当面の注目材料は、日米の金融政策イベント、国内外の主要企業の決算発表となります。FOMCでは利下げ継続の可能性が高いとみられますが、日銀の判断は不透明であり、今後の為替動向がカギを握りそうです。

一方、国内企業の決算発表では、米関税の影響が引き続き限定的ならば、一段の買い安心感が高まる余地はありそうです。


配当利回りTOP15:ホンダ、グンゼなど権利落ちで軟調。日米...の画像はこちら >>

アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

コード 銘柄名 現在値 配当
利回り コンセンサス
レーティング 移動平均線
乖離率 月間
騰落率 6481 THK 4272.0 5.78 3.8 3.86 5.48 3002 グンゼ 3750.0 5.76 3.6 ▲ 0.96 ▲ 2.47 7148 FPG 2284.0 5.71 4.0 ▲ 3.97 ▲ 7.15 2154 オープンアップグループ 1661.0 5.20 4.0 ▲ 7.75 ▲ 7.82 4521 科研製薬 3664.0 5.19 3.5 ▲ 4.70 ▲ 6.03 8130 サンゲツ 3000.0 5.17 4.0 ▲ 2.35 ▲ 4.46 1890 東洋建設 1744.0 5.16 4.0 1.11 ▲ 0.11 9104 商船三井 4346.0 5.03 3.6 ▲ 8.29 ▲ 9.95 5021 コスモエネルギーホールディングス 3444.0 5.02 3.9 ▲ 2.00 ▲ 4.23 7202 いすゞ自動車 1861.0 4.99 3.6 ▲ 3.85 ▲ 5.80 8725 MS&ADインシュアランスホールディングス 3258.0 4.95 3.6 ▲ 4.26 ▲ 6.70 7283 愛三工業 2025.0 4.94 4.0 5.45 4.22 4208 UBE 2257.0 4.87 3.5 ▲ 3.21 ▲ 6.41 7267 ホンダ(本田技研工業) 1517.5 4.82 3.6 ▲ 5.99 ▲ 8.00 9076 セイノーホールディングス 2169.0 4.80 3.5 ▲4.55 ▲4.91 ※データは2025年10月17日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。


※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。


 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。


 10月17日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。


 なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。


日経平均大幅高の中、高配当利回り銘柄は権利落ちの影響で軟調

 9月12日終値~10月17日終値までの日経平均株価(225種)は6.3%の上昇となりました。


 期間中前半には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、市場予想通りに0.25%の利下げが決定されました。

また、政策金利の見通しは年内2回の利下げと従来想定よりもペースが加速化し、好感材料となりました。


 日本銀行金融政策決定会合では、上場投資信託(ETF)の売却が発表され、一時市場は混乱しました。しかし、売却ペースは極めて緩やかで、需給面への影響は乏しいとの見方がその後は優勢になりました。


 10月4日に行われた自民党総裁選では、財政拡張派とされる高市早苗候補が予想外の勝利を収めました。為替市場の円安進展も加わって、翌営業日の日経平均株価は市場4番目の上げ幅を記録しました。


 その後、公明党が連立政権からの離脱を発表し、政局の混乱が警戒視される場面もありましたが、代わりに日本維新の会との連携の可能性が伝わったことで、株式市場の調整も一時的なものにとどまりました。


 こうした中、ランキングTOP15は13銘柄が下落して、上昇は2銘柄にとどまりました。中間決算期末の配当落ちのタイミングとなったことから、高配当利回り銘柄への買い意欲は相対的に限定的となったようです。


 比較的下落率が大きかったのは 商船三井(9104) と ホンダ(本田技研工業:7267) です。商船三井はコンテナ船市況の低迷が続いていることで、全体株高となる場面でも上昇は限定的でした。本田技研工業は、期間中後半にかけて日銀の追加利上げ観測が強まり、円高反転の動きとなったことがマイナス視されました。


 一方、 THK(6481) と 愛三工業(7283) はプラスサイドでした。

THKは、ソフトバンクグループがスイスABBのロボット事業を買収すると発表したことで、FA(ファクトリーオートメーション)関連銘柄の見直しが強まったことが背景となります。


 また、株価の連動性が意識される安川電機がポジティブな決算を発表したことも支援となりました。愛三工業は権利落ち後の株価下落が限定的にとどまり、総裁選後の円安進行時に大きく上昇しています。


商船三井や愛三工業は会社計画との乖離が大きい

 今回、新規にランクインしたのは、商船三井(9104)とホンダ(本田技研工業:7267)。除外となったのは、 アステラス製薬(4503) と DIC(4631) でした。


 商船三井と本田技研工業は、月間の下落率が相対的に大きかったことがランク入りの背景となります。 


 一方、アステラス製薬とDICはともにコンセンサスレーティングが基準未達となっています。アステラス製薬は国内中堅証券が「中立」判断に引き下げています。株価は妥当な水準に達したとの判断のようです。DICも詳細は不明ですがコンセンサスレーティングは「3.3」に低下しています。


 アナリストコンセンサスと会社計画の配当予想で乖離が大きいのは、 東洋建設(1890) 、商船三井(9104)、愛三工業(7283)、 コスモエネルギーホールディングス(5021) 、ホンダ(本田技研工業:7267)となります。


 東洋建設に関しては、大成建設による株式公開買い付け(TOB)が完了しており、今後は上場廃止となるため、配当金は無配になります。


 ほか、会社計画ベースの配当利回りは、商船三井が4.03%、愛三工業が3.70%、コスモエネルギーが4.79%、本田技研工業が4.61%となっており、それぞれコンセンサス水準が上回る状況になっています。


 愛三工業は足元の業績動向と配当性向35%を照らしてみると、コンセンサス水準が高すぎる印象です。コスモエネルギーも同様にコンセンサス水準は高いとみられ、会社計画ベースが妥当と判断されます。


 一方、本田技研工業は業績上振れペースからみて、コンセンサス水準は妥当とも考えます。商船三井は第1四半期に配当予想を上方修正しており、今後も一段の切り上がりは想定されますが、コンセンサス水準との乖離は開きすぎている印象があります。


日米金融政策イベントと決算発表が注目点に

 当面の注目材料は、日米の金融政策イベント、ならびに、国内外の主要企業の決算発表となりそうです。


 10月28~29日には米FOMCが開催されます。10月24日発表の消費者物価指数(CPI)の結果にかかわらず、利下げが継続される可能性は高いとみられますが、市場では十分にそれを織り込んでいるものと考えられます。


 29~30日には日銀金融政策決定会合が開催されます。こちらは足元で追加利上げの可能性が高まりつつあり、トランプ米大統領の来日のタイミングにも重なるため、その時点での為替動向が大きなカギを握るとみられます。


 一方、決算発表では、米国ハイテク株に関しては期待値のハードルが高まっている印象があり、出尽くし感の強まりに警戒が必要です。国内企業に関しては、米関税の影響が引き続き限定的にとどまっていれば、もう一段買い安心感が高まる可能性はあるでしょう。また、親子上場解消などグループ再編の動きも注目されます。


 なお、高配当利回り銘柄の動きに関しては、ここ1カ月軟調な動きとなったことで、目先は出遅れ感からの見直しの動きが強まると考えます。


(佐藤 勝己)

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