高市ラリー・AIラリーで最高値の日経平均に突如二つの重大な悪材料が降りかかりました。公明の連立離脱と、トランプ大統領による対中100%追加関税予告です。

大荒れの日本株にどう対処すべきか、私の考えをお伝えします。


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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 高市・AIラリー終了?公明、連立離脱。トランプ関税、対中100%追加予告 」


高市ラリー、AIラリーで日経平均最高値更新

 先週(営業日10月6~10日)の日経平均株価は1週間で2,319円(5.1%)上昇し、10日の終値は4万8,088円をつけました。一時、4万8,597円を記録し、史上最高値を大幅に更新しました。


 10月4日の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利したことが好感されました。高市氏が経済成長を重視、財政拡張を伴う景気刺激策に積極的であることを評価して、外国人投資家の買いが一段と増加したと考えられます。また、米国でAI関連株の上昇が続いていることも、追い風となりました。


<日経平均週足:2024年1月4日~2025年10月10日>


日経平均、内憂外患で下落警戒:トランプ関税100%追加予告、公明党連立離脱(窪田真之)
出所:楽天証券マーケットスピード IIより楽天証券経済研究所が作成

10日に二つのネガティブ・サプライズが出る

 ちょうど日経平均に過熱感が高まってきたところで10日、突如二つの悪材料が飛び出しました。


<10日に飛び出した二つの悪材料>


日経平均、内憂外患で下落警戒:トランプ関税100%追加予告、公明党連立離脱(窪田真之)
出所:各種資料より筆者作成

 公明党の連立離脱表明を受けて、10日(金)の日経平均は前日比491円下落しました。自民党の高市新総裁が、強いリーダーシップを発揮して成長戦略を進める期待から、外国人投資家の買いによって急騰していた日経平均ですが、少数与党の現実から抜け出せない現実に直面し、高市トレードが逆回転するリスクが出ました。


 それ以上に深刻な悪材料が、トランプ大統領による対中100%追加関税です。

米中の関税戦争は、しばらく休戦状態で株式市場に安心感を与えていましたが、改めて、世界経済を壊しかねない米中関税戦争が再開する可能性が出ました。


 トランプ大統領による対中100%追加関税は、10日の東京証券取引所が締まった後、ニューヨーク市場時間で出ています。従って、対中100%関税の影響を日本株が織り込むのは、10月14日(火)となります。14日の日経平均は、下落が予想されます。


トランプ大統領は本当に100%追加関税を発動する?

 トランプ大統領はこれまで何度も、世界を揺るがす政策を発表しては取り消す、ということを繰り返してきました。11月1日までに対中100%追加関税を出すというのも、単なる脅しなのか、本当に実行するのか、現時点でよく分かりません。


 トランプ大統領は12日、SNSに「尊敬されている習近平国家主席は今、調子が悪いだけだ。彼は中国の不景気を望んでいないし、私もそうだ」と書き込み、「中国については心配ない、全てうまくいく」としました。こういう言い方だと実際には発動する気はないとも取れます。このSNS書き込みを受けて、13日の米国株は急反発しました。


 本当に発動し、中国も報復を実行すれば、米中対立ショックで世界的な株の暴落を招くことになります。トランプ大統領がそこまで覚悟しているとは考えにくいところです。


 一時、TACO(トランプはいつもびびって引き下がる)と、トランプ大統領を揶揄(やゆ)する言葉が米国で流行しました。

トランプ大統領は、株式市場の下落に敏感といえます。株式市場が急落すると、強硬策を取り下げて、融和的になる傾向が第1次トランプ政権のときから見受けられました。


 最近、米国株は最高値圏で強い動きが続いています。それが、トランプ大統領を一段と強硬にしているともいえるでしょう。


 ただし、中国は一切譲歩しない状況に加え、レアアース禁輸や米国産小麦の輸入停止によって、米国との交渉で優位に立ち始めています。トランプ大統領も安易な脅しは効かないことを十分に理解していると思われます。


公明党の連立離脱は悪材料?

 次に日本の政局について考えます。公明党の離脱は、短期的に日本株にとって重大な悪材料です。高市新総裁が強いリーダーとなって成長戦略を推し進めるイメージから、先週の日経平均は大幅に最高値を更新しました。


 ところが、公明党離脱により高市氏の首相就任が確実とはいえなくなりました。首相に就任して自民党単独の高市政権が成立しても少数与党となり、野党各党の合意がなければ、何も決められなくなる可能性もあります。


 ただし、長い目で見ると公明党の離脱は悪材料とはいえないと思います。なぜならば、もともと自民党と公明党では政策方針が大きく異なるからです。

公明党離脱で新しい連立を模索して、さらに解散総選挙で国民の声を聞くことが必要だと、私は考えています。


 小選挙区制で、自民公明の選挙協力が非常にうまく機能して安定政権を形成することに寄与してきたことから、1999年以来、自民公明の連立政権が続いてきました。ただし、政策の基本方針が異なることから、政策合意に苦労してきました。本来、連立政権は選挙のための数合わせではなく、政策によって決めるべきだと私は思います。あるべき姿に戻ろうとしていると考えています。


 当面、与党連立か野党連立かてんびんにかけながら、与野党の勢力争いが続きそうです。最終的にどうなるか予想するのは難しいですが、自民党の単独または連立の少数与党として、高市政権が成立する可能性が、現時点では高いと考えられます。


 そうなると政策運営にかなりの困難が生じます。私は、遅かれ早かれ解散総選挙を実施して、国民の声を聞かざるを得なくなると思います。


「解散総選挙を行うと、政治の空白ができるためよくない」という意見もありますが、私は、国民の声が分からないまま与野党の勢力争いが続くと、財政政策も外交も明確な指針なく進まざるを得なくなることから、その方がより大きな問題であると思います。


世界的に「保守派・右寄り」勢力が力を得つつある

 世界を見渡すと、保守派が力を得つつあります。言い換えると、リベラル派がやや劣勢となっています。一部の国では、極右勢力が力を得ています。

世界的に、中道スタンスを取る政権でも、中道右派が力を増しつつあります。


<世界各国の政治勢力の分類:イメージ図>


日経平均、内憂外患で下落警戒:トランプ関税100%追加予告、公明党連立離脱(窪田真之)
出所:筆者作成

 上記は、かなりざっくりとした政治勢力の分類です。現実には、もっと複雑なスタンスを持つ政治勢力がありますが、話を簡単にするために、あえて大まかに分類しました。


 米国やドイツなど世界各国で、保守派・右寄り勢力が力を得つつあります。一方で、貧富の差拡大に不満を募らせる低所得層の支持で極左勢力が拡大している国もあります。


 日本はどうでしょうか。あくまでも私見ですが、日本の主要政党に極右・極左はなく、中道右派・中道左派が多いと分析しています。


 自民党は、歴史的に中道右派も中道左派も取り込んで、さまざまな派閥を形成して、国民の声に合わせる政策を柔軟に行ってきたと分析しています。自民党が戦後、長期政権を維持できたのは、党内に右派も左派もいて世論の流れに合わせて政策スタンスを柔軟に調整してきたからと私は分析しています。


 例えば、資本主義の成長戦略・構造改革を進めてきたアベノミクスが批判されるようになると、岸田文雄元首相が「新しい資本主義」を提唱しました。所得再分配も重視する「新しい資本主義」を提唱することで、野党に攻め口を与えなかったといえます。


 ただし、その自民党が直近の参院選と衆院選および東京都議選で、大敗しました。

自民党が国民の声に向き合っていないと考えられます。その解決策の一つとして、高市新総裁が、成長戦略を徹底する方針を出しています。それが、国民の声に合っているのかどうか、最終的には解散総選挙によって明らかになるのだと思います。


外国人投資家は資本主義の成長戦略を強める政権を好む

 外国人投資家は、日本の政策スタンスが、資本主義の成長戦略を重視する方向に進むか、あるいは所得再分配を重視する方向に進むか見ています。高市新総裁が、資本主義の成長戦略を推し進める強いリーダーとなる期待から、日本株を大量に買ってきました。その期待は、今週はいったん低下する形となりそうです。


 ただし、これで高市新総裁への期待が完全に消えるわけではありません。日本がどういう方向に向かうのか、今後の政局を見ていくことになります。


 高市新総裁が強いリーダーになるために、たくさんの関門があります。最初の関門である連立交渉で、早くも窮地に立たされていますが、ここからどう巻き返していくのか、今後の展開に注目します。


<高市総裁が強いリーダーとなるために越えなければならない関門>


日経平均、内憂外患で下落警戒:トランプ関税100%追加予告、公明党連立離脱(窪田真之)
出所:筆者作成

日本株の投資方針

 日米株価にやや過熱感がある中で、二つの重大な悪材料が出ました。目先、日経平均は下がる見込みです。


 それでも日本株の長期的な見方は変わりません。

日本株は割安で、長期的な上昇余地は大きいと考えられます。これからも、急落・急騰を繰り返しながら、上昇していく可能性が高いと思います。時間分散しながら割安な日本株に投資していくことが長期の資産形成に寄与すると考えられます。


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(窪田 真之)

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