トランプ関税巡り貿易戦争激化
トランプ大統領による関税政策によって、米中貿易戦争が激化の一途をたどっています。当然ながら日本も巻き込まれていますが、相互関税の引き上げは90日間停止されて、日本に課せられている関税は10%にとどまっています。
この間、日本は赤澤亮正経済再生担当大臣が米国との協議の担当閣僚として交渉にあたることとなります。
赤澤大臣は、経済再生担当大臣のほか、新しい資本主義担当、賃金向上担当、スタートアップ担当、全世代型社会保障改革担当、感染症危機管理担当、防災庁設置準備担当、内閣府特命担当の計八つの担当大臣とマルチな政治家ですが、担当している役職は内需中心のイメージがありますので外交手腕は未知数といえます。
米国は、ヘッジファンド出身で金融の百戦錬磨のベッセント財務長官とUSTR(米通商代表部)のグリア氏が相手です。
前トランプ政権時の日米貿易交渉において、人を褒めないトランプ大統領が「タフネゴシエーター」と感嘆した茂木敏充前自民党幹事長や、就任式に日本人として唯一出席した孫正義氏、昨年4月にトランプタワーで会談した麻生太郎元首相といった人物が今回の日米交渉に関わらなくても大丈夫なのか心配ではありますが、赤澤大臣が今回の交渉をうまくまとめた際、株を上げるのは間違いないでしょう。
日米交渉のポイントは「非関税貿易障壁」「通貨問題」「政府補助金」の三つ
ベッセント財務長官は「日本は引き続き米国の最も緊密な同盟国の一つであり、関税、非関税貿易障壁、通貨問題、政府補助金に関する今後の生産的な取り組みを楽しみにしている」と述べ、日米交渉のポイントを「非関税貿易障壁」「通貨問題」「政府補助金」の三つとしています。
非関税貿易障壁は、自動車であれば安全や環境などの独自の規制、牛肉であれば国際的に厳しいBSEリスクがある危険部位の除去基準など、日本独自のルールの存在を指摘しています。
通貨問題は、シンプルに為替の円安です。政府・日本銀行が円安ドル高進行を容認していることで、米国産の輸入品が日本で高くなっているので相対的に米国産が売れない、という指摘です。
政府補助金は、主に輸出用米への補助金を指していると推測します。輸出用米については、新市場開拓用米として認定を受けることが可能で、水田リノベーション事業で助成金が受けられる制度がありますのでベッセント財務長官はこの補助金を指していたと考えます。
上記の3点を交渉相手のベッセント財務長官が指摘していることから、非常に厳しい交渉が繰り広げられることでしょう。米国が最初に交渉する相手が日本であることも考慮すると、今回の日米交渉の過程と結果は世界が注目しています。
当然ながら1~2週間で片が付く話ではないですので、結論が見えるまで日本株を積極的に買う動きは手控えられるでしょう。日経平均株価やプライム市場の大型株などは方向感に乏しい展開が続くと想定します。
長期投資で注目!5月権利付きの高配当銘柄
このように先行き不透明な状況が続くときは、長期投資の観点で、外部環境に左右されにくい内需の配当銘柄への関心を高めたいところです。
2024年にスタートした新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)は、旧NISAにあった非課税期間(一般NISAは5年、つみたてNISAは20年)という制約が一切なくなり無期限となりましたので、30年、40年という長期間、NISAで銘柄を保有することが可能ということです。
今回は、5月に権利が取れる高配当銘柄(利回り4.0%以上)をご紹介したいと思います。時価総額は小さいながらも配当銘柄としての知名度が高い中小型株もありますので、ぜひ参考にしてみてください。なお、5月の権利取り最終日は28日(水)です。
銘柄名 証券コード 株価(円)
(4月11日終値) 配当利回り(%) 特色 タマホーム 1419 3725.0 5.2 業績低迷は織り込み済み、配当利回り5%台に注目 ライク 2462 1435.0 4.0 保育と介護という社会意義のある事業を展開 毎日コムネット 8908 748.0 4.1 首都圏で学生向け事業を展開 ビーウィズ 9216 1607.0 4.8 業績低迷は織り込み済み、株価は外部環境の耐性アリ オオバ 9765 1045.0 4.0 社会インフラ整備やハザードマップ作成など「地方創生2.0」銘柄 (注)配当利回りは、4月11日時点の株価終値と2025年5月期配当予想で算出。
タマホーム<1419>
低価格自由設計の木造注文住宅などを展開する住宅メーカーです。中古リノベマンションなどを展開する不動産事業の成長率が高いですが、住宅価格の上昇傾向が続き、販売価格の高騰による受注状況は停滞気味。売上計画棟数の確保が困難な状況となっていることから、2025年5月期業績は売上高、各利益予想をそれぞれ下方修正しました。
一方、株価は2025年1月を底にじりじりと上昇しています。すでに下方修正は株価に織り込み済みで、トランプ関税をものともしない株価推移は強さを感じます。配当利回り予想が5%台と非常に高いことから、5月末の権利取りに向けてもしっかりとした推移が期待できるでしょう。
ライク<2462>
関東を中心に保育施設や老人ホームなどを展開しています。急成長する事業ではないかもしれませんが、保育ニーズが今後も高まる公算が大きい保育事業は安定した成長が期待できる事業と考えます。
また、超高齢化社会に突入していることで介護事業も右肩上がりの事業とみています。
毎日コムネット<8908>
主に首都圏を中心に大学生など学生サークル向け旅行業を展開していますが、今や学生向け賃貸住宅開発や不動産有効活用コンサルティングなど不動産ソリューション事業をメインにしています。
私も大学生だった20年以上前に、こちらの若手社員さんのお世話になった経験があります。学生の無茶苦茶な要求にも笑顔で対応してくださったのを明確に記憶しています(いつぞやは失礼な態度をとって失礼いたしました)。
2025年5月期業績予想に対する2024年6月-2025年2月期(第3四半期)業績の進捗(しんちょく)率は低くとどまっていますが、同社は第4四半期に業績が偏重する季節性がありますので、足元の挽回に期待したいところです。
ビーウィズ<9216>
パソナグループの子会社で、企業のコンタクトセンターや事務センターの業務請負事業を展開しています。コンタクトセンターなどの新規案件を着実に獲得するも、既存案件(公共・ライフライン)の縮小により減収。減収が響いたほか、コスト削減が追い付かず固定費率が上昇したことで、2025年5月期の営業利益予想を下方修正しました。
ただ、2023年夏をピークに株価はほぼ半値水準まで下落しており、足元の業績鈍化傾向はほぼ織り込まれたと考えます。トランプ関税に伴う急落もさほど見られないことから、高配当利回りの内需株として注目します。
オオバ<9765>
建設事業の調査・計画などを担う建設コンサルタント事業を展開しています。都市基盤整備など「まちづくり業務」を強みとしており、道路、橋梁(きょうりょう)、上下水道など社会インフラ施設単体の設計のほか、ハザードマップの作成なども行っています。また、防災シミュレーションも展開しており、まさに「地方創生2.0」に深く関連した銘柄といえるでしょう。
株価は4月1日に年初来高値をつけた後は売りに押されましたが、戻りも早い状況です。外部環境に左右されにくい「地方創生2.0」の内需銘柄として注目します。
(田代 昌之)