日経平均株価が史上最高値を更新するなど、地合い良好なタイミングで、東証プライム市場に知名度抜群2社のIPO(新規公開)株が登場!が、しかし…スタートこそ買いが殺到したものの、2社揃って急いで買った人は含み損をかかえることになっているかも。今から買うなら、ソニーFG(8729)と、オリオンビール(409A)この2社で比べてみます。


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今回のお題:初値高過ぎた!? 直近の2大IPO

ソニーFG(8729) オリオンビール(409A)
ソニーFG vs オリオンビール  初値高過ぎた!? 直近の2大新規公開株 今から買うならどっち?

ソニーFG vs オリオンビール  初値高過ぎた!? 直近の2大新規公開株 今から買うならどっち?

 上記両社の株価のポイントや株価データを見ながら、双方を比較し、皆さんの相場観で購入検討するならどちらにしますか?


銘柄A: ソニーFG(8729)

ソニーFG vs オリオンビール  初値高過ぎた!? 直近の2大新規公開株 今から買うならどっち?
筆者作成、上場来日足チャート ※10月9日時点

ここがGOOD

“ソニー”の強いブランド力

 ソニーFGは生保、損保、銀行を手掛ける総合金融グループです。利益の根幹は、修正純利益の8割強を占める「ソニー生命」。そのソニー生命のライフプランナーは5700名を超え、保有契約年換算保険料は年率7%ペースで増加しています。
 また、テレビCMでもおなじみ「ソニー損保」は、ダイレクトマーケティング(ネットと電話)の自動車保険として22年連続売上ナンバーワン。そして「ソニー銀行」はネット専業の銀行としては古株で、住宅ローン残高を安定的に積み上げています。各業界に有力な競合企業はいますが、ソニーのブランド力、そしてIT技術力を使った独自の立ち位置は武器といえます。


PER比較での割安感

 今回の上場はソニーグループからのスピンオフ形式のため、公開価格でなく、“板中心値段”と表現される最初の基準価格は150円でした。この基準価格自体にも、IPOディスカウント(主幹事となる証券会社が上場する類似会社と比較して妥当と試算した価格より20~30%値引きすること)が考慮されていたはずです。
 仮に20%~30%値引きしたプライシングが150円とすれば…だいたいプロ勢が妥当と見ていた値段は190円~220円ということでしょうか。そう考えると、205円で付いた初値は妥当といえるかもしれません。
 例えば予想PERで比較した場合、ソニーFGは13.5倍ですが、生保でいえば第一生命が12倍、T&Dが15倍、ネット専業ライフネットが24倍ですので、成長性も加味すれば低い印象。ネット専業の銀行でいえば、楽天銀行が22倍ですので、こちらとの比較でも割安感があるといえます。


実質的には高配当株!

 株主還元に関しては、上場の時点で優等生な姿勢を示せています。

基本方針は、➀修正純利益に対して配当性向40~50%、➁年間配当額の減額は原則行わない(=累進配当)、➂自己株式取得の実施。そして、➀の配当性向から、今期の配当総額は250億円としているのですが、これはスピンオフした株の効力発生日が10月1日だったため、期末配当(1株3.5円)の分だけ。画面上の配当利回り表記は、「3.5円÷株価」で2.1%となっていますが、実質的な利回りは2倍の4.2%と試算できます。
 年間配当でいえば500億円以上で、それの減配をしない累進配当株。ネット専業のライフネットや楽天銀行など無配予定だったりする中にあって、現状の実質利回りは“高配当株”ですよね?また、取得方法を「市場買付」とする分の自社株買い枠も10月9日~来年8月8日の期限内で710億円あります。総還元でいえば相当オイシイ株ともいえそうです。


ここが心配

スピンオフ上場の闇

 IPOではあるものの、その形が広く投資家の需要を集めるブックビルディング方式ではなく、公募・売出を実施しないダイレクトリスティング方式でした。これは、ソニーグループ(6758)の既存株主に1株当たり1株のソニーFGの株を現物配当するというもの。普通のIPOのように、ブックビルディングで「ソニーFG欲しい人~?」で買い手を募るのと異なり、無条件でソニーグループの株主に株券を配布…この闇は想像を絶するものでした(-_-;)


 その売り(フローバック)は、初値を付けて以降、終日ベースで常に圧し掛かっているようにも思われます。当初は、日経平均株価連動型のETFなどパッシブファンドの運用者が、不要となるソニーFGを無条件に売却することなどが危惧されていました。ただ、パッシブ売りの時期を抜けても、止まらない売り圧力を見る限り…アクティブファンド、個人投資家など多くのソニーグループ株主が市場で売却している公算は大きそう。年末にかけては個人投資家が節税目的の損出しで売る可能性もあり、このスピンオフ上場ならではの売り圧力一巡するまで、株価の「割安感」がバリュートラップになる株ともいえそうです。


低位株で板が分厚い

 IPO後に想像以上に急落し、最初の基準価格150円も一時割り込みました。

値ごろ感(見た目が安く感じること)から、逆張りで買う個人投資家は多かったようです。上場最初の週だけで、信用買い残は1億4,154万株、金額ベースで200億円超も積み上がっていました。個人が買うのに、フローバックの売りものが無限に降ってくる…結果、個人がロスカットして下げ幅を増幅させる、また別の個人が押し目買いを入れる、これが需給悪化の負のループです。
 個人がエントリーする理由には、1株150円台で売買できる手頃さもあるはずです。新NISAでコツコツ買い集めるにもピッタリ。ただ、個人投資家が万人レベルで関与することで、色んな価格帯で保有する投資家を作ってしまいます。しかも、低位株ですので、呼び値は0.1円刻みのため値動きが重くなります。これ、新NISA前に分割して低位株になったNTTと同じ現象。板が分厚く、動きが悪く…これがフローバック一巡後に想像される未来でしょうか。


ソニーFG レーダーチャート※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
ソニーFG vs オリオンビール  初値高過ぎた!? 直近の2大新規公開株 今から買うならどっち?
筆者作成

銘柄B: オリオンビール(409A)

ソニーFG vs オリオンビール  初値高過ぎた!? 直近の2大新規公開株 今から買うならどっち?
筆者作成、上場来日足チャート ※10月9日時点

ここがGOOD

ユニークな存在感で成長余地アリ!?

 オリオンビールは1957年創業の老舗企業で、オリオンという名称は一般公募で決めたそうです。そのオリオンビール、飲むだけで沖縄に訪れたような気分になる…そんなビールですよね。また、オリオンビールのロゴのTシャツも大人気で、沖縄に訪れた若者の“制服”なんていわれているほど。ロゴを活用した知的財産(IP)も今後伸びそうです。


 若者のアルコール離れが進むなか、ビールの市場自体は成熟市場。オリオンビールは、ビール業界5位の位置付けです。なんですが…大手4社(アサヒ、キリン、サッポロ、サントリー)との差は大きく離れているようで、一部試算では市場シェアは1%程度とされています。それだけに、シェアを高める余地があるという前向きな見方もできそう。沖縄はインバウンド拡大の恩恵のある場所ですし、今年7月開業のテーマパークJUNGLIAも追い風。「沖縄=オリオンビール」という強烈なインパクトを武器に、これを活かした戦略でシェアを高める展望に期待です。


“激安”から“まだ割安”へ

 オリオンビールのIPO、上場前の募集時点の人気は凄まじかったようで、一部報道によれば主幹事証券でのブックビルディングの応募倍率は「個人投資家枠で90倍」だったもよう。そのため、公開価格850円で購入できた投資家が極めて少なかったものと見られます。その分、セカンダリー(初値形成後)で買おうという投資家の意欲は大きくなり、それが初値高騰(初値は公開価格の2.2倍の1,863円)につながりました。
  IPO株として人気が高かった理由では、公開価格が“激安”設定だったことが挙げられます。公開価格850円ベースの予想PERは10.5倍、予想配当利回りは4.7%。これは、類似の上場ビール会社3社(アサヒ、キリン、サッポロHD)と比べ圧倒的に割安。

ただ、セカンダリーでの値上がりにより、現在は予想PER約21倍、配当利回り2.3%台となっています。類似3社平均は予想PER約27倍、配当利回り2.4%ですので、今後の成長性も加味すると予想PERで見た割安感は残っているといえそうです。


ここが心配

初日飛び乗り勢の売り圧力

 公開価格が安かったことに加えて、久々の知名度高いIPO、そしてプライム上場銘柄のセカンダリーの好パフォーマンスイメージ…それらが混じった結果と思われますが、プライム上場のIPOで初値2.2倍というのは超レア案件。さらに、初値形成後のイケイケムードも凄まじく、ストップ高目前の2,262円まで加速的に値上がりしました。
 ただ、その後にハシゴを外すような暴落が待っていまして…後場に初値が付いたにもかかわらず上場初日(9月25日)は3,483万株の出来高を記録(発行済み株数4,081万株の8割強)。さらに値崩れした翌26日は、逆張り買いが殺到して3,830万株の大商いでした。ただ、その後は盛り上がりも薄れ、人気は離散。10月9日時点の売買高5日移動平均は284万株と、ピーク時の10分の1以下になっています。
 現状、初日飛び乗り勢、そして2日目の逆張り勢が含み損状態にあります。この2日間に買いエントリーして保有したままの投資家の取得単価は、VWAP(平均約定価格)で想像できます。25日のVWAPは1,972円、26日のVWAPは1,824円ですので、この辺りが“戻り売り圧力の壁”になると想定。好材料などで商いを増やしながら、上値での戻り売りを吸収する必要がありそうです。


沖縄偏重のリスク

 前期の売上高に占める酒類清涼飲料事業の比率は79%。

そのうち、販売チャネル別では沖縄県内が7割超を占めており、同社の売上全体の約6割が「沖縄県内でのビール類販売」が占めているという計算になります。また、売上高に占める観光・ホテル事業の比率は21%ですが、これも全て沖縄県内で事業を行っています。
 沖縄県は、ちょうど台風の通り道になっているため、台風の数が多いことで知られています。沖縄県特有の天候リスクともいえますので、そのリスクが発現した場合の業績へのマイナス影響、そしてマイナス影響を想定した売りが強く株価に出る恐れも。目下で海外展開に力を入れていて売上も伸びています。海外売上比率を高めることで沖縄偏重のリスクも緩和していくことでしょう。


オリオンビール レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
ソニーFG vs オリオンビール  初値高過ぎた!? 直近の2大新規公開株 今から買うならどっち?
筆者作成

あなたなら、どっちを買う?

株価データ比較
ソニーFG vs オリオンビール  初値高過ぎた!? 直近の2大新規公開株 今から買うならどっち?
※ソニーFGの配当利回りは期末配当分のみで計算(実質は×2倍)↑10月9日終値時点になります

 割安感は誰もが感じているソニーFG。実質的な配当利回りが今の株価ならかなり高いことも周知されれば、NTTや三菱HCキャピタルのような新NISA勢御用達の銘柄にもなるかも。一方で、将来ポテンシャルを感じるかなりスモールな東証プライムIPOのオリオンビール。どちらも底入れした感は出ていますが、初値奪回、そして上場来高値の更新をいち早く実現するのはどっちでしょう?あなたならどちらを選びますか?


▼あわせて以下の投票にぜひ参加してみてください。

【銘柄を投票】ソニーFG vs オリオンビール 初値高過ぎた!? 直近の2大新規公開株 今から買うならどっち?


各指標の説明 予想PER 1株当たり利益の何倍(何年分)まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。
PBR 1株当たり純資産の何倍まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。この数値が1倍を下回る企業に対し、東証は「1倍を上回るよう頑張れ」と指令を出しています。 配当利回り 今期の予想配当金ベースの利回りで、高いほど配当妙味が高いと判定します。定義はありませんが、3%以上なら配当利回りが高いと認識されています。 流動性 1日の売買代金がどれくらいあるか?(表では25日平均)を金額で表示しています。同数値が高いほど、機関投資家も大口の個人投資家もストレス無く参加できると考えられます。

(岡村 友哉)

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