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著者の土信田 雅之が解説しています。
「 今週の日本株 波乱含みの2月相場、カギを握る3つのポイント~米国市場に揺さぶられる展開が続く~ 」
先週末2月7日(金)の日経平均株価は3万8,787円で取引を終えました。
前週末の終値(3万9,572円)からは785円安、週間ベースでも2週連続で下落し、2月相場のスタートは軟調なものとなりました。
さらに、翌8日(土)の朝に取引を終えた、日経225先物取引のナイトセッションでは、大阪取引所の終値が3万8,370円となっているので、このままの流れで行けば、今週の日経平均は安く始まることが想定されます。
となると、今週は、「株式市場はこのまま下落してしまうのか?」とか、「株価が下がったところは買いなのか?」、「株価が反発した場合には、上値をトライできるのか?」などを念頭に置きながら、相場に臨むことになります。
そこで、今回のレポートでは、今週のイベント予定や先週の株式市場の動向などを整理しつつ、相場の上昇や下落、それぞれの可能性について考えて行きたいと思います。
今週のイベントの注目点は?
早速、今週の予定やイベントについて確認していきます。
まずは国内市場です。今週は、11日(火)が祝日で4営業日となるほか、週末の14日(金)に、オプション取引やmini先物取引のSQを控え、需給的にも相場が動きやすいタイミングとなります。
経済指標については、1月の景気ウォッチャー調査や、12月の国際収支などが予定されていますが、注目度の高いものは少なく、企業決算の動向を中心に相場が動いていくことになりそうです。
今週の国内企業の決算は、 ソフトバンクG(9984) や ソニーG(6758) 、 ホンダ(7267) 、 JT(2914) 、 ニトリ(9843) などの注目企業だけでなく、先週末時点で時価総額が1,000億円を上回る企業だけでも270社を超えるなどその数も多く、個別で大きく動く銘柄が出てきそうです。
続いて、米国市場も見ていきますが、米国でも マクドナルド(MCD) や コカ・コーラ(KO) といった消費関連をはじめ、 シスコ・システムズ(CSCO) や アプライドマテリアルズ(AMAT) などの通信・半導体関連、暗号資産関連のコインベースなどの企業が決算を予定しています。
とはいえ、今週の米国では、日本とは対照的に、経済指標への注目度の方が高くなりそうです。
米国では先週末に1月分の雇用統計が発表されましたが、今週はインフレ関連指標である、1月のCPI(消費者物価指数)が12日(水)に、PPI(卸売物価指数)が13日(木)に発表されるほか、週末の14日には同じく1月の小売売上高も発表されます。
図1 米10年債利回り(日足)の推移(2025年2月8日時点)
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上の図1は米10年債利回りの日足チャートですが、最近まで上昇していた利回りが足元で低下していることが読み取れます。
その理由のひとつとして、「米国の景気鈍化を匂わせる経済指標が出てきたこと」が挙げられます。例えば、先週5日(水)に公表された米1月ISM(米サプライマネジメント協会)非製造業景況感指数は市場予想を下回り、この日の10年債利回りが大きく低下しました。
すなわち、足元の相場環境は、米国の景況感悪化を示す経済指標が米金融政策の利下げ期待につながり、金利の低下と株価の上昇をもたらし、「(景気の)悪いニュースが、(株式市場の)良いニュース」の状況になっていると思われます。
このほか、足元で米国の金利が低下していた理由として、米財務省が公表した2025年2月から4月の国債発行予定の規模が増額されることなく、前回(2024年11月から2025年1月)と変わらなかったことで米国債の需給不安が後退したことや、トランプ関税によるリスク回避の動きで米国債が買われたことなども挙げられます。
今週も米国市場の動きがカギ
この米トランプ政権の関税政策の動きについては、今週も配慮する必要が出てきました。
というのも、トランプ大統領が先週末の7日(金)に、相手国が米製品に課しているものと同率の関税を課す、「相互関税」の計画を今週中にも発表する旨を表明し、その内容次第では相場が荒れる可能性があるからです。
先週の株式市場を揺さぶった、メキシコやカナダ、中国についての関税政策については、 こちらのレポート でも言及していますが、これに加え、関税をめぐる新たな材料が市場に投下された格好です。
図2 米NYダウ1分足の動き(2025年2月7日)
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また、上の図2は、先週末7日のNYダウの1分足のチャートです。
この日は、米国株市場の取引開始前に米1月雇用統計が発表され、取引時間中には、ミシガン大学の米2月消費者態度指数の発表と、先ほどのトランプ大統領の相互関税計画の発言が報じられました。
図を見ても分かるように、雇用統計の結果を受けて始まったNYダウは上昇でスタートしました。しかし、日本時間の午前0時に公表されたミシガン大学消費者態度指数でインフレ見通しが強まっていたことで下げに転じ、その後もトランプ政権の相互関税に関する警戒も加わって、取引終了にかけて下落基調が続きました。
さらに、米国の企業決算については、先週末時点で「マグニフィセントセブン」銘柄のうち、 エヌビディア(NVDA) を残すのみ(同社の決算は2月27日予定)となりましたが、決算を受けた各銘柄の値動きにかなりバラツキが出てきているほか、決算後に下落しているものが多くなっています(下の図3)。
図3 「マグニフィセントセブン」銘柄の比較(2024年末を100)(2025年2月7日時点)
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同じく、日本企業の決算でも、好決算で素直に上昇する銘柄がある一方で、 東京エレクトロン(8035) や IHI(7013) などは、好決算でも「期待と比べて物足りない」として下落してしまう銘柄があります。また、トヨタも業績見通しを上方修正し、最初は株高で反応してもその後の買いが続かずに失速してしまうなど、相場全体の上値トライにつながっていません。
もっとも、全体的に決算内容は悪くないため、今週の相場が軟調となった際には下値を拾う動きも出てくると考えられます。そのため、米国市場が下落した場合の日本株の底堅さには期待したいところです。
このように、今週の株式市場は、「日米の企業決算」、「米国の経済指標」、「トランプ関税の動向」の3つが焦点になります。
目先の株式市場の値動きはどうなる
これらを踏まえつつ、最後に日経平均の状況と今後の値動きの見通しについて確認していきますが、基本的な考え方は前回とあまり変わりません。
図4 日経平均(日足)の動き(2025年2月7日)
![[今週の日本株]波乱含みの2月相場、カギを握る3つのポイント~米国市場に揺さぶられる展開が続く~](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FTousiru%252Fb5%252FTousiru_47454%252FTousiru_47454_5.png,quality=70,type=jpg)
上の図4は、日経平均の日足チャートです。
先週の値動きを振り返ると、トランプ関税をめぐる警戒感で週初の3日(月)に一段安となり、その後は週末にかけて3万9,000円の節目の株価を挟んで推移する展開となりました。
株価移動平均線との絡みでは、2週間前の「DeepSeek(ディープシーク)」ショック時は75日移動平均線、先週のトランプ関税の警戒感では200日移動平均線がそれぞれ株価のサポートとして機能していました。「値動きは荒っぽいが、様子を見ながら下げている」様子がうかがえるため、チャートの形状が極端に悪化しているわけではありません。
その一方で注意しておきたい点もあります。
このまま、この2つの移動平均線が抵抗として機能してしまうと、下方向への意識が強まり、3万8,000円台割れも視野に入ってきます。その場合、昨年10月から続いている日経平均の「レンジ相場」を下抜けるシナリオも浮上してきます。
図5 日経平均(日足)とトレンドライン(2025年2月7日時点)
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仮に、3万8,000円台を下回ってしまった場合、最初の下値の目安となるのは、上の図5でも確認できる、昨年7月11日と10月15日の戻り高値どうしを結んだ「上値ライン」、もしくは、昨年8月5日の安値と10月15日の高値の上昇幅を基準とした「ギャン・アングル」の4×1ラインになりそうです。
ちなみに、上値ラインと4×1ラインが交差する地点は、大体3万7,500円のため、株価の下落がこのあたりで下げ止まることができれば、「想定の範囲内」ということになります。
したがって、相場が再び強気に戻るのであれば、図の(1)のように3×1ラインに沿って上昇していくことになりますが、これまでも見てきたように、今週は不透明な材料が多いことや、企業決算が上値トライに結びついていない状況を考えると、(2)の範囲内で推移していくというのが当面のメインシナリオになりそうです。
(土信田 雅之)