政府の新たな経済政策として、保育士や介護職員の給料を月額3%程度にあたるおよそ9000円引き上げ、看護師や幼稚園教諭の賃上げも実施する方針を固めたと報じられました。



以前から賃金の低さが指摘されており、処遇改善の取組みが行われている保育士や介護職員など。

これらの職業は他に比べて、女性雇用者の割合が多い傾向にあります。



今回は産業別の女性雇用者の割合を眺めながら、賃上げの対象となった「保育士・介護職員・看護師」の給与や正規・非正規の人数についても確認しましょう。



■「医療・福祉」分野の女性雇用者の割合は?



まずは2021年11⽉8⽇に公表された財務省の「社会保障」から、産業別に女性雇用者の割合を確認しましょう。産業別では保育士や介護職員、看護師は「医療・福祉」、幼稚園教諭は「教育、学習支援業」になります。



■産業別に見た女性雇用者の割合(2020年度)



全産業:45.3%



  • 医療・福祉:76.9%
  • 宿泊業、飲食サービス業:63.4%
  • 生活関連サービス業、娯楽業:59.6%
  • 教育、学習支援業:56.8%
  • 金融業、保険業:55.5%
  • 卸売業、小売業:52.4%
  • サービス業(他に分類されないもの):40.6%
  • 不動産業、物品賃貸業:40.0%
  • 学術研究、専門・技術サービス業:37.2%
  • 製造業:29.4%
  • 情報通信業:28.7%
  • 運輸業、郵便業:22.0%
  • 建設業:18.4%

※「農業、林業」「複合型サービス業」「電気・ガス・熱供給・⽔道業」「公務」の業種は割愛。



全産業で見れば女性は45.3%と、半分より少ない結果に。



ただ保育士や介護職員、看護師の「医療・福祉」の女性の雇用者割合は76.9%と、最も多い結果となりました。以前から賃金が低いと言われている保育士や介護職員ですが、その多くを女性が占めています。



■「医療・福祉」分野の給与段階別・給与所得者の構成比は?



女性は男性に比べて、給与が少ない傾向にあります。国税庁が2021年9月29日に公表した「令和2年分(2020年)分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者数5245万人の平均給与は433万円。



男女別の平均給与でみると、男性532万円、女性293万円。男性と女性では平均給与に293万円もの差があります。



先程の財務省の資料によると、「保育士・介護職員・看護師」のボーナスも含めた月収換算の賃金は以下の通り。



■職種別平均賃⾦(役職者除く)(⽉収換算)



全産業:35.2万円



  • 全産業(女性):31.8万円
  • 保育士(女性):30.2万円
  • 介護分野の職員:29.3万円
  • 看護師:39.4万円

看護師は他と比べて高いですが、同調査による医師の100.8万円に比べると約4割にとどまります。



実感としては、これよりも少ないと感じるという声もあがっています。国税庁の調査より、さらにくわしく「医療・福祉」分野の給与段階別の構成割合を見てみましょう。



■【医療・福祉】給与階級別の構成割合(平均給与)



  • 100万円以下:6.2%
  • 100万円超 200万円以下:14.9 %
  • 200万円超 300万円以下:18.1%
  • 300万円超 400万円以下:23.9%
  • 400万円超 500万円以下:17.5%
  • 500万円超 600万円以下:9.1%
  • 600万円超 700万円以下:3.7%
  • 700万円超 800万円以下:2.1%
  • 800万円超:4.5%

最も多いのは「300万円超 400万円以下」で23.9%。次いで「200万円超 300万円以下」「400万円超 500万円以下」という結果になりました。



ただ、200万円以下をあわせると約2割を占めます。その理由の一つとして、非正規職員・従業員が多いという影響も考えられるでしょう。



■「保育士・介護職員・看護師」雇用形態別の雇用者数は?



財務省の調査をもとに「保育士・介護職員・看護師」の正規と非正規の職員・従業員の人数を比べます。



■【男女別】雇⽤形態別の雇⽤者数



男性:正規の職員・従業員/正規の職員・従業員以外



  • 保育士:1万3660人/1880人
  • 介護分野職員:28万1200人/6万320人 
  • 看護師(准看護師含む):8万2980人/2850人

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女性:正規の職員・従業員/正規の職員・従業員以外



  • 保育士:29万6330人/22万4890人
  • 介護分野職員:59万340人/60万1920人
  • 看護師(准看護師含む):90万5740人/29万4670人

男女で人数を比べると、圧倒的に女性が多いのが分かります。男性で最も多いのが介護分野の職員ですね。



女性で看護師は非正規の方が他に比べると比較的少ないですが、介護分野職員では正規よりも非正規の方が多い結果となっています。



このような雇用形態の違いも賃金の低さに関係しているでしょう。



■適正な賃金水準となるよう、今後も動向を見守ろう



保育士や介護職員などの職業では女性が多く、また非正規雇用の方が多いことも分かりました。こういった面が賃金の低さにもつながっているのでしょう。



保育士や介護職員、看護師の方には、ほとんどの人がお世話になるもの。今回およそ9000円の賃上げとなりましたが、適正な賃金水準となることを期待したいです。



■参考資料



  • 財務省「社会保障」( https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20211108/01.pdf )
  • 国税庁「令和2年分(2020年)分民間給与実態統計調査」( https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/002.pdf )
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