無駄遣いはしていないのになぜかお金が貯まらない…そんな悩み、よくありますよね。



お金を着実に貯めるコツは「目的別に口座を分けること」です。

この記事では、その理由を行動経済学の「心の会計」という観点から説明し、著者の具体例も交えつつ紹介します。



難しいテクニックは必要ありません。人の心理を活用した工夫で、無理なく貯蓄できるしくみを作っていきましょう。



■貯蓄のカギは目的別に口座を分けること



貯蓄において大切なのは、なんとなくお金を使わないということです。給料日にお金が入ってきた後、 そのままなんとなく使っていれば貯蓄はできなくて当然です。



まずは「使う」口座と「貯める」口座を別に分けることから始めましょう。使う口座は、固定費の引き落としや生活費に使うための口座です。貯める口座は、文字通り貯蓄のための口座で、一度お金を入れたら基本的にはその後手をつけてはいけません。



ここを一緒にしてしまうとお金の出入りが複雑になるため、管理が難しくなるのです。



毎月の給料が入ったら、まずは使う・貯める口座に振り分けておきます。こうやって貯めるお金を先によけておくことを「先取り貯蓄」といい、貯蓄の鉄則でもあります。



さらにおすすめなのが、貯める口座をさらに目的別に分けることです。

例えば以下のような貯蓄目的が考えられるでしょう。



  • 旅行費
  • 引っ越し費
  • 結婚準備費
  • 妊娠・出産費
  • 車の購入費
  • 子どもの教育費
  • 住宅購入の頭金
  • 老後資金

このように、お金を使う用途に合わせて銀行口座も分けてしまうのです。必要な金額や貯める期間は人それぞれで、正解はありません。自分が貯めるべきお金はどんなものか、ぜひ一度じっくり考えてみてください。



少し面倒に思うかもしれませんが、しくみを作るのは最初だけ。一度流れができれば、毎月の給料を振り分けるだけの単純作業ですし、それほど難しくないはずです。



では、目的別に口座を分けるとどうしてお金が貯まるのでしょうか?



■目的別口座でお金が貯まる理由



人はお金に“色”を付けています。つまり同じ金額でも、使う目的やどうお金を手に入れたかによって、お金の捉え方や使い方が変わるというのです。



これを行動経済学の世界では「心の会計(メンタルアカウンティング)」といいます。この心理現象は、アメリカの経済学者リチャード・セイラー氏が提唱したものです。



例えば、今年支給された特別定額給付金10万円、あなたはどのように使いましたか?



もちろんこのコロナ禍ですから、生活費にあてた方は多いと思います。しかし思わぬ臨時収入ということで、いつもよりも少し贅沢をするなど、財布のヒモがゆるんだ人も少なくないでしょう。



10万円を稼ぐことも貯めることも、決して簡単ではありません。10万円の客観的な価値は常に変わらないはずです。しかし私たちは、どうやってお金が手に入ったかによって態度を変えることがあるのです。



またお子さんのいる家庭では、児童手当を将来の教育資金として貯めていることも多いでしょう。子どものためのお金という目的があると、手をつけたくないという気持ちが働きます。生活費のための1万円と、子ども用に貯めた1万円であれば、使う心理的ハードルはずいぶん違うのではないでしょうか。



このように同じ金額のお金でも、意味合いによって扱い方が変わるものです。だからこそ、貯蓄が上手な人はこの心理を逆手にとって、最初からお金に「ラベル」を付ける工夫をしています。つまり、目的別口座にお金を振り分けることで着実に貯めているのです。



目的以外の用途でお金を使うことには抵抗を感じやすいため、自然と浪費を防ぐことができます。「心の会計」を知ってうまく活用すれば、貯蓄の頼もしい味方になってくれることでしょう。



■具体的に口座をどう分ければいい?



では、具体的にどのように実践すればいいのでしょうか。

ここでは一つの具体例として、筆者のケースを紹介します。



我が家では現在、以下5つの口座に分けて貯蓄をしています。



  • 生活防衛資金(毎月の生活費×半年分)
  • 毎年必要資金(固定資産税+帰省費)
  • 住宅修繕資金(戸建てのため積立)
  • 教育資金(子ども1人、大学進学費用として)
  • 老後資金(夫婦2人分)
  • お金の流れとしては、毎月の夫婦の収入を合算し、その1割~2割にあたる金額を計算します。これが「貯める」分の金額です。さらにその金額を5つの目的別口座に振り分けて、その月の貯蓄は完了です。(厳密に言えば、うち一定額は「投資」に回しています。)



    どれも必ず貯めなくてはならない資金なので、いったん口座に入れた後は引き出しません。5つの口座に分けるためそれぞれの金額は少なくなりますが、その分「手をつけたらあっという間に減ってしまう」という抑止力にもなっています。



    このように、先取り貯蓄+目的別口座でお金の流れを整えれば、格段にお金が貯まりやすくなるでしょう。毎月の生活費は、先取り貯蓄から残った分=使う口座のお金の範囲内でやりくりすればOKです。



    目的別口座を用意するには、複数の銀行を利用してもいいですし、一つの銀行で目的別に口座を分けられるサービスもあります。銀行の数が多すぎても管理しにくいため、あまり細かく分けすぎず、目的別口座が利用できる銀行も検討してみてください。



    ■さいごに



    なかなかお金が貯まらないのは、貯めるしくみが整っていないせいかもしれません。今回紹介した「心の会計」を活用し、目的別に口座を分けることを試してみてください。心理的なハードルを自ら設けることで、いつの間にかお金が減ってしまう状態から抜け出せるはずです。



    貯蓄を成功させるには、その目的を明確にしておくことが大切です。「将来のためになんとなく」「とりあえず貯めたほうがよさそう」といったぼんやりした目的では、効果はあまり期待できません。



    何のために貯めるのか、絶対に必要なお金は何なのかを確認し、入ってきたお金には「ラベル」を付けることです。そうすれば自然と浪費を防ぐことができ、無理なく着実にお金が貯まっていくでしょう。



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