<指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~>

9月の中小型株ハイライトは「半導体株ラリーの恩恵ゼロ」
「半導体にあらずんば株にあらず」そんな相場になっていませんか?
米国株市場は、主要3指数のほか、中小型株のラッセル2000指数も史上最高値を更新しています。一方の日本株は、日経平均株価も東証株価指数(TOPIX)も史上最高値を更新しましたが、9月の月間騰落率でいえば日経平均株価の+5.2%が最も好パフォーマンス。
TOPIXが同+2.0%(TOPIXスモールのバリュー/グロース指数ともTOPIXと同等のパフォーマンス)だった一方で、東証スタンダード指数は小幅マイナス。
各国の金融政策に関心が集まる中で、投資家も関心を大型株へと向かわせていきます(その流れは当然。中小型株には逆風)。
とくに、主力の半導体株やAI関連への資金集中がすごかったのが9月相場。米オラクルの先行き楽観見通しがAIインフレ需要の成長を連想させたほか、 エヌビディア(NVDA) が インテル(INTC) へ50億ドル出資するとか、半導体株にはポジティブなニュースが充実。
アドバンテスト(6857) が爆上げし、日経平均の指数ウエートトップの座を ファーストリテイリング(9983) から奪取したのには驚きました。同じく、日経平均の指数影響力が大きい ソフトバンクグループ(9984) が最高値を更新し、出遅れていた 東京エレクトロン(8035) は9月4日~25日まで怒涛(どとう)の14連騰を記録しました。
東証プライム銘柄の流動性上位
コード 銘柄名 売買代金
25日MA(億円) 9月騰落率 9984 ソフトバンクG 2,440 15% 6146 ディスコ 1,870 12% 6920 レーザーテック 1,774 30% 東証グロース市場(603銘柄) 1,767 -5% 6857 アドバンテスト 1,707 25% 8035 東京エレクトロン 1,341 28% 5803 フジクラ 1,284 13% 8136 サンリオ 1,162 -10% 7011 三菱重工業 924 3% 8306 三菱UFJ FG 902 6%
東証プライム市場の流動性(売買代金25日移動平均、10月2日時点)上位は、大半が半導体関連株。東証グロース市場に上場する603銘柄の1日当たり売買代金は合計で1,767億円ですが、これはソフトバンクG、 ディスコ(6146) 、 レーザーテック(6920) 1銘柄分すら下回る規模感です。
1銘柄でこれだけの流動性が確保できる個別株が存在し、しかもそうした個別株のパフォーマンスは抜群。
一方、市場全体でも人気半導体1銘柄以下の流動性で、かつパフォーマンスも悪い東証グロース市場。
日本株の話題としては、総裁選トレードも買いのカタリスト側で機能しました。石破茂首相が退陣を表明したことに伴い、株式市場にフレンドリー、財政拡張派の新首相誕生を期待した動きに。
また、日本銀行金融政策決定会合で保有上場投資信託(ETF)の売却決定がサプライズとなりました。初動ではネガティブ材料となりましたが、年間売却ペースは「時価で年間6,200億円程度」と金額が大したことない(現状保有しているのは約84兆円とされ、このペースでは全部売るまで130年以上かかる)ことも周知され、需給が悪化するという懸念は回避しました。
なお、日銀のタカ派姿勢を材料に銀行株が上がりましたが、東証グロース市場には半導体株もいませんが、銀行株もいないのでここでも蚊帳の外…。
そして、なんといっても米国株が強い! これが追い風でした。8月発表の雇用統計が弱く、ここから1カ月半近く、経済指標が弱いことを理由とした「米連邦準備制度理事会(FRB)による9月利下げ期待」を株式市場は織り込んでいきました。
ただ、「さすがに米連邦公開市場委員会(FOMC)で出尽くしになるのではないか?」という声の方が手前は多かったように思います。そのFOMCでは0.25%の利下げが決定し、年内利下げ回数見通しも引き上げられました。いずれも想定通りですが…
ここで「出尽くしになるかも?」の不安をよそに、まさかの大幅高に。
日経平均株価は9月もまた史上最高値の更新フェーズに突入。この状況では、需給が良好(買い方有利、売り方不利)により、株価が上がれば上がるほど買い戻し(ショートカバー)が誘発される「踏み上げ相場」へ発展します。
ただ、ショートカバーが上値を買っていたわけで、買戻し要素が発生しない中小型株には一切関係なく…そんな理由で生じたパフォーマンス差だったと総括できます。
新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「グロース株に伸びしろアリ!」
2025年度の上半期(4~9月)は圧巻の上昇相場でした。日経平均、TOPIXは全ての月で月間上昇、これは史上初の快挙です。機関投資家がベンチマークにするTOPIXでいえば、上半期の期間中に18%上昇。株と債券で分散運用する年金などは、株高でウエートが自然に高まった株式を売却し、その資金で債券を買うリバランスを行います。
そうした売りが10月の月初に持ち込まれ、幅広い銘柄が値崩れを起こすスタートとなっています(そんな中でも半導体株は相変わらず爆上げ状態ですが)。
中小型株市場については、東証スタンダード市場指数、東証グロース市場指数とも9月は月間マイナスで終了。大型株に投資家の関心が向かう環境は逆風ですが、米国株市場では中小型株指数であるラッセル2000が夏場以降に勢いづき、史上最高値を更新しています。
ラッセル2000のパフォーマンス向上が日本の中小型株にもポジティブな波及効果をもたらすケースは過去には多く、そろそろ期待したいところですが…。
さて今回は、東証の「グロース市場改革」について取り上げてみたいと思います。9月26日に東証が、『東証グロース市場の上場維持基準の見直し等の概要』を公表しました。ここで決定したことで一番のポイントは、上場維持基準の厳格化です。
今年から適用となっている東証グロース市場の上場維持の条件に「上場10年経過後 時価総額40億円以上」という基準があります。この上場維持基準を2030年3月以降(最初に到来する決算期の末日から適用)「上場5年経過後 時価総額100億円以上」へと見直されることが決まりました。
時価総額が基準を満たさなくても、1年間の改善期間が与えられますし、基準適合を目指す計画を開示すれば例外的に上場したままでいられるなどの猶予も結構あります。また、こんな「抜け道」も設けられています。
スタンダード市場への市場変更の新しい基準
項目 市場区分変更基準 株主数 400人 流通株式数 2千単位 流通株式時価総額 10億円以上 流通株式比率 25%以上 利益の額 年1億円以上→ 撤廃 純資産 正 売買高 ―
グロース市場の時価総額基準を満たせない場合、スタンダード市場に行っちゃえ!なる「悪魔のささやき」になびく企業が増えそうな新ルールも決定しました。スタンダード市場に市場変更する場合、時価総額に関しては「流通株式時価総額10億円以上」と低いハードルになっています。
一方、これまでは利益の額が年1億円以上あることが条件となっており、バイオなど赤字のグロース株はその道が閉ざされていました。
しかし、この利益の額に関する条件は、2025年12月をめどに撤廃となるようです。「だったらスタンダードでいいじゃん!」そう考える企業も増えそうで、グロース市場の改革を前に、スタンダード市場への移行を選ぶ企業も多いと思われます。
9月26日時点で、東証グロース市場に603銘柄が上場しています。ただ、「スタンダード市場に行っちゃえ!」で退出する企業も増えることでしょう。また、厳しくなる時価総額基準は 5年後から発動開始します。5年後に「上場5年経過した企業」が対象ということは、今上場しているグロース市場銘柄は全て該当することになります。
ただ、現状の時価総額では、基準を満たせないグロース市場銘柄の数は半数以上。あくまで現時点ですが、東証グロース市場で時価総額が100億円を超えている銘柄数は224銘柄と全体の37%。
379銘柄が基準を未達という状況にあって、今後5年で時価総額アップさせなければ…(もちろん新規上場もありますが、プライム市場へ昇格する銘柄もあるはずで)東証グロース市場だけ銘柄数が極端に少ない市場になってしまいます。東証グロース市場250指数に関していえば、250銘柄選ぼうにも250銘柄も居ないなんてことも?
グロース市場を改革するため、時価総額基準を厳格化しました。そこまでして厳しいグロース市場に残ることに何かメリットはあるのでしょうか?
この点について東証では、グロース上場企業へのサポートを明言しています。来年の年明けから、積極的に動く企業について、投資家への見える化をスタート。グロース市場上場企業にフォーカスしたセミナーや、機関投資家とのスモールミーティングなども開催するとしています。
精鋭される未来のグロース市場に残留期待のノーカバー割安株
【条件】
(1)グロース上場
(2)時価総額100億円~200億円
(3)割安(予想PER20倍未満、配当利回り2%以上)
(4)今期が二桁増収、営業増益予想
※10月2日時点、時価総額小さい順
コード 銘柄名 予想PER
(倍) 予想配当
利回り 3773 アドバンスト・メディア 11.2 3.0% 3300 アンビション DX HD 6.2 4.5% 4371 コアコンセプト・テクノロジー 10.0 2.0% 7110 クラシコム 16.6 2.2% 7792 コラントッテ 10.0 3.0% 2983 アールプランナー 5.7 3.0% 7050 フロンティアインターナショナル 10.0 5.0% 2173 博展 8.4 3.4% 6554 エスユーエス 13.8 3.1% 7378 アシロ 10.7 2.8%
5年後のグロース市場の銘柄数は激減していることが確実視されます。
今回は、グロース市場上場銘柄で、今のままなら残留できる時価総額100億円以上、その中でまだ証券会社によるアナリストのカバーがない(コンセンサスがない)銘柄をピックアップしました。グロース市場残留後に機関投資家との接点を増やすことが正当なバリュエーション評価につながる可能性があります。
現在、予想株価収益率(PER)や配当利回りの面で割安感の強い株価評価の銘柄ほど、その見直し余地は大きいといえそうです。
(岡村 友哉)