働き方の多様化に伴い、起業やフリーランスなどの独立を後押しする特例が新設されるかもしれません。
厚生労働省は、起業失敗時に受け取れる失業手当の受給期間を、従来の原則1年間から最大4年間とする雇用保険法の改正案を国会に提出する予定です。
これから起業を検討している方にとっては嬉しいニュースですね。
そこで今回は、制度改正を前に把握しておきたいポイントをお伝えします。起業を考えている方はぜひ参考にして下さい。
■事業に失敗・廃業した場合の受給期間が延長
現在の雇用保険法では、失業手当の受給期間は原則1年間です。
しかし廃業後に求職活動を開始すると、受給期間を超過して受給できなくなる場合が多く、制度の改善が求められてきました。
現行で認められている受給期間の延長は、病気・妊娠・出産・介護などで求職活動ができない場合と定められており、ここに廃業した場合も含まれる予定です。
【図表】受給期間を延長するには

【出典】厚生労働省「雇用保険制度 労働者の皆様へ(雇用保険給付について) 離職されたみなさまへ」
なお、受給日数や失業手当の金額(失業前賃金の5割~8割)が変更される予定は今のところありません。
■雇用保険制度の内容をおさらい
雇用保険とは、失業し次の仕事に就くまでに必要な給付を受けられる制度で、失業保険とも呼ばれます。
失業手当も正式には基本手当と呼ばれています。雇用保険と聞くと失業手当を思い浮かべる方も多いでしょう。
実際に雇用保険で支給される手当には、公共職業訓練を受講した際に受け取れる「技能習得手当」や、前職より給料が下がった時の「就業促進定着手当」、季節労働者が対象の「特例一時金」など多岐に渡ります。
失業や育児などで働けなくなった時は、雇用保険の種類を調べておくと再就職した時にも利用できて便利です。
ただし、受給資格を満たしても手当を受け取れないケースもあります。詳しくは次の項目で解説します。
■失業手当を受給できないケースとは
厚生労働省ホームページの「雇用保険制度 労働者の皆様へ(雇用保険給付について) 離職されたみなさまへ」によると、以下に定める人は失業手当の受給対象外とされています。
再就職に向けて活動する方が対象なので、就職・起業をした方や、家事や勉強に専念している方は失業手当を受け取れません。
特に起業を考えている場合、4と7には注意が必要です。
■創業準備で失業手当や再就職手当を受給できる場合も
ハローワークの各種手続きを伴う求職活動を行いつつ、創業準備に時間がかかる場合は、失業手当や再就職手当の受給対象になる可能性があります。
離職票をハローワークに提出し、自己都合退職の場合は約4ヶ月後、会社都合退職の場合は約1ヶ月後に失業手当が受け取れます。
失業手当の受給日数は、自己都合退職では90日~150日、会社都合退職では90日~330日です。離職時の年齢と雇用保険の被保険者期間によって期間は変化します。
この失業手当の受給日数分だけ創業準備がかかる場合は、失業手当が全額受給可能となります。
しかし実際は、失業手当の受給中に起業するケースが多く見られます。その場合は、再就職手当を受け取れる可能性があります。
再就職手当とは、離職票提出後に自己都合退職では約1ヶ月半以降に、会社都合退職では約7日以降に創業した場合支給される手当です。
創業予定日の前日時点で未受給の日数が3分の1以上残っていれば、再就職手当受給の要件を満たします。未受給日数の60%~70%の金額を一時金として受け取れます。
創業準備の期間は収入が途絶えるので、これらの手当が受け取れれば心強いですね。
■創業のタイミングは慎重に判断を
失業手当を創業前に受け取り切るか、最終章手当として受け取るか、はたまた廃業に備えて早めに起業するか。
手当を受け取るタイミングは慎重に見極める必要があります。
万が一受給要件から外れてしまうと、非常にもったいないですよね。
将来起業を考えている場合は、各種手当の受取方法も一緒に検討しておきましょう。
■参考資料
- 厚生労働省「雇用保険制度 労働者の皆様へ(雇用保険給付について) 離職されたみなさまへ」( https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000685428.pdf )
- 厚生労働省「雇用保険制度 雇用保険制度の概要」( https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_summary.html )