61.2%に上り、「そうした商品についても積極的に保有しようと思っている」はわずか二人以上世帯では2.2%、単身世帯では11.4%にとどまりました。



また、「今後1~2年の間に保有額を増やしたり、保有をはじめてみようと具体的に考えている金融商品」を聞いたところ、「預貯金」についで多かった回答が、「保有希望はない」、「株式」という結果が出ています。世帯規模でみるとこのような感じです。どの数字からも、リスクを避けた安全志向がうかがえますね。



預貯金:二人以上世帯43.7%  単身世帯52.6%
保有希望はない:二人以上世帯40.3%  単身世帯33.0%
株式:二人以上世帯8.9%  単身世帯14.9%



■高齢者世帯の過半数は「生活が苦しい」



実際に、高齢者世帯の生活は決して楽なものではないようです。(表「高齢者世帯の生活意識」参照)



高齢者世帯の過半数が「生活苦しい」…「今からできるお金育て」そのコツとは

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高齢者世帯の生活意識(厚生労働省の資料をもとに編集部作成)



厚生労働省の『平成30年 国民生活基礎調査の概況( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/index.html )』によると、65歳以上の高齢者世帯で「生活が大変苦しい」「やや苦しい」と感じている割合は55.1%に達しました。



加速する少子化や不透明な経済情勢などを考慮すると、将来の高齢者世帯の生活はさらに厳しいものになる可能性もあります。老後の生活を少しでも楽にしたいなら、お金を育てることを早いうちから意識することが大切です。



■お金を「育てる」ってどういうコト?



まず、「資産運用」と「資産形成」の違いをおさらいしておきましょう。「資産形成」とは、貯蓄や運用を通して資産を十分に形成していくことです。「資産運用」は、「資産形成」の一部にすぎません。



資産とは、現金や預貯金、不動産や株式などを意味する会計用語なので、お金を育てることは「資産形成」の1つといえます。その方法として、「貯金」と「投資による資産運用」の2通りがある、と考えるとわかりやすいでしょう。



「投資による資産運用」は、元手資金が少ないと効率よくありません。たとえば、利回り10%だった場合で元手が50万円なら、税金や手数料などを考慮しないと1年の運用益は5万円になります。ところが、元手が500万円なら同じ利回りでも50万円の利益が出るのです。



また、投資を成功させるためには普段から情報収集や銘柄分析などの作業がかかせないので、元手資金が少ない場合、「リターンが労力に見合わない」という結果になりかねません。



ですから、投資用の元手資金が少ないうちは、まずはコツコツ貯金をして、ある程度まとまったお金を作ることに注力するほうが良いでしょう。



また、投資は若いうちにはじめるほど効果的だといえます。なぜなら、投資期間がより長くなるので、失敗をリカバリーしやすく、少しずつお金を育てるという選択肢も取りやすくなります。ある程度の元手資金が用意できたとしても、定年が間近に迫ってからスタートした場合などは、長期投資のメリットを十分に生かせません。



また退職金を投資に回そうと考えている人もいるかもしれませんが、資金に余裕がある場合を除き、退職金はより安全な方法で運用することをおすすめします。



■「将来の自分」のために、若いうちから「種」をまこう



資産形成の初期段階では、キャリアアップにつながるような自己投資も有効です。自己啓発を忘れず、仕事で実績を積むことが、結果的には「資産形成」の一番の近道になるかもしれません。「生涯現役!」と考える人が増えた今、再就職や転職でもキャリアがあるほうが有利です。



”老後なんて何十年も先のこと”と言っていると、あっと言う間にやってきます。まさに「光陰矢のごとし」。
思うように貯蓄ができていない人は、今年こそ老後を見据えたマネープランを真剣に考えてみましょう。また、投資ビギナーには「NISA」や「iDeCo」もおススメです。



自分への「種まき」を始めるのに早すぎるということはありません。さあ、豊かな将来に向けて、先手先手で準備していきましょう!



【参考】
『生活保障に関する調査 平成28年度( https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/10.html )』生命保険文化センター
『2019年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査][単身世帯調査]( https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/ )』金融広報中央委員会
『平成30年 国民生活基礎調査の概況( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/index.html )』厚生労働省
『NISAとは?( https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html )』厚生労働省
iDeCo公式サイト( https://www.ideco-koushiki.jp/ )



【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。



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