10月4日に投開票される自民党総裁選は、事実上「次期首相」を決める一大政治イベント。株式市場は小泉氏優勢を織り込みつつ、高市氏が自民党員の支持を伸ばし、林氏も地道に存在感を維持。

有力3候補それぞれの政策スタンスは異なり、週明けの株式市場の反応には「織り込み済み」「サプライズ」「安ど感」の三つのシナリオが描けそうだ。


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小泉氏83%、高市氏13%、林氏5%…自民党内力学が左右?

 10月4日(土)に投開票が行われる自民党総裁選は、少数与党とはいえ実質的に「次期首相」を決める重要なイベントであり、その結果は週明けの日本株市場に影響を与える可能性があります。


 米国で著名な予測市場プラットホーム「ポリマーケット(Polymarket)」では小泉進次郎氏の当選確率が83%で圧倒的優勢となっています(図表1)。一方、「財政拡張」や「成長重視」への期待を背景に党員票や市場参加者に人気の高市早苗氏は13%。林芳正氏は約5%にとどまりますが、外相など主要閣僚経験による安定感が評価され議員票の一部を固めています。1回目の投票で決着しない場合は決選投票(2名)となり、投票比重が高くなる国会議員票獲得のせめぎ合いに。


 小泉氏は「改革」を掲げつつも財政緊縮色が濃く、岸田政権や石破政権の路線継続との印象が否めません。高市氏は「積極財政+成長重視+保守回帰」との象徴性で党員票を動員し選挙戦の軸になっています。林氏は「実務型調整派」として安定感を訴え、野党連携への柔軟姿勢も注目され議員票の支持が増しているとの見方も。「選挙は水際」と言われますが、特に決戦投票は党内力学(重鎮の意向や国会議員の「勝ち馬」に乗りたい動き)が結果を左右すると見込まれています。


図表1:自民党総裁選の当選(新首相)は有力3候補に絞られてきた


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出所:ポリマーケット(Polymarket)による当選予測市場をもとに著者作成(10月3日時点)

有力3候補の政権公約を読み解く-次期衆議院選挙も視野に

 自民党総裁選で当選を目指す「有力3候補」について、出馬会見や候補者討論会での発言、報道などをもとに主要な「政権公約」を整理して図表2で一覧にまとめました。


図表2:自民党総裁選、有力候補の政権公約(概略)


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出所:各種報道・情報より著者作成(10月3日時点)

小泉氏の政権公約

 小泉進次郎氏は、若手・改革派であることを前面に出す一方、経済政策では「財政均衡」を重視する岸田・石破両政権の路線を受け継ぐ姿勢がみられます。環境税導入や再エネ推進などグリーン成長を軸に据え、「2030年までに平均賃金を100万円引き上げる」と訴えていますが、大型減税には慎重で市場からは「改革派ながら財政緊縮派」と見られています。


高市氏の政権公約

 高市早苗氏の公約は、3候補の中で最も「積極財政派、安全保障重視、保守派」といえます。アベノミクス(故・安倍晋三前首相の経済政策)を引き継ぎ、防衛、半導体、宇宙、サイバーセキュリティー、核融合など戦略分野への投資拡大を掲げています。インフラ再整備を含めた公共投資による景気刺激も狙い「暮らしや未来への不安を夢と希望に変える政治を目指す」「日本をもう一度高い位置に押し上げる」と党員に分かりやすいアピールで差別化しているようにみえます。昨年から勢力を伸ばしている国民民主党の玉木雄一郎代表や榛葉賀津也幹事長が「高市氏の経済政策や安全保障政策はわが党と共通点が多い」と言及していることに注目です。


林氏の政権公約

 林芳正氏は「中道安定の実務派」といえます。外相を含む主要閣僚経験を背景に、柔軟な財政運営で中小企業やデジタル・コンテンツ産業を支援する方針です。さらにユニバーサル・クレジット(マイナンバーカードを活用した給付金制度の統合・効率化)の導入検討を掲げ、社会保障制度改革踏み込む姿勢です。内政・外交をバランスよくまとめる安定感のある政策遂行が期待されています。


 それぞれの候補とも、総裁選での当選を経た後も野党との連携(多党制)を模索し、次回(解散)衆議院選挙を視野に入れた自民党の党勢回復に寄与できるかが問われます。


総裁選の結果別、株式相場の反応と業種・銘柄物色

 上述した市場予想(当選者見通し:図表1)や政権公約の概略(図表2)を踏まえ、新総裁の誕生(→10月15日開催で調整されている臨時国会で首班指名見通し)を見据えた週明けの株式市場の反応を予想し、業種別物色予想や注目銘柄を参考情報として図表3にまとめました。


図表3:自民党総裁選・当選者別の相場・物色予想


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出所:各種報道・情報より著者作成(10月3日時点)注:上記一覧で示した(*)は各種報道にもとづく参考情報であり、いかなる投資成果も保証するものではありません。

小泉氏当選の場合、方向感乏しい展開

小泉進次郎氏が当選する場合は「織り込み済みで方向感に乏しい展開」となりそうです。財政均衡志向がリフレ期待を抑え、ノーサプライズで株価は出尽くし感からもみ合いを想定します。小泉氏は「解党的な出直し」を唱える一方で「石破政権の路線継承」を示唆していることを不安視する向きもあります。ガソリン税撤廃方針による物流コスト軽減期待や「2030年までに賃金を100万円増やす」との構想が消費関連株や物流関連株を刺激する可能性はあります。


高市氏当選の場合、「高市トレード」で株価上昇に期待

 高市早苗氏が当選する場合は「積極財政政権誕生に向けたポジティブサプライズ」となり、通称「高市トレード」(株式市場が一段高)で反応する可能性があります。リフレ政策期待と「日本初の女性首相」という刷新感が相まって投資家心理を向上させることに期待。建設・インフラ、防衛・重工業、AI/半導体・先端技術、エネルギー(電力やSMR・核融合開発関連)が注目業種となりそうです。


林氏当選の場合、安定感が好感され底堅い市場展開

 林芳正氏が当選する場合にもサプライズ感はありますが、相対的には「安定感を好感した底堅い相場」が想定されそうです。豊富な党幹部・重要閣僚経験と外交手腕に安心感があり、「毎年1%の実質賃金上昇」という訴えは消費関連株にプラスとなりそう。実質賃金上昇が続けば日本銀行による金融政策正常化が進みやすく、長短金利差の拡大(利ざやの拡大)で銀行株の収益改善が期待されます。なお、林氏が大手総合商社(三井物産)の出身である点も注目材料です。


3候補で異なる日本株インパクト、短期のテーマ買いも検討か

 予想を総括すると、小泉氏が当選する場合は財政政策が「緊縮姿勢」とみられ、ほぼ織り込み済みの動きとなりそうです。高市氏が当選する場合はポジティブサプライズ(積極財政と成長重視による強気シナリオ=高市トレード)となり、日本株が一段高で反応する可能性が高いと予想します。林氏が当選する場合は「安定感のある政権運営と野党連携の実現性」と安どし、底堅い展開となる可能性があります。


 それぞれ市場に与えるインパクトは異なり、短期的にはテーマ株を中心とした物色売買が強まる局面も想定されます。もちろん、投資家にとっては党内政局がドライバーとなる自民党総裁選挙結果を受けた短期的な政策変化期待だけでなく、首相就任前後に進む野党との連携(連立政権)の枠組みや、多党政治に応じた政策調整や世論調査(支持率)動向を受けた解散総選挙のタイミングも重要な材料となるでしょう。


 さらに長期的な観点では、新総裁(首相)が率いる政権の財政政策・経済政策がどの産業や企業収益に寄与するのかを見極める視点が求められます。外部環境要因として米国株式市場や為替(ドル/円)相場の変動から日本株が影響を受けやすい高い相関性に変わりはありません。


 とはいえ、日本株式市場は「ポスト石破」政権の誕生に伴う政策変化を巡る思惑で動きやすい局面に入りつつあり、政治的な安定や刷新に期待する海外投資家も注目する10月4日の自民党総裁選の結果は、その後数週間から数カ月の相場の基調を左右する分水嶺(ぶんすいれい)になるとみています。


(香川 睦)

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