■~平均年収が高い業種と貯蓄「100万円以下」世帯の実態~



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高収入を目指す人の多くが達成してみたいと思う『年収1000万円』。婚活市場においても、多くの女性が、パートナーに求める年収として挙げる金額でもあります。



しかし、国税庁が2019年9月に公表した『平成30年分民間給与実態統計調査』( https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2018/pdf/000.pdf )(2018年)によれば、給与所得者のうち、年収1000万円以上を得ているのは全体のわずか5%。芸能人やスポーツ選手などのフリーランスを除いての数値ではあるものの、それでもごく限られた人しか達成することができない域であることがうかがえます。



さて今回は、そんな『年収1000万円』と、その倍額の『年収2000万円』について、統計データなどを踏まえながら、その暮らしぶりなどについて考えてみたいと思います。



■年収1000万円超えの人はどこにいる?平均年収が高い業種とは



ではここで、先ほど紹介した『平成30年分民間給与実態統計調査』( https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2018/pdf/000.pdf )より、業種別の平均給与の一覧を見てみましょう。



「年収1000万円」と「年収2000万円」の手取り額はどれくらい違う?

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業種別の平均給与(国税庁の資料をもとに編集部作成)



(ここでいう「給与」とは、「各年における1年間の支給総額(給料・手当及び賞与の合計額をいい、給与所得控除前の収入金額である。)で、通勤手当等の非課税分は含まない。なお、役員の賞与には、企業会計上の役員賞与のほか、税法上役員の賞与と認められるものも含まれている」となっています。また「平均給与」とは、「給与支給総額を給与所得者数で除したもの」です。)



こちらを見ると、平均給与が最も高い業種は「電気・ガス・熱供給・水道業」の759.0万円で、続いて「金融業・保険業」(631.3万円)、「情報通信業」(622.4万円)となっています。



さらに、これらの業種の給与階級別構成割合を確認すると、年収800万円以上の人が占める割合は、「電気・ガス・熱供給・水道業」で40.5%、「金融業・保険業」で25.0%、「情報通信業」で20.9%となっています。



こういった業種で高く評価されれば、年収1000万円超も夢ではないのかもしれませんね。



■年収1000万円と年収2000万円、手取り額はどれくらい?



では次に、年収1000万円を実現できたとして、実際その手取りはいくらぐらいになるものなのでしょうか。



ここでは、専業主婦の妻と子ども2人(18歳、15歳)がいる男性のケースを見ていきます。また、年収を12カ月で割ったものを月給として計算してみましょう。この男性が年収1000万円の場合、1カ月の手取り額はどのくらいになるのでしょうか。



面倒な計算はおいておき、健康保険・雇用保険・厚生年金保険料といった社会保険料は、年収1000万円のケースで月15万円ほどとなることがわかっています。一方、所得税は10万円ほどと予想されますので、合計で約25万円が差し引かれることに。



年収1000万円を12で割った月給は約83万円なので、ざっくりで考えると、1カ月あたりの手取りは約60万円と計算できます。



続いて、年収2000万円のケースを計算してみましょう。社会保険料は年収1000万円以上だとほぼ上限に達しているため、先ほどと同様の15万円ほど。しかし、税金は一気に上がって35万円ほどになると予想されます。



それぞれを合わせ、1カ月あたり約50万円差し引かれることに。月収166万円からこの額を引いた手取り額は、約110万円と計算できます。



年収1000万円の60万円とくらべると、その差は月に50万円となります。



■年収1000万円。さぞかし貯蓄ができるだろうと思うけれど…?



では最後に、2020年5月に総務省統計局が公表した『家計調査報告(貯蓄・負債編)―2019年(令和元年)平均結果―(二人以上の世帯)』( https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html )より、年収別の貯蓄現在高のうち、100万円未満である世帯について、見てみましょう。



「年収1000万円」と「年収2000万円」の手取り額はどれくらい違う?

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年収別の貯蓄100万円未満世帯の割合(総務省の資料をもとに編集部作成)



全体を見れば、年収が高ければ高いほど貯蓄現在高は高い傾向にはあります。しかし、上記の表を見ると、年収が1000万円以上であるにもかかわらず、貯蓄がほとんどないという世帯も一定数存在していることがわかります。



月60万円もあれば、通常の生活レベルであれば、貯蓄がなくてもそうそう困ることはないでしょう。ただ、大きくお金が動くタイミングにおいては、貯蓄なしの家庭は要注意です。



たとえば、子どもの大学受験。多くの場合、入学が決まった段階で、数日中に初年度納付金を支払う必要があります。これは、大学によっては100万円近くの金額になることもあり、月60万円の収入があっても、貯蓄残高が100万円を切った状態だと、かなり苦しい状況になることは想像に難くありませんね。



やはり、どれだけ高い年収を得ていても「あるだけ使う」感覚は、とても危険ということなのでしょう。



■まとめ



『年収1000万円』は、とてもステイタスな響きがありますが、手取りで考えると月60万円ときいて、「あれ?」と思った方もいらっしゃるかもしれませんね。またなかには、それだけ稼いでおきながら貯蓄100万円以下の世帯がいる事実に驚いた、という人もいらっしゃるでしょう。



たとえ年収が高くても、社会保険料や税金によって手取り額は大きく減ってしまいます。さらに「収入が上がったからいい家に住もう」「子どもにたくさんお金をかけよう」と出費がかさんでいけば、高年収とはいっても裕福な生活ができるとは限らないでしょう。



将来、今回のコロナ禍のような未曽有の事態が起きて、いきなり収入ゼロということが起こらないとも限りません。年収が高くても低くても、貯蓄に充てる金額はしっかりと確保しておきたいものです。



参考

『平成30年分民間給与実態統計調査』( https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2018/pdf/000.pdf )国税庁
『家計調査報告(貯蓄・負債編)―2019年(令和元年)平均結果―(二人以上の世帯)』( https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html )総務省統計局
「みんなはいくら貯めている?20代~70代の貯蓄と負債の状況」( https://limo.media/articles/-/17788 )LIMO



【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。



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