先週の日本株は、日経平均が3週続伸、TOPIXは最高値更新と、年末株高に向けた底堅さを示しました。しかし、米国発の「半導体株への逆風継続」と「バリュー株への資金シフト」で明暗が分かれる展開でもありました。

今週は、日銀金融政策決定会合、米経済指標などが控えています。再び年末ラリーの期待は高まるのか、相場の行方を読み解きます。


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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【テクニカル分析】今週の株式市場 年末ラリーはあるのか?日銀会合待ちと米経済指標の「答え合わせ」がカギ<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し> 」


落ち着かない値動きも堅調だった先週の日本株市場

 先週末12日(金)の日経平均株価は5万0,836円で取引を終えました。前週末の終値(5万0,491円)からは345円(0.7%)高、週間ベースでも3週連続の上昇となりました。週末時点の終値の推移だけを辿れば、「ラリー」とまでは言えないものの、着実に「年末株高」に向けて歩んでいるような印象です。


 ただし、5分足チャートで週間の日経平均の値動きを辿ると、着実さよりも、「落ち着かない」相場だったと言えます。


<図1>日経平均の5分足チャート(2025年12月8日~12日)


年末ラリーはある?日銀「利上げペース」と米経済指標の「答え合わせ」がカギ
出所:MARKETSPEEDII

 上の図1を見ても分かるように、日々の取引時間中に株価の上げ下げが目まぐるしく入れ替わっています。週間の高値も、5万1,000円台に乗せる場面があったかと思えば、5万円台を下回る場面があるなど、上昇も下落も長続きしない様子がうかがえます。


 では、相場自体が弱かったのかというと、決してそうではありません。日足チャートを見ると、日経平均は株価が25日移動平均線から上の位置をキープしていたほか、東証株価指数(TOPIX)に至っては最高値を更新して週間の取引を終えています。


<図2>日経平均(日足)の動き(2025年12月12日時点)


年末ラリーはある?日銀「利上げペース」と米経済指標の「答え合わせ」がカギ
出所:MARKETSPEEDII

<図3>TOPIX(日足)の動き(2025年12月12日時点)


年末ラリーはある?日銀「利上げペース」と米経済指標の「答え合わせ」がカギ
出所:MARKETSPEEDII

先週の値動きから見えることは?

 こうした先週の日本株の値動きを株価材料と紐づけて見ると、以下の二つの大きな流れが見えてきます。


 一つ目は、「AI・半導体株への逆風継続」です。そのきっかけは米国の企業決算でした。米ソフトウェア大手 オラクル(ORCL) や半導体大手 ブロードコム(AVGO) が、それぞれ10日(水)と11日(木)の米国株市場の終了後に決算を発表しました。


 しかし、AI・半導体関連銘柄の株価調整の流れを変えることができず、半導体関連銘柄で構成する米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は12日(金)の取引で5%を超える下落を見せました。日本株市場でも、日経平均への寄与度が大きい ソフトバンクグループ(9984) や 東京エレクトロン(8035) といった値がさ株が売られたことで、日経平均の上値が重たくなりました。


 二つ目は、「バリュー株」や「内需株」への資金シフトです。AI・半導体関連銘柄から抜けた資金の行き先となりました。日本銀行会合での利上げ観測を背景に銀行株が買われたほか、割安感のある建設株や商社株、さらには地政学的リスクの高まりを背景とした防衛関連株などに資金が向かいました。


 こうした相場の流れは、NT倍率(日経平均÷TOPIX)の推移からも確認できます。


<図4>NT倍率(日経平均÷TOPIX)の推移


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出所:MARKETSPEEDIIデータを元に作成

 NT倍率の低下は、日経平均よりもTOPIXの方が優位であることを示します。現在の日本株市場は、少数のテック銘柄頼みの上昇から、バリュー株を中心に、買われる銘柄の裾野が広がったことが相場を支えていると言えます。


宿題を残した米FOMCの「答え合わせ」

 また、先週の最大の注目イベントは、米国の連邦公開市場委員会(FOMC)でした。


 9日(火)から10日(水)にかけて開催されたFOMCでは、市場の予想通り0.25%の利下げが決定されました。

この結果を受け、10日(水)の米国株市場では、中小型株銘柄で構成されるラッセル2000が最高値を更新しました。


 ダウ工業株30種平均についても節目の4万8,000ドル台を回復するなど、主要株価指数が揃って上昇する初期反応となりました。


 しかし、注目度が高かった割には株価上昇の勢いはあまり感じられず、週末にかけて軟調な展開となっており、FOMCが「年末ラリー」の号砲とはなりませんでした。


 あらためて、今回のFOMCの結果をざっくり整理してみると、0.25%の利下げ決定に加え、政策金利の見通しを示したドット・チャートでは、2026年の利下げ回数が前回(9月)公表の見通しと同じ1回と示されるなど、ほぼ市場予想の範囲内の内容でした。


<図5>米FRBメンバーによる政策金利見通し「ドット・チャート」の状況


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出所:FRB公表データを元に作成

 さらに、FOMC後に行われたパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見では、現在の金利水準が中立金利(景気を冷やしもふかしもしない金利水準)に近づいてきたとの認識や、次回以降の政策の方向性に対して踏み込んだ発言もありませんでした。


 それでも米国株市場が上昇で反応したのは、米財務省短期証券(TB)の購入を始める方針を示し、金融市場に流動性が供給されることで、株などのリスク資産に資金が流入しやすくなるとの思惑が働いたことが影響したと思われます。


 そのため、今回のFOMC全体の内容をまとめると「買い」という判断になったものの、中長期的な上昇相場シナリオを構築するには不十分だったと言えます。


 実際に、米国の債券市場を見ると、本来ならFRBの利下げで下がるはずの米10年債利回りが10日(水)の取引終了時点で4.15%、週末12日(金)では4.18%と、あまり低下していません。


<図6>米10年債利回り(日足)の動き


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出所:Bloombergデータを元に作成

 また、今週の米国では、11月分の雇用統計をはじめ、小売売上高、消費者物価指数(CPI)など、FRBが金融政策を判断する上で本来材料にしたかった経済指標が公表される予定となっています。


 先ほどの図5のドット・チャートでも確認できるように、2026年の利下げ見通しは、FRBメンバーによってかなりのバラつきがあります。そのため、今週公表される経済指標とFOMCとの結果どうしを照らし合わせて、「答え合わせ」をしながら今後の金融政策への方向感を探って行くことになりそうです。


今週の注目イベントは?

 そんな中で迎える今週は、18日(木)から19日(金)にかけて日銀金融政策決定会合が開催されます。これは日本株にとって、今年最後の山場と言っても過言ではないイベントです。


 市場ではすでに「0.25%の追加利上げ」はほぼ織り込み済みとされています。焦点になるのは、会合後に行われる植田和男日銀総裁の記者会見で、「2026年の景色(今後の利上げペース)」について、どのようなメッセージを発するかです。


 利上げに慎重な「ハト派(慎重派)」なのか、それとも中立金利に向けて利上げを進める「タカ派(積極派)」なのか。日銀の出方次第で金利や為替市場が動き、株式市場でも物色される銘柄が異なってくることが想定されます。


 先週に続き、今週もバリュー株買いが重要なテーマになりますが、同じバリュー株でも、金利上昇が追い風になる銀行・保険と、向かい風になる不動産では明暗が分かれる展開なども予想されます。


 このほか、米国では17日(水)に半導体メモリ大手 マイクロン・テクノロジー(MU) が決算を発表します。


 こちらも、現在調整中のAI・半導体株がこの決算で復活の狼煙を上げられるか、それとも調整が長引くのか、先週のオラクルとブロードコム決算が市場全体に影響を与えたように、マイクロン・テクノロジーの決算も、相場のムードを左右することになりそうです。


TOPIXの動きがカギ

 最後に、最高値を更新したTOPIXが、ここからさらに上値を追えるのかについても考えて行きます。


 テクニカル分析の視点では、これまでの見通しに変化はありません。


<図7>TOPIX(週足)と目標値計算(2025年12月12日)


年末ラリーはある?日銀「利上げペース」と米経済指標の「答え合わせ」がカギ
出所:MARKETSPEEDII

 上の図7は、TOPIXの週足チャートに、一目均衡表の「目標値計算」を表示させたもので、以前のレポートでも何度か紹介したものです。すでにVT計算値(2,671p)やN計算値(3,374p)をクリアし、次の上値ターゲットはV計算値の3,649pとなります。


 先週末12日(金)のTOPIX終値が3,423pでしたので、V計算値まではまだ距離を残しており、この距離をどのくらいの期間で埋めて行くのかがポイントになります。


 そこで、線形回帰トレンドでも確認してみます。


<図8>TOPIX(週足)の線形回帰トレンド(2025年12月12日)


年末ラリーはある?日銀「利上げペース」と米経済指標の「答え合わせ」がカギ
出所:MARKETSPEEDII

 先週末12日(金)時点の株価は、強気のゾーンである「プラス2σ(シグマ)」のライン上に位置しています。これは「非常に強い上昇トレンド」であると同時に、過熱感が意識されやすい位置でもあります。


 仮に、足元のトレンド基調が続き、株価がプラス2σの線に沿って上昇していった場合、先ほどのV計算値(3,649p)に到達するのは、およそ28週間後あたりになります。つまり、「方向は上目線ではあるものの、スピード違反には注意」が必要です。目先の株価が急騰した場合には、過熱感が意識されやすく、早い段階で反動安に向かう動きには要注意となります。


 もっとも、注目の日銀会合の結果が出るのは週末19日(金)の取引時間中、植田総裁の会見は取引終了後になります。そのため、基本的には「様子見」の展開を基本シナリオにしつつ、米国のテック企業決算や経済指標の動きに反応しながら株価水準を探って行くことになりそうです。


(土信田 雅之)

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