昨シーズン、二刀流プレーヤーとして大活躍を見せた大谷翔平選手は、成績のみならず、その人柄にも高い評価が集まりました。



大谷選手の行動の原点のひとつともいえるのが、花巻東高校の野球部時代に使用していた「目標達成シート」です。



大谷選手のモチベーションの礎ともなった、この「目標達成シート」。今回は、その内容を詳しく解説していきます。



仕事や勉強など、私たちの日常生活にも活用できる場面が多いツールでしょう。



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■大谷翔平が使った「目標達成シート」とは



大谷翔平が使った「目標達成シート」は、碁盤の目状にマス目(縦9マス・横9マス)が書かれたツールです。



もう少し詳しくいうと、「縦3マス・横3マス」のかたまりを、「縦に3つ・横に3つ」並べたもの。



まず、81マスの中央に、最終的なゴールや目標を掲げます。そして、周囲のマスには、目標に到達するまでに必要な行動や解決策を記載し、「見える化」していきます。



この『目標達成シート』の原型は、1979年クローバ経営研究所の松村寧雄(やすお)氏が開発した「マンダラシート」。アスリートのみならず、ビジネスマンや経営者にも活用されてきました。



大谷選手の母校、花巻東高校で野球部を率いる佐々木洋監督は、自らの経験からこの目標達成シートを採用。野球部の1年生全員に、このシートの作成を課しているとのこと。



■大谷選手・高校時代の「目標達成シート」



さて、大谷翔平選手が高校1年生のときに書いた「目標達成シート」は、その意識の高さから各メディアで取り上げられて話題となりました。



大谷翔平選手・高校1年生時代の「目標達成シート」



大谷翔平選手も使った「目標達成シート」その活用メリット、仕事・勉強・暮らしにも

参照:スポニチアネックス「花巻東時代に大谷が立てた目標シート」を参考に、LIMO編集部作成



次では、この内容を「野球」「人間性」「運」の3つのポイントに絞ってみていきます。



■大谷選手の目標達成シートにみる、「野球・運・人間性」への意識



では、大谷選手が実際に書いていた目標達成シートを記載された項目を、「野球への意識」「運」「人間性」に分けて、その内容をみていきます。



■野球への意識



大谷選手は高校時代、「プロ野球8チームからドラフト1位」で指名されることを大きな目標として掲げていました。



高校時代はピッチャーとしての能力を高く評価されていたため、技術的な部分や身体づくりに関してはピッチャー寄りの内容が多く記されていますね。



プロ野球選手になるためには、ボールのキレ・スピード・コントロールのレベルアップが必要だと認識し、課題解決に向けてフォームの修正やトレーニングで意識すべきポイントを挙げていました。



また、身体づくりに関しては瞬発力・柔軟性・耐久性を兼ね備えるため、食事やトレーニングでパワーアップを図る内容が書かれています。



高校生でFSQ(フロントスクワット)90kg、RSQ(リア=バックスクワット)130kgと、具体的な数値を掲げられる選手はそう多くはないでしょう。



大谷選手が、高校時代から常に高い意識を持ってトレーニングに励んでいた姿勢がうかがえます。



■「運」への着眼点



大谷選手は、「運」を目標への手段として意識していることが分かります。



この「目標達成シート」からは、大谷選手は自らの行動を積み重ねた末に、「運」を手繰り寄せようとしていることもうかがえます。



「あいさつ」「ゴミ拾い」「審判さんへの態度」など、成績の上下に関わらずシーズンを通して大谷選手の振舞いは変わりませんでした。ここが、周囲を明るくさせる行動に繋がる、といえるでしょう。



プロ野球選手を夢見る子どもたちにプレーと人間性の両面で魅力を伝えられる、そんな存在感のルーツはここにあるのかもしれません。



■かの野村克也氏も評価した、大谷選手の「人間性」



■「人間性」に繋がる行動



「感謝」「思いやり」「礼儀」などが挙げられ、常に周囲への敬意を意識して行動していることも分かります。



人間、結果が出ない時は他者に責任転換をしがちです。しかし、大谷選手から言い訳やネガティブな発言はあまり聞きませんね。



高校生の時点で、「一喜一憂しない」「頭は冷静に心は熱く」といった、メンタルの安定を心がけていた大谷選手。その結果が、いま、ストレスや不安をコントロールしている点に繋がっているのかもしれません。



そもそも「人間性」なるものは、抽象的な表現で細かい目標を言語化することが難しいものです。大谷選手はそれを、高校時代から具現化できていた、といえそうです。



普段から意識して行動を続けることで、グラウンド内外で見せる自然な振る舞いが身に付いていったことが考えられます。



■かの野村克也氏も評価



ちなみに、故・野村克也氏も、その著書で大谷選手の謙虚さや向上心を称賛しつつ、この目標達成シートの内容についても触れています。



なかでも、ドラフトで8球団に指名されるために必要な項目として「人間性」を挙げているのが、私には興味深かった。「人間的成長なくして技術的成長なし」と私は選手たちに言い続けてきたからだ。



(中略)



「自分はこうなりたい」「これがしたい」



人間が成長するためには、そういう具体的な目標を持つことが非常に大切だ。それがみずから能動的にやるべきことに取り組もうとする意欲の源泉となるからである。



引用元:野村克也(幻冬舎)「プロ野球怪物伝 大谷翔平、田中将大から王・長嶋ら昭和の名選手まで」第1章「二刀流・大谷翔平という怪物」より



■「目標達成シート」を活用・実践するメリット



さて、目標達成シートは、仕事やプライベートの様々な場面で活用できるツールといえるでしょう。



目標達成に向けて迷いをなくしたい人や、実践すべき行動を整理したい人の強い味方になりそうですね。



■必要な行動が「可視化」できる



各マス目を埋めることで「必要なアクション」が明確になります。よって、目標が達成できる確率も高くなる、といえるでしょう。



例えば、「営業マンとして売上トップになりたい」という目標を掲げた場合、売上を上げるためには顧客の分析や提案方法の見直しなど、幅広い角度から気を配る必要がありますね。



ここで「必要なアクション」があいまいで、結果を出せない状態が続いた場合、仕事へのモチベーションは下がるでしょう。目標に向かって努力を続けることは難しくなります。



目標達成シートを使い、ゴールまでに「何をすればよいのか」を可視化させる。そこで、実践すべき行動を確認できる状態を作り、迷いをなくすことに繋げていけるでしょう。



■新たなアイデアの発見



頭の中で漠然としていた考えが、作業を通して整理されるため、幅広い視野で物事を分析できます。

81マスを埋めるためには、柔軟な思考や発想力が必要だからです。



目標達成シートに何を書くかには、決まりはありません。大谷選手のように「項目」として挙げてもよし。自分の思いや言葉を自由に入れたり、説明文で補足してもよいでしょう。



例えば、「10kg痩せたい」と決意し、「一日の摂取カロリーを守る」と目標を立てたとします。食べ過ぎないようにするため、「炭水化物を減らす」や「噛む回数を多くする」など、具体的な行動を書いていきます。



その場で答えが出なくても構いません。後日、行動を思いついた時に目標達成シートへ書き込み、行動に実践できれば、目標に向かうモチベーションにも繋がるでしょう。



■まとめ



大谷選手が活用していた目標達成シートは、私たちの普段の仕事や暮らしにおいても、十分活用しがいがありそうです。



勉強・ビジネス・プライベートなどで叶えたい目標があれば、トライしてみるとよいかもしれませんね。



目標達成に向けて「どのような行動が必要か」を見える化していくことは、モチベーションを保つための手段といえるでしょう。



新年度に向けた目標設定をする人が増える時期。

ご紹介した「目標達成シート」を活用し、意識高いパフォーマンスを実現できれば理想的ですね。



■参考資料



  • 株式会社「クローバ経営研究所」( http://myhou.co.jp/ )
  • 松村剛志(青春出版社)『仕事も人生もうまくいく!【図解】9マス思考マンダラチャート』2018年( http://www.seishun.co.jp/book/20531/ )
  • スポニチアネックス「花巻東時代に大谷が立てた目標シート」( https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2013/02/02/gazo/G20130202005109500.html )
  • 野村克也(幻冬舎)『プロ野球怪物伝 大谷翔平、田中将大から王・長嶋ら昭和の名選手まで』2019年( https://www.gentosha.co.jp/book/b12641.html )
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