年金生活に入るセカンドライフでは、年金収入の補完として高配当銘柄への投資が人気です。しかし、高配当銘柄への投資はデメリットやリスクも大きく注意が必要です。

今回は高配当銘柄投資の注意点についてご説明します。


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人生100年&インフレ時代、資産寿命を延ばすためには投資が大切

 人生100年時代といわれて久しいですが、リタイア後のセカンドライフにおける収入の土台となるのは公的年金です。公的年金だけで生活費を十分カバーできればいいのですが、昨今ではモノやサービスの価格が上昇するインフレもあり、預貯金と年金収入だけで賄っていくのは必ずしも適切ではありません。


 そこで大切になってくるのが投資です。株式などの付加価値を生み続ける資産に投資していけば、利回りは安定しないものの、長期的には5~6%といった利回りも不可能ではありません。仮に1,000万円を投資していたら年間50万~60万円のリターン、つまり、毎月4万~5万円程度の収入を確保できる可能性があるのです。


インカムゲイン確保を目指した高配当株式投資

 証券や不動産の価格上昇による値上がり益(キャピタルゲイン)に対して、配当金や分配金、家賃といった定期的に入ってくる収入はインカムゲインと呼ばれ、セカンドライフにおいて年金収入の補完として人気があります。


 インカムゲインの中でも以前から人気があるのは、配当利回りの高い個別株への投資です。株式会社は毎年利益を生み続けていきますが、その利益の一部を株主に還元するのが配当です。株式に投資して保有を継続していけば毎年配当収入が得られるので、できるだけ多くの配当を払ってくれる銘柄に投資するのが高配当株式への投資です。


高配当株式投資のメリット:株数を減らさず収入を確保できる

 高配当株式への投資では、基本的に長期で保有を継続していれば定期的に配当収入が得られますので、受け取った配当金を全て生活で使ってしまっても、保有株数は減少しません。


 投資信託などに投資して、定期的に売却しながら生活費として使っていく場合には、保有口数が徐々に減少していきます。そうなると、いつまで資産を保たせることができるのかと不安になる可能性もありますが、高配当株式を長期保有していくのであればそういった不安はなくなります。


【60歳からの投資】高配当銘柄のメリットと「意外な落とし穴」
高配当株式投資のメリット

 このように、定期的に配当収入が得られるのは魅力的に思われるかもしれませんが、意外とデメリットやリスクが多い点には注意が必要です。


デメリット・リスクその1:配当利回りのわな

 まず一つ目は、高い配当利回りのわなです。一般的に配当利回り(%)は、


年間配当額 ÷ 株価 × 100 =配当利回り


という式で計算されます。

例えば、年間配当額が60円、株価が2,000円であれば、配当利回りは3%となります。


 ここでもし配当額は変わらず60円のまま、株価が急落して1,000円になると、配当利回りは2倍の6%に上昇します。配当利回り6%の高配当銘柄に見えますが、実態は業績不振により株価が急落、予想配当が修正されていないだけかもしれません。つまり、予想配当も減額され、結果的に配当利回りが低下してしまうリスクが高い状態の可能性があるのです。


 こういったリスクを排除するためには、配当利回りだけではなく、業績などのファンダメンタルズなどもしっかりチェックして銘柄選びをしていくことが大切です。


デメリット・リスクその2:金利上昇局面での株価下落リスク

 二つ目は、金利上昇局面での株価下落リスクです。現在、日本銀行は利上げ政策を行っており、今後金利は上昇していくと見込まれています。


 日銀が操作するのは短期金利ですが、長期的な利上げ予測を受けて、長期金利といわれる10年国債の利回りも上昇し続けています。今後さらなる利上げが継続すると、10年国債の利回りは現在の1.6%程度からさらに上昇していく可能性もあります。


 円建て元本保証である10年国債の利回りが2%、3%と上昇していくと、個別企業のリスクを取った上での配当利回り3~4%というのは相対的に魅力が低下することになります。


 10年国債の利回りが上昇したからといって企業の配当額が増加するものではありませんので、10年国債との比較感から株価が調整され、配当利回りが5~6%などへ上昇する可能性があります。つまり、配当額は変わらないのに、株価は大きく値下がりしてしまう可能性があるのです。


デメリット・リスクその3:低いトータルリターン 

 三つ目は、高配当銘柄に投資することで結果的にリターンが低めになってしまうリスクです。企業は利益を生み出し、その一部を将来に向けて投資、残りを株主への配当に回します。

今後高成長が見込まれる企業は、利益を配当に回すことなく、将来に向けた投資に振り向けていきます。その方が将来の売上を拡大でき、結果的に大きな利益につながると考えているからです。


 一方、利益のうち配当に回す割合の高い企業は、成熟期の企業が多くなっています。自社での投資機会がそれほどないため、生み出した利益を積極的に配当などの株主還元に回しているのです。


 つまり、高成長が見込まれる企業よりも、配当を重視する成熟期の企業への投資では、キャピタルゲインとインカムゲインを合計したトータルリターンが相対的に低めになってしまう可能性があるのです。


【60歳からの投資】高配当銘柄のメリットと「意外な落とし穴」
高配当株式投資のデメリット・リスク

高配当株式投資のデメリット・リスクを緩和する方法

 高配当株式投資は定期的な配当収入が得られる一方で、デメリット・リスクも多い投資方法と言えます。こういったデメリット・リスクを低減する方法を考えてみましょう。


1:できるだけ多くの銘柄に分散投資する

 一つ目はできるだけ多数の銘柄に分散投資することです。業績下方修正・業績不振などのリスクを下げるためには、できるだけ多数の高配当銘柄に分散投資しておくことが考えられます。 


 個別株で多数の銘柄に投資するのは手間がかかるため、高配当銘柄に投資する投資信託や上場投資信託(ETF)を活用するのも選択肢になります。


2:利回りの高いものに投資対象を広げる

 二つ目は、株式から対象をさらに広げて、不動産投資信託(REIT)や債券を対象とした投資信託やETFで利回りの高いものに投資していくことです。


 ポートフォリオ全体の平均利回りは株式のみより下がってしまうかもしれませんが、さまざまなマーケット環境に対応しやすい、バランスの取れたポートフォリオを構築することも可能でしょう。


3:そもそも高配当株への投資をやめる

 最後に、そもそも高配当銘柄への投資をやめて、分配金を出さないタイプの全世界株式インデックスファンドなどへ投資しながら、定期売却サービスを活用して取り崩していくという方法も考えられます。


 こうすることで成熟期企業のみならず、高成長のグロース企業も対象になりますので、市場平均並みのトータルリターンを期待することが可能です。
 


 万人にとって共通の正解というのはありません。ご自身の経験やお考えに応じて、長期的に安心して継続しやすい投資方法を選択していただければと思います。


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