大型ECセール「618」もやや苦戦、国内勢ではプレミアムブランドが健闘

 6月18日まで約1カ月続いた中国の大型ネット通販(EC)セール「618」では、スポーツウエアの流通取引総額(GMV)は一見、期待を持たせる数字となったが、BOCIは実際には苦戦したとみている。販売ランキングやチャネル調査によれば、米ナイキをはじめとする多国籍ブランドの圧力を受け、中国のマス市場向けブランドが市場シェアを落としたもよう。

半面、中国勢が展開するプレミアムブランドは差別化や製品ラインの改善、広範な顧客基盤を強みに、「618」の勝ち組となった可能性が高いという。BOCIは国内最大手ブランドの安踏体育用品(02020)に対する楽観見通しを継続。ナイキやアディダスなどの製品を扱う滔搏国際(06110)に対して相対的に慎重見通しを維持している。


「618」における国内スポーツウエアブランドの販売成績はまちまち。星図数据(Syntun)の報告によれば、五大ECプラットフォーム(アリババ系天猫、JDドットコム、抖音、ピン多多、快手科技)全体のGMVは前年同期比15.2%増の855億6,000万元に達したが、けん引役となったのは買い替え補助金を追い風とした家電など。スポーツウエアを筆頭とするアパレルは低調なカテゴリーの一つであり、市場シェアの維持と在庫処分を目的とした各社の積極的な値引きが目立った。


 滔搏国際などの小売事業者やブランドに関する最新情報によると、オフラインの実店舗への客足は2025年4-6月期も低調。2025年の「618」ではECプラットフォームがキャンペーンのルールを見直したことが奏功し、オフラインからオンラインへの乗り換えが進んだという。ただ、これはオフライン業務のさらなるカニバリゼーション(共食い)を招きかねず、BOCIは4-6月期、上期の販路構成の変化が、ブランド各社の粗利益率の下押しにつながる可能性を指摘している。


 Global Netrepreneurの「618」期間のランキングを見ると、アリババ集団(09988)のECプラットフォーム「天猫(Tmall)」におけるスポーツウエアのGMVでは、ナイキ、フィラ、アディダスがトップ3。多くの国際ブランド、特にニッチ分野に特化したプレミアムブランドが順位を上げ、逆に国内勢が順位を落とした。BOCIによれば、◇新ブランドに注力したいナイキが在庫一掃セールを強化し、国内ブランドとの価格差が縮小した、◇中国経済の減速が主に国内ブランドのターゲット層に影響した、◇新興国際ブランドが中国向けの製品ラインアップを拡充した――ことが響いたとみられる。


 安踏体育用品は旗艦の「安踏」ブランドがさえない中、フィラやデサントなどのプレミアムブランドが好調。李寧(02331)に関して、BOCIは五輪スポンサーシップによる効果が現れるまでには時間がかかるとみて、4-6月の市場シェアの後退を予想。安踏体育用品>特歩国際(01368)>李寧の順で選好するとした。一方、滔搏国際に関しては米関税問題によるナイキへの影響などを指摘し、相対的に慎重見通しを維持している。


(Bank of China int.)

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