人生100年時代に突入した今。令和2年5月29日には「年金制度改正法(令和2年法律第40号)( https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf )」が成立し、令和4年から年金受給開始年齢を60~75歳の間から選択できるようになります。



しかし、上限がそれまでの70歳より5歳引き上げられたため、さまざまな憶測や不安を呼び起こしたことは記憶に新しいところです。本当に安心して老後を迎えられるのか不安に思っている方も少なくないでしょう。



今回は、そんな年金の悩みや老後の不安を抱える夫婦から、老後を見据えてやめたことについて伺いました。



■世代別の平均貯蓄額と将来への不安は



まず、年金はいったいどのくらいもらえるのでしょうか。日本年金機構「令和2年4月分からの年金額等について( https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/20200401.html )」
によると、令和2年4月分からの年金額は、国民年金(老齢基礎年金・満額)が65,141円、厚生年金(夫婦二人分の老齢基礎年金を含む)が220,724円です。



一方で、世代別の貯蓄額はいくらあるのでしょう。金融広報中央委員会が取りまとめている「家計の金融行動関する世論調査」〔二人以上世帯調査〕各種分類別データ内の「金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯も含む)( https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2019/19bunruif001.html )」から平均貯蓄額を見ると以下のようになります。



【40代】694万円(中央値365万円)
【50代】1,194万円(中央値600万円)
【60代】1,635万円(中央値650万円)
【70代以上】1,314万円(中央値460万円)



老後2,000万円必要になるという試算が話題になったこともありますが、最も貯蓄の多い60代でもそこまで達していないことが分かります。



また、同調査によると老後について「心配である」と回答した世帯は81.2%。老後の生活費の収入源として「公的年金」をあげた世帯は79.1%でしたが、一方で「(年金では)日常生活をまかなうのも難しい」と答えた世帯は47.3%にのぼり、年金だけに頼る生活への不安感がうかがい知れる結果となっています。



■節約のために夫婦でやめたこと



そんな老後を見据え、節約を始めたという人たちは具体的にどんなことをやめたのでしょうか。



【外食】

「外食をやめました。贅沢は年に1度の結婚記念日にと決め、このお店よさそうだねと夫と話すことも楽しみの1つに」(Yさん・52歳)



新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、外食から家飲みにシフトしている人も多いのではないでしょうか。

完全にやめてしまうのではなく、楽しみをつくっておくと心の余裕にもつながりそうですね。



【現金払い】

「夫と話し合い、現金払いをやめてキャッシュレスに。電子マネーやクレジットカードはポイント還元率のいいものを使っています。使いすぎを防ぐため、夫婦で共有できる家計簿アプリで収支が分かるようにしました」(Hさん・47歳)



昨年のポイント還元事業をきっかけに浸透したキャッシュレス決済。ポイントをためる「ポイ活」もSNSでよく話題にあがっています。よく使う店舗や自分たちの生活スタイルから貯めやすいポイントを見つけると、節約の強い味方になってくれますよ。



【旅行】

「毎年行っていた海外旅行をやめました。行くなら近所に日帰りで。老後もこの家でずっと過ごしていくことになりますし、旅行に行ったつもりで寝具をいいものに変えるなど、自宅を快適にすることを最近は重視しています」(Uさん・54歳)



コロナ禍でのステイホームをきっかけに、家で過ごす時間に目を向けた人も少なくないようです。老後を長く一緒に過ごすからこそ、自宅の居心地よさも大切にしたいところですね。



■年金制度は本当に破綻しない?



年金受給年齢の幅が広がったことで、「年金を払う余裕がないのではないか」「自分がもらい始めるときには破綻しているのではないか」という不安を抱えている方もいるかもしれませんが、その心配はいりません。



公的年金には長期的な給付と負担のバランスを図る仕組みがあります。健全に運営されているかは「財政検証」で定期的にチェックされ、その内容も公開されているのです。

2019年8月27日には「2019(令和元)年財政検証結果のポイント( https://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/report/pdf/000540198.pdf )」が公表されました。



年金は5年に1度の制度改正や財政再計算を行いながら、常に水準を見直して運営されています。そのため、受給している途中で打ち切られたり、受給前に破綻してもらえなくなったりすることはありません。



また、そのときの物価や賃金上昇率に合わせて見直しがされているため、給付の水準が急激に下がるといったことも起きないのでご安心ください。



■年金制度をしっかり把握して、今から無理のない生活を



自分が年金をどのくらいもらえるかは、自宅に郵送される「ねんきん定期便」に記載されているので、必ずチェックしておきましょう。



年金がもらえなくなることはありませんが、ゆとりのある生活を送るためにはしっかりと老後資金を用意しておくことが大切です。今の自分たちの貯蓄額や生活スタイルなどに鑑みて、バランスよく節約や投資で老後資金を増やしていきましょう。



【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。




【参照】
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)( https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf )」
日本年金機構「令和2年4月分からの年金額等について( https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/20200401.html )」
金融広報中央委員会「家計の金融行動関する世論調査( https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari/2019/pdf/yoronf19.pdf )」〔二人以上世帯調査〕「各種分類別データ( https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2019/19bunruif001.html )」
厚生労働省「2019(令和元)年財政検証結果のポイント( https://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/report/pdf/000540198.pdf )」



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