高市新総裁の誕生を受け、急伸する日本株式市場。過去の局面に共通する特徴と企業業績から、今後の相場展開を考えます。


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1. TOPIXは3,200ポイントを超えてきた

 つい2カ月ほど前の今年8月に 「史上最高値を更新した日本株の行方は?」 という投稿をしましたが、自由民主党・高市早苗新総裁の誕生を受け、日本株式市場はさらに急伸して、東証株価指数(TOPIX)は3,200ポイントを超えてきました(10月7日現在)。


 図表1は今年8月にご紹介したものに少し手を加えたもので、過去13年程度の「TOPIXと予想1株当たり利益(EPS)に基づく妥当レンジ(赤線が妥当水準、2本の青線が上下限レンジ、計算方法はグラフ脚注を参照ください)の推移」です。


 第2次安倍政権によるアベノミクスが始まった2012年暮れ以降、妥当レンジ上限を超えて株価が上昇したのは今回が6回目となります。過去5回を振り返ると、ある特徴が見られるので、その特徴などから今後の相場展開を考えてみます。


[図表1]  TOPIXと予想EPSに基づく妥当レンジの推移


期待が高まり急上昇する日本株の行方は? 
期間(株価):2012年12月3日~2025年10月7日、日次期間(予想EPS):2012年12月~2025年9月、月次・予想EPS:野村證券が集計。自社アナリスト予想を優先し、東洋経済新報社予想で補完、時価総額ベース、向こう12カ月予想ベース(月次更新)・妥当レンジ:グラフ期間の平均PERは約14.2倍なので(コロナショックで業績が大幅に悪化した時期(2020年5月~2021年3月)を除く)、予想EPSを14倍した水準を妥当水準とし(赤線)、13~15倍のレンジを妥当レンジとした(青線)。(出所)野村證券およびBloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成 

2. 妥当水準を20%程度上回ると、循環的な天井を形成してきた

 図表2は、図表1で見るTOPIXの妥当水準(赤線)からの乖離(かいり)率の推移です。


 図表1で示した妥当レンジ上限を上回って上昇した6回の局面に〇を付けていますが、(1)(2)(5)の局面ではおおむね+20%前後の乖離率でピークアウトしている様子が分かります。


 また、(4)は+30%近くの乖離率となっていますが、コロナショックで利益が大きく落ち込み、妥当水準が切り下がった影響で乖離率が大きめに出ていると考えています。過去に照らし合わせれば、今回(6)の+20%超えという水準は循環的なピークになる可能性が高いと考えています。


 重要なのは乖離率がピークアウトした後の相場展開ですが、図表1で見るように、(1)(5)の局面はピークアウト後に相場が大きく調整せずに「高値もみ合い」となっている一方、(2)(3)の局面では1年以上の期間で大きく調整、(4)の局面はその中間という感じです。


 では、今回(6)の局面はどうなるのでしょうか?


[図表2] TOPIXの妥当水準からの乖離率の推移


期待が高まり急上昇する日本株の行方は? 
期間:2012年12月3日~2025年10月7日、日次(10月の乖離率は9月の妥当水準からの乖離率)(出所)野村證券およびBloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

3. 乖離率ピークアウト後の相場は、その先の企業業績の影響を受ける

 前述の(1)~(5)の局面の背景となるTOPIXの業績動向を見てみましょう。図表3はTOPIXの経常利益の増減率の推移です。妥当水準を20%前後上回るまで株価が上昇した原因は、企業業績に対する市場の期待が大きいからであり、その後1~2年程度の企業業績が期待に応えられたか否かが重要と思います。


 そうした視点で業績動向を振り返ると、「高値もみ合い」となった(1)(5)の局面では、その後の経常利益が堅調に増益を保っていた一方、(2)(3)の局面では小幅増益や減益に失速(期待に届かず)、(4)はその中間という感じであり(2021年度の大幅増益の理由はコロナショックからのリバウンド影響)、乖離率ピークアウト後の業績動向と株価推移は整合的でした。


 その観点で見ると、今回(6)の局面では2025年度は関税問題などからほぼ横ばいですが、2026年度に10%弱の増益に回復する予想になっており、「小幅調整後に高値もみ合い」という展開が予想されます。


 そして、高値もみ合いを続けている間に、将来の企業業績が伸びてくれば妥当水準が切り上がり、乖離率も縮小、株価に利益が追い付いた後、再び上昇を始めるのではないかと考えています。2026~2027年度の業績動向に注目しましょう。


 [図表3] 日本株式市場全体の経常利益・増減率の推移


期待が高まり急上昇する日本株の行方は? 
期間:2012~2026年度、年次(予想は野村證券予想、10月3日時点)・母集団は、2012~2019年度は東証1部、2020年度以降はTOPIX・赤:高値もみ合となったケース、青:調整が深かったケース、水色:その中間(出所)野村證券のデータを基に野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(証券コード:1306)
NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信(証券コード:1321)


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(阪井 徹史)

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